サイバーセキュリティーの専門家は、アンソロピックとOpenAIのAIモデルが外部組織への侵入に成功したことを受け、両社の安全対策はずさんだったと批判している。専門家は、こうした事態は国家安全保障上の差し迫った脅威を示すものだと警鐘を鳴らしている。

アンソロピックは30日、同社のAIモデルが、サイバーセキュリティー試験中に三つの異なる外部組織に侵入したと発表した。アンソロピックが14万1006件の評価テストを検証した結果、同社のAIツール、Claude(クロード)がネットにアクセスし、「外部組織の現実環境インフラ」に侵入した事例が3件確認された。最も早期の事例は4月にさかのぼるという。

この約1週間前には、米OpenAIが自社の高度なAIモデルがAI開発プラットフォームのハギングフェイスに意図せず侵入した「前例のない事案」が発生したと明らかにしていた。

英国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)の元トップ、キアラン・マーティン氏は「サイバーセキュリティーの観点から見れば、多くの人はこれはずさんだと受け止めるだろう」と述べた。

マーティン氏によると、一般的なサイバーセキュリティー企業が同様のミスを犯せば、訴訟や規制当局による措置に直面する可能性がある。サイバーセキュリティー企業は通常、安全性テストや危険なコードの解析を行うための仮想的かつ隔離されたソフトウエア環境であるサンドボックス内で危険性のあるツールを検証し、その安全対策が機能することを確実にする責任があるという。

今回の事案は、自律型のAIシステムが国家安全保障にもたらし得るリスクへの懸念も高めている。米国防総省の統合AIセンターの戦略・政策部門元責任者、グレゴリー・アレン氏は、米軍は先進AIモデルをシステム防御に活用すべきだが、その一方でAIが新たな種類のリスクを生み出していることも認識する必要があると述べた。

アレン氏は、「アンソロピックがこれらの侵入を発見できたのは、調査を始めたからだ。現時点で自律型AIによるハッキングがどれほど広がっているのか、実際には誰にも分かっていない」と語った。

現在、シンクタンクの新アメリカ安全保障センターに所属する元米国務省AI政策担当者、ダニエル・レムラー氏は、米国の組織は、自律型サイバー攻撃への防御に使えるAIツールを十分に利用できる状況にはないと指摘した。ハギングフェイスは、米国製モデルを信頼できなかったため、中国製のオープンウエートモデルを侵害の原因調査や修復作業に使用せざるを得なかったという。レムラー氏は、同程度のコーディング能力を持つ他のオープンモデルも中国製だと述べた。

レムラー氏は、企業や政府は今回の事案を契機としてAIを活用したサイバー防衛へのアクセスを拡大すべきだと主張。中国のAIシステムの能力向上が進めば、近い将来、米国の組織に対する自律的な攻撃が可能になる恐れがあり、今のうちに対抗策を整備する必要があると警告した。

レムラー氏は、「今回の事案によって、今年末か来年第1四半期までには中国版ミュトスが登場するという現実を直視すべきだ」とし、「そうなれば、これらのエージェントがハギングフェイスのような米国の組織を自律的に攻撃できる状況に直面する。それにもかかわらず、私たちはその防御について十分に考えていない」と語った。

原題:Anthropic, OpenAI Cyber Failures Point to US Security Risks(抜粋)

--取材協力:Jake Bleiberg、Patrick Howell O'Neill.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.