(ブルームバーグ):マーケットメーカー(値付け業者)の米ジェーン・ストリートが7月に約150億ドル(約2兆3900億円)の損失を計上した。事情に詳しい関係者が明らかにした。月間でマイナスとなるのは約10年ぶり。AI分野に特化したヘッジファンド、シチュエーショナル・アウェアネスが苦境に陥り、その影響が株式市場に広がって幅広い資産価格を押し下げたことが響いた。
シチュエーショナル・アウェアネスに出資するほか、AI関連企業にも直接投資しているジェーン・ストリートは、株式相場が不安定な動きとなる中、異例の深刻な不振に見舞われた。
非公開情報だとして匿名を条件に語った関係者によると、シチュエーショナル・アウェアネスへの投資に加え、アジア株式市場で相場の方向を読み違えた取引が損失の一因となった。
ジェーン・ストリートのパートナー、ターナー・バティ氏は社内文書で、「7月は厳しい月だった」と説明した。
それでも、同社の年初来の純トレーディング収入は400億ドルを超え、ウォール街で過去最高を記録した2025年通年の実績を上回っていると、関係者は述べた。
バティ氏は「年初来でトレーディング資本を大幅に増やしているものの、こうした損失が直近に発生したことを受け、一部ではリスクの選別をより厳しくしている」と指摘。「7月に損失を出した特定分野では、リスクのかなりの部分を解消したほか、他の戦略でもリスクテイクを減らしている」とした。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ジェーン・ストリートは数十億ドル規模の債務の借り換えを目指す中、シチュエーショナル・アウェアネスで起きた混乱が及ぼした影響を明らかにした。FTは今回の損失を先に報じていた。
今回はつまずく
ジェーン・ストリートは、シチュエーショナル・アウェアネスの不振と株式市場の混乱で打撃を受けた。同社は債務構成を見直すため、今週146億ドルの社債を発行する準備を進めていた。
ジェーン・ストリートはアンソロピックやコアウィーブなどAI業界の有力企業に早期から投資し、そこから得た利益を、数千件の取引を数ミリ秒以内に処理する事業からの利益に上乗せしてきたが、今回はつまずく形となった。
7月には、AI関連の投資が裏目に出たシチュエーショナル・アウェアネスが追加証拠金の請求に直面し、ケン・グリフィン氏率いるシタデルと、保有する上場株式の相当部分を手放す取引で合意した。土壇場でまとまったこの取引によって同ファンドは持ち直したものの、それまでの不振で資産は減少した。
ジェーン・ストリートによれば、シチュエーショナル・アウェアネスの資産価値の下落により、同ファンドへの出資分の年初来の損益は横ばいとなった。ただ、投資開始以来ではなおプラスだとしている。
ジェーン・ストリートは近年、相次いで記録を更新しており、25年のトレーディング収入は396億ドルに達した。この数字には取引執行業務による収益に加え、長期投資の利益も含まれ、ゴールドマン・サックス・グループやJPモルガン・チェースなどウォール街の同業他社を上回った。
提出書類によると、ジェーン・ストリートによる今回の社債発行には、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)やキャピタル・グループ、フィデリティなど投資家が参加した。社債は3本に分けて発行された。ブルームバーグが先に報じたところでは、この借り換えにより、ジェーン・ストリートはテクノロジー基盤への資金投入やトレーディング戦略の拡大が可能になった。
JPモルガンが主幹事を務めた今回の新たな固定金利債による調達は、変動金利ローンを返済し、110億ドル規模の資本構成を見直すジェーン・ストリートの計画の一環だ。
バティ氏は社内文書で、各トレーディング部門が変動の一因となった戦略へのエクスポージャーを減らしたことを明らかにした。
「現在のポジションは、当社のリスク許容度に照らして適切とみられる」とした上で、「市場の取引量は堅調で、短期取引戦略の改善も続けており、こうした取引はこれまでになく収益性が高いようだ」との認識を示した。
原題:Jane Street Lost $15 Billion in Its First Down Month in a Decade(抜粋)
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