BEIの水準を考えると、FRBのタカ派姿勢は行き過ぎか

7月27日の米国債券市場では、インフレ懸念が後退し、イールドカーブはブルフラット化した。長期金利は前日比▲2.8bp、2年金利は▲0.8bpだった。原油価格の下落を背景に、インフレ予想(BEI)がまとまった幅で低下した。この日は10年実質金利が前日差+1.4bpと上昇した一方で、10年BEIは同▲4.4bpとまとまった幅で低下した。

このところは原油価格が下落すると、FRBの利上げ観測が後退してきたが、この日はFF金利先物市場の変化はほとんどなかった。これらの動きを整理すると、FRBのタカ派観測が根強い中で原油価格が下落し、先行きのインフレ予想が一段と低下していると言える。この日、10年BEIは2.20%となり、6月24日につけた2.19%に迫った。

6月24日のWTI原油先物価格が70.34ドルで、足元は82.61ドルであることを考慮すると、現在のインフレ予想はかなり弱いと言える。仮に10年BEIが一段と低下し、2.19%を割り込んだ場合、25年4月10日(トランプ関税ショック後)の2.17%以来の水準となる。さらにその水準を下回った場合、24年9月以来の水準となる(当時は24年9月10日に2.03%まで低下)。24年9月は50bpの大幅利下げに踏み切り、その後も11月、12月と、連続利下げが実施された。足元のインフレ予想は、利上げではなく利下げを示唆する水準だと言える。7月28-29日のFOMCがタカ派的な結果になる可能性は低いだろう。

FRBのタカ派姿勢が後退すれば、日銀も様子見へ

FOMCがハト派的(ないしはニュートラル)な結果となれば、7月30-31日に予定されている日銀金融政策決定会合も様子見となる可能性が高い。また、消費税率の引き下げの議論も日銀を動きにくくするだろう。

複数の報道によると、高市首相は食料品の消費税率の引き下げについて、27年4月から1%に引き下げる(2年限定)方針を固めたという。「骨太ショック」を経て、高市政権は金融市場の動き(円安、金利上昇)を懸念していることが明らかになってきたため、現時点では市場の反応は大きくなさそうである。もっとも、自民党内からは反対の声も上がるだろう。野田毅元自民党税調会長は毎日新聞のインタビューで、「消費減税は絶対にやってはいけない」と厳しく批判した。仮に、高市首相が消費税率の引き下げを強行するような構図となれば、市場では「高市リスク」(財政リスクの高まりによる金利上昇、円安圧力)が意識される可能性がある。

再び円安圧力が高まれば、日銀は追加利上げを実施する可能性が高い。中立金利が意識される中、利上げのカーブをできるだけ温存したいと考えれば、消費税率の引き下げの議論が一巡するまでは様子見だろう。むろん、植田総裁の会見が過度にハト派的と受け止められ、円安が進む可能性はある。その場合は為替介入が入る可能性を警戒すべきだろう。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)