(ブルームバーグ):米プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社トーマ・ブラボーの経営陣は、これまで以上に貸し手側に有利な条件を受け入れざるを得ないと承知した上で、交渉に臨んだ。問題は、貸し手の要求をどこまで受け入れるかだった。
貸し手にはブラックロックやインベスコといったウォール街屈指の資産運用会社が名を連ね、交渉力が自分たちに有利な方向へ移ったことを十分に認識していた。トーマが数年前に買収したサイバーセキュリティー・ソフトウエア会社プルーフポイントは、買収資金を賄うために積み上げた数十億ドルの債務を返済するのに、さらに時間を必要としていた。AIによって事業モデルが揺さぶられるとの警戒感が市場で強まる中、貸し手はその見返りとして厳しい条件を求めた。
貸し手側は望んだものを手に入れ、それ以上の成果も得た。
プルーフポイントの借り換えでは、トーマが当初提示した契約変更は約12項目だったが、9日間の交渉で、将来の借り入れ制限の強化や定期的な状況確認の電話会議など約40項目に増えた。さらに、50億ドル(約8000億円)の融資の大部分について返済期限を2年延長するため、年間6000万ドルの追加利息を支払うことになった。
しかも業界関係者によると、トーマにとって、これはまだ容易な案件の一つだった。トーマの傘下企業が抱える債務のうち、約90億ドルが2028年末までに返済期限を迎える。プルーフポイントの交渉は、今後の借り換えでトーマがどこまで厳しい条件を受け入れざるを得ないかをいち早く示している。
トーマ・ブラボーの担当者は貸し手側との交渉についてコメントを避けた。
ソフトウエア投資に逆風
PE各社は10年以上にわたり、多額の債務を支えられる予測可能な収益源に着目し、「サービスとしてのソフトウエア(SaaS)」企業を積極的に買収してきた。中でもトーマは数多くの企業を取得し、世界最大級のソフトウエアポートフォリオを築いた。
しかし今、そうした企業の多くはAIによって事業モデルが揺さぶられるとの懸念に直面している。売却や株式公開は難しくなり、通常は融資の返済期限より数年前に行われる借り換えも、ほぼ停滞している。
「SaaSに対する投資意欲は、数年前に比べてはるかに低い」と、ハーバード・ビジネス・スクールの金融部門責任者、ビクトリア・イバシーナ氏は述べた。
それでもトーマは重要な1点では譲らなかった。債務は引き続き「コベナントライト(財務制限条項が緩い融資)」とされ、プルーフポイントはレバレッジや利益などに連動する定期的な財務基準を満たす必要がない。トーマが同社に新たな自己資本を注入する必要もなかった。
市場関係者によると、この取引は他のPE会社にとって青写真となる可能性がある。ブルームバーグがまとめたデータによれば、PE各社が抱えるシンジケート型のソフトウエア関連債務のうち、今後数年間に返済期限を迎えるものは550億ドルを超える。
トーマにはさらに大きな試練が控える。サイバーセキュリティー会社ソフォスは3月に20億ドル超の返済期限を迎え、トーマにとってこれまでで最も困難な借り換えになると予想されている。予想を下回る営業実績とレバレッジ上昇を理由に、ムーディーズ・レーティングスは今年、ソフォスの格付けを「B3」に引き下げた。
プライベートクレジットによる資金確保が難航したため、トーマは広範なシンジケートローン市場で投資家への打診を始めた。プルーフポイントと同様、貸し手は債権者保護の強化を求めている。
ニューフリート・アセット・マネジメントのシニア・ポートフォリオマネジャー、フランク・オッシーノ氏は「AIによる事業環境のリスクでバリュエーションが大きく低下する一方、資本コストは上昇している。そこが課題だ」と述べた。

原題:Thoma Bravo Conceded 40 Deal Sweeteners as Debt Talks Heat Up
(抜粋)
--取材協力:Peter Champelli.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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