米半導体大手エヌビディアの信用リスクを示す指標が11日に低下した。エヌビディア製半導体の需要を押し上げているAIインフラの整備に、5000億ドル(約79兆6400億円)を投資する計画について、同社が自社の負担を抑える方針を示したことを受けた動きだ。

早くも懸念緩和の兆しが顕在化した形で、2056年償還で表面利率5.625%のエヌビディア債の利回りは11日、同年限の米国債に対する上乗せ幅が一時113ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、前日比2bpの低下となった。

また、エヌビディアのデフォルト(債務不履行)リスクに備える5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証コストは約4bp低下の73bp近辺、元本1000万ドル当たり年間約7万3000ドルとなった。同コストは7月終盤に年間最大8万2000ドルと、それまでのほぼ2倍に上昇していた。

エヌビディアがAIブームを下支えするために負うコミットメントは、日を追うごとに膨らんでいるように見受けられる。ブルームバーグは7月、エヌビディアが関与する大型案件の最新例として、オハイオ州でOpenAI向けの巨大データセンター建設を始動させるため、最大2500億ドルの資金支援を引き受ける方向で協議していると報じた。

このようなニュースはAI推進派を勇気づける一方、信用市場ではエヌビディアが循環的な資金供給によってAI資産バブルを膨らませているとの新たな懸念を招いた。顧客への融資によって当面はエヌビディアの売り上げが増えるものの、顧客が行き詰まれば後に痛手となる可能性がある。

ウォール街のお墨付き

こうした中、エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は10日、金融業界の大手各社に協力を求めたと明らかにした。その狙いは、外部資金を呼び込み、高度な専門知識を持つ投資家が案件を精査し、ウォール街のお墨付きを得ることだ。

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

エヌビディアによると、ブラックロックやゴールドマン・サックス・グループを含む大手投資会社6社の連合が、AIインフラ整備への資金供給に向け5000億ドル超を用意する。各社は個々の案件と自社の参加規模を独自に判断する一方、エヌビディアの拠出は比較的限定され、一部の案件にのみ加わる。

GW&Kインベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ブレット・コズロウスキー氏はインタビューで、ウォール街の大手各社によるコミットメントについて「インフラ整備と顧客の将来の支出を巡る不確実性を和らげる上で、前向きな進展だ」と述べた。

半導体への旺盛な需要を追い風に、エヌビディアは時価総額が5兆2000億ドルを超え、世界で最も時価総額の大きい上場企業となった。ただ投資家の間では、近年ますます高額になっている半導体やデータセンターの費用を賄う上で、エヌビディアの顧客が同社による資金支援に過度に依存しているのではないかとの懸念が強まっている。

10日発表の新たな枠組みでは、ブラックロックとゴールドマン・サックスに加え、アポロ・グローバル・マネジメント、ブラックストーン、ブルックフィールド・アセット・マネジメント、KKRなどが調達した資金を呼び込む。

各社はプロジェクトごとに独自に評価し、資金を拠出するかどうかを判断する。一方、エヌビディアは、独立した資金提供者と資金需要者を結び付ける市場を構築すると説明し、自社の役割をプラットフォームの提供と位置付けた。

エヌビディアは一部のプロジェクトについて、最大25%を保証する形で支援する。残存価値メカニズムと呼ばれる仕組みを活用し、プロジェクトが行き詰まった場合の損失を抑える。同社は詳細をあまり明らかにしていないが、自社の半導体は幅広い顧客が利用できるため、損失を最小限に抑えることが可能と考えられると説明した。

「パニック的な設備投資」

それでも、AIインフラ整備と信用環境全般について依然としてリスクはあると、アンドロメダ・キャピタルの共同創業者、アルベルト・ガロ最高投資責任者(CIO)は話す。

ガロ氏はインタビューで、信用市場は米国のコンピューティング能力に対する需要とその価値に賭ける動きを強めており、投資家は引き受けているリスクに見合うだけのリターンを得ていない可能性があると指摘。データセンターなどのインフラに数兆ドル規模の資本を猛烈な勢いで投じる競争では勝者と敗者が生じるため、デフォルト(債務不履行)が発生する可能性があると語った。

ガロ氏は「実質的にパニック的な設備投資が起きている」とし、「損失を負担するのは誰か。社債保有者であり、生命保険会社であり、保険契約者だ」とコメントした。

現時点では、エヌビディア自体は高い収益力を維持しており、信用面での圧力に耐える十分な余力がある。1月25日に終了した会計年度のフリーキャッシュフロー(FCF)は約1000億ドルだった。外部の企業がリスクの多くを引き受けることで、エヌビディアが巨額の損失を負担しなければならなくなる可能性は低下したと、投資家は現在みている。

コヒーレンス・クレジット・ストラテジーズのサル・ナロCIOは「5000億ドル規模もの資金調達が何を意味するのか、誰にも分かっていなかった」とした上で、「今日になって、幅広い企業を巻き込んでいることや、エヌビディアのエクスポージャーが投資家が当初懸念していたほど深刻ではないことが分かってきた」と指摘した。

原題:Nvidia’s Show of Financial Force Soothes Credit Markets (1)、Nvidia Credit Risk Eases After CEO Clarifies $500 Billion Plan(抜粋)

--協力:Ian King、杉山容俊.記事に関する記者への問い合わせ先:New York Caleb Mutua dmutua@bloomberg.net;Toronto Layan Odeh lodeh3@bloomberg.net記事についてのエディターへの問い合わせ先:Dan Wilchins dwilchins@bloomberg.net;Jennifer Surane jsurane4@bloomberg.netRick Green、William Selway

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