(ブルームバーグ):中東での戦争終結に向けた協議が行き詰まる中、ホルムズ海峡で新たに複数の船舶が攻撃を受けた。米国はイランに降伏を迫るため、新たな経済措置を準備している。
英国海事貿易機関(UKMTO)は15日、ばら積み貨物船の船体に飛翔体が命中したとの通報を受けたと発表した。アラブ首長国連邦(UAE)の国営首長国通信(WAM)によると、アブダビ国営石油会社(ADNOC)の船舶2隻が13日にホルムズ海峡を航行中に攻撃を受け、別の1隻も14日夕に攻撃された。負傷者の報告はない。
戦争前には世界の石油・ガスの2割が通過していた同海峡は、約6カ月に及ぶ戦闘を恒久的に終結させるための交渉で主要な争点となっている。米国は、ペルシャ湾とオマーン湾、アラビア海を結ぶ同海峡の自由な航行を回復すべきだとの姿勢を崩していないが、イランは支配権を維持すると主張している。

交渉の行き詰まりが早期に解消するとの期待が後退し、北海ブレント原油は今週、6%近く上昇した。国際海事機関(IMO)によると、今回の紛争ではホルムズ海峡や中東の広い地域で船舶が関係する事案が約65件確認され、11日時点で船員17人が死亡した。
トランプ大統領は戦争を終わらせる道筋を見いだせずにいる。米国とイスラエルが2月28日にイランへ空爆したことで始まった戦争では、これまでに数千人が死亡。その大半はイランでの死者だ。トランプ氏は14日、FOXニュースに対し、米国はイラン経済に大きな打撃を与える計画だと述べた。11月の中間選挙までに紛争が終結するかどうかは気にしていないとも語った。
トランプ氏は14日のニューヨーク州ロングアイランドでの演説で、米国によるイランの港湾封鎖は、米国がホルムズ海峡を事実上統治することを可能にする「鋼鉄の壁」だと述べた。軽く笑いながら、「近いうちにホルムズ海峡を米国領と宣言することになるだろう」とも話した。
イランとオマーンは、同海峡を通る航路の設定を巡り長期にわたって交渉を続けているが、米国はこの協議には参加していない。

イランのアラグチ外相は、オマーンとの実務協議が続いており、近くまとまる可能性があると述べた。ただ、合意してもホルムズ海峡の再開にはつながらないとの見方を示した。
アラグチ氏は15日、テレグラムへの投稿で、海峡再開は「別問題だ。実現するかどうかは、米国が順守すべき他の条件が満たされるかにかかっている」と述べた。イランはカタールとパキスタンの仲介者を通じて米国とメッセージをやり取りしているものの、「これは交渉には当たらない。米国との交渉再開についてはまだ決定していない」と付け加えた。
トランプ氏がイランへの経済的圧力を再び強めようとしている背景には、米国が弾薬不足に直面し、軍事作戦の拡大に対する国内の反対が強まっていることがある。
ベッセント米財務長官は13日のニュースマックスとのインタビューで、イランを対象とする新たな経済措置について、「来週、さらに発表がある」と述べたが、具体的な内容には触れなかった。こうした措置は「一国を経済的に孤立させるという点で、歴史上かつてないものになる」と語った。
イラン経済はすでに大きな打撃を受けている。産業基盤の多くが損傷し、米国の封鎖によって原油輸出も大幅に制限されている。ただ、相次ぐ制裁でも、イランは核開発計画で譲歩せず、ホルムズ海峡の支配権も手放していない。

米国が中国などイラン産原油の買い手に対する二次制裁に踏み切ることなく、実効性のある追加措置として具体的に何を実施できるのかは不透明だ。二次制裁に踏み切れば、中国政府の報復を招き、世界のエネルギー価格を巡る不透明感が一段と強まる可能性が高い。
一方、イランは戦争終結に向けた協議が行き詰まる中、国外でより攻勢を強められるよう軍の再編を進めている。地域紛争が長期化する可能性に備えていることを示す動きだ。
中東の不安定な情勢は米国とイランの紛争にとどまらない。イスラエルはレバノン南部で親イラン派武装組織ヒズボラ、ガザではイスラム組織ハマスの戦闘員と交戦を続けているほか、親イラン派武装組織フーシ派は紅海で船舶を攻撃している。3組織はいずれもイランの支援を受けている。
レバノンのサラム首相は、イスラエル軍が15日に同国で激しい空爆や砲撃を含む攻撃を行い、少なくとも9人が死亡、11人が負傷したと述べた。サラム氏はXへの投稿で、事態は「極めて深刻」で、安定化に向けた取り組みを損なうものだと指摘した。
イスラエル国防軍(IDF)はこれに先立ち、ヒズボラの行動への対抗措置として、レバノン南部のヒズボラの施設を攻撃したと発表。作戦を継続するとした。
サラム氏は「レバノン領内に軍事施設が存在するのであれば、その対応に責任を負うのはレバノン政府だけだ」と述べた。
今回の戦闘激化により、米国の仲介でイスラエルとレバノン両政府が合意した停戦が頓挫する恐れがある。この停戦ではヒズボラの武装解除に加え、IDFが最終的に占領地域から撤退し、レバノン軍が治安維持を担うことが想定されている。
原題:Hormuz Ship Attacks Mount as US Vows to Cripple Iran Economy (1)(抜粋)
--取材協力:Laura Davison、Yi Wei Wong、Marcus Wright、Dan Williams.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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