米テクノロジー企業による大量の社債発行がクレジット市場に波及する中、世界で最も信用力の高い一部の企業でも、意図せず信用リスクを示す指標が上昇しているようだ。

BNPパリバのストラテジストは、信用力の高い企業が集まる市場での資金獲得競争激化の波及効果が起きていると指摘する。大手テクノロジー企業が数十億ドル規模の借り入れを相次いで行う中、データセンターやAIとは無関係の企業でさえ、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料が上昇している。

BNPパリバは分析に使用した個別企業を明らかにしていない。ただ、ブルームバーグがまとめたデータによると、高級品大手LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン、製薬会社サノフィ、防衛大手BAEシステムズなどのCDSスプレッドが、昨年末から10%超拡大している。

BNPパリバの欧州クレジット戦略責任者、ジョシュ・ファーバー氏は、「信用力の高い企業はすべて、資金を巡ってハイパースケーラーと競合している」と述べ、いずれは国債にも影響が及ぶ可能性があると付け加えた。

ファーバー氏の分析は、投資適格級企業のCDSで構成する「iTraxx欧州指数」に焦点を当てている。同氏によると、投資家資金の獲得競争によって、個別企業のCDSスプレッドが同指数の平均に収れんするという、大きな流れが生じている可能性がある。BNPは顧客に対し、スプレッドの小さい銘柄群のCDSプロテクションを買う一方、指数のプロテクションを売るという取引を推奨した。

CDS指数のスプレッドは約20年ぶりの低水準近くにあるため、現在起きている傾向はすぐには分からない。信用力の低い銘柄に投資が集中し、CDSプロテクションのコストが低下していることが一因だ。

CDS指数は複数企業で構成する銘柄群の信用リスクを対象とし、個々の企業を対象とするCDSとは独立して取引される。クレジット市場で最も流動性の高い金融商品の一つで、リスクヘッジや相場の方向性を見込んだ取引のため、毎日数百億ドル相当のスワップが売買されている。

個別企業のCDSスプレッドが指数平均に収れんしていくと、相場が悪化した際の緩衝の余地が減ることになる。

大口の借り手

ファーバー氏は、資金獲得を巡る激しい競争は世界的な現象だとしている。AI事業を急速に拡大しようとするハイパースケーラーは世界各地で資金調達に乗り出し、英国、日本、スイスなどの市場で、ほぼ一夜にして最大級の借り手となった。

大手テクノロジー企業による債券供給の急増と、スプレッドへの波及効果が、クレジット市場を揺り動かすきっかけになるとの見方もある。

レッドヘッジ・アセット・マネジメントのアンドレア・セミナラ最高経営責任者(CEO)は、「ここ数年の状況と比べれば、クレジット市場にとって本当の警鐘となり得る。市場のスプレッドが縮小し続け、ほとんど何も動かない状態は持続不可能だ」と述べた。

ブルームバーグの指数によると、世界の投資適格社債のスプレッドは現在約80ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)で、金融危機後の最低水準との差はわずか約6bpだ。セミナラ氏は、「米企業のスプレッドが拡大すれば、投資適格級市場全体の価格が見直される可能性がある」と述べた。

ウォール街のアナリストの間では、今年後半または来年、テクノロジー企業によるさらなる債券発行が行われるとの見方が広がっており、各社の債券や関連するCDS、市場全体に一段の圧力がかかる可能性がある。

BNPパリバのファーバー氏は、スプレッドの小さい優良銘柄をどう見るべきなのかという疑問が浮上し始めていると指摘する。同氏は「市場は、取っているリスクに対して、実際には十分な対価を得ていないことに気付き始めた」と述べた。

原題:Big Tech Drives Up Credit Risk for Safe Firms With No AI Links(抜粋)

--取材協力:Selina Chen.

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