欧州で最も高額な国籍取得費用も、人々を断念させるには至っていない。6月までの1年間に新たに国籍を取得した「新英国人」はおよそ25万人と、2010年以来の高水準に上った。法外な値段でも、英国市民になるというのは多くにとってなお魅力的な選択肢であり続けている。

英国籍の取得には、まず無期限在留許可(ILR)と呼ばれる永住権を得る必要があり、その費用が1839ポンド(約40万円)かかる。

国籍取得となると、ILRに加えた合計の費用は5065ポンド(約110万円)に膨れ上がる。この額には関連する追加的な費用や医療保険料、その他の手続き上の困難は含まれていない。

晴れて国籍を取得できた場合、儀式への出席が義務づけられている。

他の多くの欧州諸国では、国籍取得手数料は数百ユーロに過ぎない。

電話インタビューに応じたオックスフォード大学の元学生であるジルン・リン氏は、英国の費用が突出して高いことを知らなかった様子で、「ええー、信じられない!」と声を上げ、「何と言おうか。本当にがっかりする」と語った。

中国生まれでポルトガル国籍も持つリン氏(25)は、すでに英国の永住権を得ていたが、英国とのつながりをいっそう深めたいと考えるようになった。「自分自身がますます英国人だと感じられることが多くなっていた。実際、英国を本当に気に入っている」と話した。

英国籍取得の決断は個人の経済的な事情というより、信条の問題だった。だが、費用について「そこまでは考えていなかった」と述べ、「後になってその金額を知ったときには、値札を見てびっくり、という感じだった」と吐露。

リン氏はデータサイエンティストとして十分な給与を得ているが、「自分のような人間にとっては、恐らく割に合わないだろう」と続けた。

英国の異常に高い費用は、2004年に当時のブレア首相率いる労働党政権が内務省に対し、査証や永住権、国籍申請の手数料を、その処理にかかる行政コストよりも高く設定することを認めたことが発端だ。

さらに2007年、労働党はさらに踏み込み、他の移民関連サービスの処理費用を賄うため、国籍申請など特定の分野において内務省が手数料を引き上げることを許可した。その後を受けた保守党主導の連立政権も14年、この手数料収入を国境警備や麻薬密輸取り締まりなどさまざまな業務に充当できるようにした。

こうして新たな法律が制定されるたびに、費用は上昇した。

ケンブリッジ大学のキャサリン・バーナード教授(欧州法)は、「英国は例外的な存在だ。その理由は、徴収される手数料が移民サービスの運営費を賄うことを意図しているからだ」と述べ、「他のどの国もそのようなことはしていない」と説明した。

費用がさらに膨らむことも多い。個人の事情に関する話だとして匿名を希望したある女性はブルームバーグに対し、20年以上前にスリランカから移住した両親の国籍取得を支援したと明らかにした。

スーパーマーケット勤務でコツコツ貯めていた資金から、6000ポンドを支出して2人のために申請。だが、そこで内務省から申請方法が誤っていたため、再申請が必要だと指摘された。最初の申請手数料は後日返金されたものの、一時的に負担額は1万4000ポンドに上った。

「例えば、申請者本人のほか配偶者と子供2人いて、国民医療保険の追加料金や職業訓練税の費用を計算すると、その額は数万ポンドになる」と、ケンブリッジ大学のバーナード教授は指摘。

「自分はこれまで、誰にとっても高額の費用が英国への移住を大きく阻む要因になると考えていた。だが、データが示しているのは逆の結果だ。人々はなんとかしてその資金を工面しようとしている」と語った。

原題:A £5,000 Bill Can’t Stop People From Trying to Become British(抜粋)

--取材協力:Donato Paolo Mancini、Piotr Skolimowski.

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