日本銀行の氷見野良三副総裁は27日、今後の利上げ時期やペースについて、これまで以上に物価の上振れリスクを意識し、9月を含め毎回の金融政策決定会合でしっかり検討すると語った。さいたま市内で講演と記者会見を行った。

氷見野氏は会見で、利上げのタイミングとペースについて、「経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら検討していくということに尽きる」と指摘。その上で、次回の9月会合も含めて、「毎回の会合で検討をしっかりしていく」と語った。

同日午前の講演では、政策判断で重視する一時的な要因を除いた基調的な物価上昇率が目標の2%を超える可能性も念頭に政策判断する局面に変わってきていると指摘。2%程度で安定させていく観点が重要とし、「これまで以上に物価の上振れリスクを意識する必要がある」と強調した。

氷見野氏の講演や会見では、市場で観測が高まっている9月会合での利上げやペース加速の可能性について明確な示唆はなかった。しかし、物価の上振れリスクに一段と警戒感を強めていることが明らかになり、9月も念頭にした市場の早期利上げ観測を支える内容といえる。

市場けん制なし

日銀は7月会合で、政策金利の据え置きを決めたが、植田和男総裁は記者会見で物価上振れリスクを強調し、利上げペースを速める可能性に言及した。前後して政府が円安是正に向けた為替介入に踏み切り、米国も協調して円買いに動いたことで、市場では早期利上げ観測が急速に高まっている。

会見では、日本の経済・物価は7月会合で示した最新の見通しに沿って推移しており、物価上振れリスクに対する認識も大きく変わっていないと語った。その上で、見通しが実現する確度は「時間の経過とともに、高まっているかもしれない」との認識を示した。

楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは講演後、「9月利上げを強く織り込んでいる市場の見方に対して、特にけん制するような内容はなかった」と指摘。一方で、9月以降の利上げペースについて触れなかったことから、「今後の焦点は、来月利上げするかどうかから、その後どの程度のペースで利上げを進めていくのかへと徐々に移っていく」との見方を示した。

日本銀行の氷見野良三副総裁(8月27日、さいたま市)

氷見野氏は金融政策運営について、基調物価が2%に近づく中で、現在の緩和的な金融環境を踏まえれば、「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と改めて説明。「適時にアクセルの踏み方を緩めていくのが望ましい」とも述べた。

足元の金利スワップ市場では、約81%が次回の9月17、18日の会合での利上げを予想している。その次の10月会合までの利上げを完全に織り込む中で、氷見野氏が9月会合での利上げやペース加速を示唆するような発言を行うかに市場は注目していた。

氷見野氏は金融環境に関し、利上げが遅れてインフレが加速し、急な利上げが必要になる事態を防ぐことの重要性を主張。それが「中小企業や住宅ローンの借り手、財政にとっても最終的には望ましいのではないか」との認識を示した。

また、金融政策は為替相場のコントロールを目的としないとしながらも、「為替相場の動向は、経済・物価情勢に影響を及ぼす重要な要因の一つ」だと指摘。その上で、過去と比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっており、基調的な物価上昇率に影響する可能性があることにも留意が必要だと語った。

27日午後の円相場は対ドルで159円台前半を推移している。米物価指標を受けた米金利上昇がドルを支える一方、氷見野副総裁の講演開始後、上げ幅はやや縮小している。

(記者会見での発言を加えて更新します)

--取材協力:藤岡徹、氏兼敬子.

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