(ブルームバーグ):トランプ米大統領が「4-5週間」で終わると想定していたイランとの戦争は、開始から6カ月が経過した。共和党の選挙戦略担当者は、戦争の長期化が11月の中間選挙で党の大きな足かせになるとの危機感を強めている。
共和党支持層の士気も低下している。2024年大統領選でトランプ氏を支持した有権者の多くは、インフレを抑え、外国での新たな紛争に米国を巻き込まないことを期待していた。

共和党の不安をさらに強めているのが、大統領自身が危機感を示していないように見えることだ。不人気な戦争でトランプ氏の支持率は低迷。世論調査では、イラン戦争やこれに伴うガソリン高や根強いインフレに対する有権者の不満が鮮明になっている。
一部では、投票日までにこうした流れを反転できなければ、共和党は上下両院の支配を失う恐れがあるとの予測も出ている。そうなれば、トランプ氏の残り任期の政策遂行が難しくなるほか、民主党主導の議会調査が相次ぐことも予想される。
共和党関係者の多くは選挙への影響を懸念しているが、トランプ氏の怒りを買うことを恐れ、公には口にしない。匿名で取材に応じたホワイトハウスの複数の外部顧問は、11月までに戦争が終結したり、ガソリン価格が下がったりするとは考えていないと語った。
また、トランプ氏が「ホルムズ海峡は開かれている」、「ガソリン価格は下がっている」と繰り返し主張していることで、イラン戦争の問題を巡って米政権の信頼性を損ねたとも懸念している。
トランプ氏はほぼ全く意に介していないようだ。24日にはSNSへの投稿で、支持率低下を示す世論調査は「フェイク」だと一蹴。米国はイランとの戦争に「勝っている」と主張した。
最近ホワイトハウスでトランプ氏と面会したある顧問によると、大統領は「強さは常に弱さに勝る」という従来の信念を口にした。同顧問は反論しなかったが、中東戦略が変更される可能性は低いと受け止めたという。

政治アナリストらは、共和党が議会で多数派を維持する上で、イラン戦争を巡るトランプ氏の強硬姿勢が大きな障害になっていると指摘する。
超党派の選挙分析機関クック・ポリティカル・リポートの編集長、エイミー・ウォルター氏は、「トランプ氏の強みが失われつつあり、共和党にとって非常に厄介な問題だ。トランプ氏は物価を下げ、中東での終わりのない戦争から米国を遠ざけるはずだった」と指摘。「トランプ氏に投票した多くの人は困惑し、失望している」と述べた。

クック・リポートは8月20日、伝統的に共和党が強いテキサス州とアイオワ州の上院選について、情勢評価をともに「互角」に変更した。ウォルター氏は、不人気化したイラク戦争を背景に共和党が大幅に議席を減らした2006年中間選挙との類似性も指摘する。
ホワイトハウスは、イランへの圧力作戦は成果を上げており、有権者は最終的に外交上の成功として評価するとの立場だ。トランプ氏も戦争の画像とともに「任務完了2026」とSNSに投稿した。
ただ、世論調査では逆風が鮮明になっている。ロイターとイプソスの最近の調査では、トランプ氏のイラン戦争への対応を63%が支持せず、支持は25%にとどまった。回答者の5人に4人は、米軍の関与が長期化すると予想した。大統領の支持率も第2次政権で最低となる33%に低迷している。
共和党支持層でも戦争への支持は3月の77%から69%に低下した。党の選挙関係者が特に警戒するのは、不満を抱いた共和党支持者が11月の投票に行かなくなることだ。

共和党の選挙戦略に詳しいアレックス・コナント氏は、「民主党支持者の熱意は非常に高いが、共和党支持者はまだ戻ってきていない」と話す。ただ、9月9日にダラスで開かれる中間選挙に向けた共和党大会などを利用し、選挙戦の焦点を生活費の高騰問題に戻せれば巻き返しの余地はあるとみている。
一方、民主党は戦争への不満をガソリン高や生活費の上昇と結び付け、共和党候補への攻撃を強めている。
オハイオ州の民主党上院候補シェロッド・ブラウン氏はテレビ広告で、イラン戦争によって同州のガソリン価格が全米でも特に高い水準に跳ね上がり、農家がディーゼル燃料や肥料のコストに苦しんでいると訴えた。
民主党系調査会社タバーン・リサーチの8月25日の調査では、有権者の71%が戦争は米国内の状況に悪影響を及ぼしていると回答した。共和党支持者でも48%に上った。
同社のジェシカ・リース氏は、「有権者にとって、この戦争はトランプ氏の優先順位が間違っていることを示している」と指摘。「物価や医療費、住宅費といった人々の最大の懸念が、戦争によって一段と強く意識されるようになっている」と語った。
CNN/SSRSの調査でも、米国人の約4人に3人が、戦争は経済的負担や米軍の人的犠牲に見合わないと回答した。共和党支持者でも43%に上った。
共和党の世論調査専門家ウィット・エアーズ氏は、「この戦争は、トランプ氏が掲げてきた二つの看板政策を揺るがしている。米国を新たな戦争に巻き込まないことと、物価を引き下げることだ」と話した。
投票日まで残り9週間。トランプ氏が戦争や物価高への不満を和らげられるかどうかは、来年どちらの党が議会を支配するかを左右しかねない。
ただ、共和党内でトランプ氏の対イラン戦略に公然と異を唱える議員はほとんど残っていない。その結果、共和党側でイラン戦争反対を声高に訴えているのは、タッカー・カールソン氏らメディア関係者や、トランプ氏と対立して排除された少数の政治家のみになっている。
原題:Republicans See Trump’s Unceasing Iran War as Midterm Threat(抜粋)
--取材協力:Gregory Korte.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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