(ブルームバーグ):暗号資産(仮想通貨)の熱烈な信奉者が再び勢いを取り戻している。
ビットコインはほんの数日前まで、数カ月にわたりじりじりと下落してきた相場から抜け出せない様相を呈していた。それがほとんど前触れなく8万ドルに迫るまで急伸し、週間ベースで数年ぶりの大幅高を記録。ミームや「HODL(長期保有)」を呼びかける声が再び盛り上がり、勢いそのものが暗号資産をさらに押し上げるとの確信も息を吹き返した。
X(旧ツイッター)ではロケットの絵文字が再び飛び交い、弱気相場の終焉(しゅうえん)を告げる投稿が復活した。米ストラテジーを率いるマイケル・セイラー氏はAIで生成したナイトクラブのミームを投稿し、フォロワーに「ビットコインを買い、10年間保有し、雑音を無視し、恐怖を乗り越えろ」と呼びかけた。ストラテジーはビットコインなどを財務資産として保有する「デジタル資産トレジャリー企業」。
きっかけの一つは債券市場だ。ベッセント米財務長官が長期国債の買い戻し規模を少なくとも2倍に増やす計画を示したことで、当初は米国債利回りが低下し、ドルが下落する一方、金相場は急上昇した。
こうした組み合わせを背景に、通貨価値下落を見込む「ディベースメント取引」が再び勢いづいた。財政負担の増大と金融環境の緩和により、政府の通貨制度の外にある希少資産を保有する論拠が強まるとの考えだ。ビットコイン強気派にとっては、弱気ポジションが積み上がっていたタイミングで、新たなマクロ面の追い風が加わった形となる。
暗号資産の熱心な支持者とは言い難いヘッジファンド会社、ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者レイ・ダリオ氏さえ、債務が「持続不可能」な悪循環に陥っているとして、ビットコインを評価している。
暗号資産市場ではかねて、相場の勢いがさらなる勢いを生み出すことに大きな期待がある。
前回のブームも、こうした好循環によって膨らんだ。価格上昇で空売り筋が買い戻しを迫られ、現物の上場投資信託(ETF)に多くの資金が流入。暗号資産関連株やストラテジーなどの企業の株価も上昇し、一部の企業は資金調達余力が高まって、さらにビットコインを買い増すことが可能になった。その後、価格がさらに上昇すると、様子見していた投資家も市場に戻り、新たな需要が加わった。
過去1週間には、そうした仕組みが再び動き出す兆候が初めてうかがわれた。過去最高規模に膨らんでいた弱気の賭けが一掃され、現物取引高が急増し、ビットコインETFには新たな資金が流入した。
政策環境も追い風となった。トランプ大統領は、暗号資産市場の枠組みを定める「クラリティー法案」を可決するよう議会にあらためて要請。今回の相場サイクルを通じてデジタル資産におおむね支持的だった政権の姿勢を印象付けた。
上昇は極めて急ピッチで、ビットコインは広く注目されるテクニカル指標の100日と200日の移動平均線を上回った。14日相対力指数(RSI)も、トレーダーが買われ過ぎとみなす水準に達した。

スタンダードチャータードのジェフリー・ケンドリック氏は、相場上昇がさらなる上昇を呼ぶ余地があるとみている。2021年までさかのぼるデータでショートポジションの清算が過去最大となったことや、ビットコイン現物ETFへの週間流入額が10億ドルを超えたことを指摘。価格上昇がさらなる資金流入を呼び込み、最終的にはレバレッジをかけたトレーダーを市場に呼び戻す可能性があるとの見方を示した。
ケンドリック氏はリポートで「今年初めて、私の年末予想(10万ドル)が低過ぎる可能性が出てきた」とコメント。「価格がいかに速く上方向に加速するかを投資家が思い出し、10月6日という日付(過去最高値から12カ月)が過ぎれば、年末までに過去最高値(12万6000ドル)に向けてオーバーシュートする可能性がある」と指摘した。
ただ、わずか1週間の大幅上昇だけでは、相場上昇がさらなる上昇を生む好循環が再び動き出したとは言い切れない。ビットコインは5月以来の水準をようやく回復したに過ぎず、昨年10月に付けた過去最高値をなお約43%下回っている。新たな取引レンジを形成するには程遠い状況だ。
当初の急伸の多くの部分はショートポジションの強制的な買い戻しによるもので、ETF投資家の多くは依然、含み損を抱えている。過去の上昇相場を増幅させたデジタル資産トレジャリー企業の勢いも衰えたままだ。ビットコインは今年に入ってからも何度か反発したが、新たな買い手が続かず失速している。
新たな取引レンジを形成するには、ショートスクイーズ(踏み上げ)だけでは得られない持続的な需要が必要になる。
タロスのシニアアナリスト、タナイ・ヴェド氏は「明るい兆しもある。価格が上昇を続ける中、トレーダーが単にショートポジションを手じまうだけでなく、新たな買いが市場に入っている」と話した。
原題:Bitcoin’s Rally Leans on Fears That Fiscal Strains Are Mounting(抜粋)
--取材協力:David Pan、Sidhartha Shukla.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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