(ブルームバーグ):ソフトウエア企業は投資家からの信頼の危機に直面し、その払拭に向けて一段と踏み込んだ対応に乗り出している。
フィグマのディラン・フィールド最高経営責任者(CEO)は今月初め、約4600万ドル(約73億1500万円)相当の株式報酬の受け取りを辞退した。株主の持ち分を希薄化させる可能性があることを理由に挙げた。フィグマに先立ち、サービスナウとインテュイットも一手を打った。両社の経営陣はいずれも、当面は保有株を一切売却しないと足並みをそろえて表明した。
RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、リシ・ジャルリア氏は「多くの経営陣は自社の株価を見て、『どうすればいいのか全く分からない』と感じている」と語った。
AIツールやスタートアップに事業の一部を奪われるとの懸念から、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)企業のバリュエーションは急落した。SaaSとアポカリプス(終末)を掛け合わせた「SaaSpocalypse(サースポカリプス)」と呼ばれる現象だ。対抗策として、ソフトウエア各社は相次いで独自のAI製品を投入し、AIブームの波にうまく乗れると主張している。
来週には、業界の指標的存在であるセールスフォースが四半期決算を発表する。経営陣はその場で、AIを巡る投資家の懸念を払拭しようと試みるとみられる。業界の多くの経営トップも最近、こうした決算説明会で、強い調子で反論するようになっている。

例えば、サービスナウのビル・マクダーモットCEOは、アナリストに「当社の時価総額を元に戻してもらって構わない」と語った。同氏は普段から強気な発言で知られる。こうした業界の反論を端的に表すのが、3月のオラクルのラリー・エリソン氏の発言だ。「SaaSpocalypseが当てはまるのは他社であって、当社ではないと考えている」と述べた。
総じて投資家は、既存のソフトウエア企業のAIツールが、本業の成長鈍化を補うほどのペースで増収につながっているとはみていない。2010年代に市場の羨望を集めたソフトウエア企業も、20年代前半のピークから時価総額がほぼ半減した。

セールスフォースが取った対応の1つが、業績の実態を分かりにくくすることだ。同社は、個別製品の売上高について開示する情報を減らすと発表した。さらに、主力製品の多くを改称し、AIツール「Agentforce」の名称を加えた。例えば、営業担当者が顧客との連絡や商談を管理する同社初期のヒット製品「Sales Cloud」は、現在「Agentforce Sales」と呼ばれている。
製品名にAIを加える動きは、セールスフォースだけではない。オラクルも25年終盤、主力データベースの名称を「Oracle AI Database」に変更した。RBCのジャルリア氏は、既存事業をAI事業に見せかけるような名称変更は、かえって投資家の警戒を招くと指摘する。会社全体の売上高の伸びが加速していなければ、AIが成長に貢献していると投資家を納得させるのは難しいという。
一方、経営トップを入れ替えることで変革を印象付けようとする企業もある。アドビは後任を決める前に、CEO探しを公表するという異例の対応に踏み切った。ワークデイは共同創業者のアニール・ブースリ氏を経営トップに呼び戻した。営業をより重視する後任に経営を託してから、わずか2年での復帰だ。C3.aiのトム・シーベル氏も5月、CEOを退いてから1年足らずで同様に復帰した。
ここ数週間、一部のソフトウエア株は回復し始めている。パランティア・テクノロジーズやスノーフレイク、マイクロソフトなどで、売上高の伸びが加速していることが示されたためだ。シティグループのアナリスト、タイラー・ラドキー氏によると、株価上昇は主にインフラ向けソフトウエア企業に限られ、アプリケーションを手掛ける企業には広がっていない。
ラドキー氏は経営陣への助言として「小手先の策に走らない方がいい。投資家には見抜かれる」と語った。重要なのは、AI時代に合わせて自らを変革し、新たな事業を築くことだという。「見せ方や表面的な取り繕いでできることは何もない」と述べた。

それでも投資家の信頼を取り戻せない企業は、数少ない確実な手段の1つ、自社株買いに頼っている。セールスフォースは今年初め、250億ドルを借り入れ、借金を原資とするものとしては企業史上最大規模の加速型自社株買いを実施した。マーク・ベニオフCEOは、同社株の大幅な下落を「絶好の買い場」と表現した。
アドビも株価が下落する中、過去18カ月で約160億ドルの自社株を買い戻した。シャンタヌ・ナラヤンCEOは6月、「資本を自社株買いに振り向けることに強い自信を持っている」と述べた。
原題:Software Firms Deploy Bluster and Buybacks to Counter AI Fears(抜粋)
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