(ブルームバーグ):トランプ米政権が長期国債の買い戻しを増額するという予想外の措置を発表したことについて、米連邦準備制度理事会(FRB)が2011年に債券利回りを押し下げるために実施した「オペレーション・ツイスト(ツイストオペ)」との類似性が指摘されている。
当時、FRBはグレート・リセッション(大不況)からの景気回復を後押しするため短期金利を大幅に引き下げていたが、それでも長期の米国債利回りは高止まりしていた。あらゆる種類の借り入れコストが高止まりし、FRBの取り組みの効果を相殺していた。
現在の景気は当時よりはるかに良好だ。しかし、米国の対イラン戦争が始まって以降、債券市場では売りが続き、米長期国債利回りは2007年以来の高水準に上昇した。政府の借り入れコストを押し上げ、11月の議会選挙を目前に米国民の利払い負担を一段と重くしており、当局者を悩ませている。
ベッセント米財務長官は、10年債利回りの水準を政権の成果を測る指標として掲げてきた。19日には市場を逆方向に動かそうと、財務省が残存期間10-30年の米国債の買い戻しを「少なくとも」倍増させると発表した。
その効果は少なくとも一時的には表れた。30年債利回りは一時10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して5.18%を付けた。その後は低下幅を縮小した。10年債利回りは5bp低下し4.66%となった。
ドイツ銀行のストラテジストは、この措置に景気後退後のFRBの政策との共通点を見いだした。
同行のストラテジスト、ジョージ・サラベロス氏はリポートで「オペレーション・ツイストがやってきた」と指摘。この手法について、事実上「緩やかな形の金融抑圧」だと表現した。
ベッセント氏は既に、年間約2兆ドル(約316兆円)に上る財政赤字について、より多くを短期の財務省短期証券(TB)の発行で賄う方向に転換し、長期金利への圧力を一部和らげている。
米財務省が最近示した方針を受け、一部の国債発行額そのものを縮小し、この動きを加速させるとの観測が広がった。また、ベッセント氏が円相場の下支えに動いたことについては、日本当局が必要なドルを確保するため米国債を大量に売却するのを防ぐ狙いと受け止められた。米国債の最大の海外保有国による追加売却への懸念が高まれば、相場下落がさらに悪化する恐れがあったためだ。
米財務省は19日、買い戻し資金の調達方法を明らかにしなかった。ただ、大半のアナリストは短期債の発行を増やし、事実上、長期債の一部をより年限の短い国債に置き換えることになるとみている。
バークレイズのストラテジストは、買い戻しの増額分を1四半期当たり約160億ドル、年間640億ドルと試算する。これは現在の20年債と30年債の年間発行額の約15%に相当する。
ベッセント氏は24年、バイデン政権が短期債発行に依存していることについて、選挙前に人為的に景気を刺激する試みだとして批判していた。同氏は就任当初、トランプ氏の政策によって連邦政府の歳出とインフレが抑えられ、長期金利も低下すると主張していた。しかし、トランプ政権はいずれも実現できておらず、10年債利回りは現在、トランプ氏がホワイトハウスに復帰した時点を上回っている。
エバコアのエコノミスト、クリシュナ・グハ氏とマルコ・カシラギ氏は、財務省の措置を「極めて小規模なオペレーション・ツイスト」と表現。措置の規模が限られているため、持続的な効果を生み出せなければ、逆効果になる可能性すらあると警告した。両氏は「このオペレーションによってファンダメンタルズはほとんど何も変わらない」と記した。
原題:Treasury Bond Buybacks Evoke Memory of Fed’s ‘Operation Twist’(抜粋)
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