(ブルームバーグ):トランプ米政権は、AIモデルの安全性を審査する独立規制機関の創設を検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。シリコンバレーの企業幹部らは、最先端AIモデルの公開を遅らせる政府の対応が場当たり的だと不満を示していた。
関係者によると、AIを監督する独立規制機関を創設し、米金融取引業規制機構(FINRA)のように、米証券取引委員会(SEC)の監督下に置くことを想定している。この構想の策定にはベッセント財務長官が関与し、現在はワイルズ大統領首席補佐官が検討しているという。非公開情報であることを理由に関係者は匿名を条件に語った。
このような仕組みが導入されれば、アンソロピックやOpenAIなど最先端AI開発企業にとって、規制の予見可能性が高まることになる。
アンソロピックは先月、米国の輸出規制の対象となり、「フェイブル(Fable)5」と「ミュトス(Mythos)5」の両モデルの提供を一時停止する事態に追い込まれた。OpenAIも最新モデル「ソル(Sol)」の公開に先立ち、政府の要請を受けて大幅な変更を余儀なくされた。両社とも、米当局が指摘した安全性の問題に比べ措置が過剰だと反発していた。
関係者によると、同提案はAIのサイバーセキュリティーリスクを最小限に抑えたいウォール街の金融機関と、新技術の監督を巡る政権の一貫性のない姿勢に不満を募らせるシリコンバレー企業の双方に配慮する狙いがある。枠組みはなお検討中で変更の可能性があるものの、両業界が安全基準の共同策定において、より大きな役割を果たすことを認める内容だという。
関係者の一人によると、トランプ大統領はまだ計画を検討していない。ただ、中国発の新型AIモデルのリリースを受け、当局者らはAI業界に明確な指針を示すための作業を加速させている。こうしたモデルの登場で米株式市場ではAI関連株が売られた。ワイルズ氏は通常、関税やAI政策のように大統領にとって政治的リスクの兆候があり、省庁横断の調整を要する政策論議に限って関与する。
ホワイトハウス当局者は、AI分野での米国の優位を確固たるものにし、サイバーセキュリティーを強化するため複数の提案を検討していると述べた。財務省はコメント要請に直ちには応じなかった。
「Kimi K3」
AI監督を巡る協議は、この技術の主導権を巡る中国との競争が激化する中で進んでいる。中国のAIスタートアップ、ムーンショット(月之暗面)は17日、新モデル「Kimi K3」を公開。OpenAIやアンソロピックの高価なシステムに匹敵する性能とされ、米国のAI業界が半導体やデータセンターへの巨額投資を持続できるのかという新たな疑問が投資家の間で広がった。
ベンチャーキャピタリストで、ホワイトハウスのAI政策責任者を務めた後も引き続きトランプ氏にテクノロジー面で助言するデービッド・サックス氏は、中国の新モデルについて「懸念される」と指摘。AIモデルへの政府承認の導入推進など、米国が「自縄自縛に陥っている」ことの結果だとの見方を示した。
当局者や経済界にサイバー能力への警戒感を抱かせたアンソロピックの「ミュトス」モデルの公開以降、トランプ政権はAIの安全性リスクにどこまで強い姿勢で臨むべきかを巡り、対応に苦慮してきた。先月には、外国籍の利用者によるアンソロピックの最上位AIモデルへのアクセスを遮断するという、より厳格な措置に踏み切った。ただ、今回の提案は、AI企業との協力の下で任意の審査制度を構築するとしたトランプ大統領の従来の命令が示した路線に沿う、より穏当な内容となっている。
ハサビス氏の提言
米政府の計画は、グーグル・ディープマインドのデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)が今週公表した政策提言とおおむね一致する。ハサビス氏は来週、ワシントンで政策当局者らと会談し、自らの構想を働きかける予定だ。同氏の提言には、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOのほか、通常は激しく対立するOpenAIのサム・アルトマンCEOとスペースXのイーロン・マスクCEOも賛意を示した。
ハサビス氏の構想では、連邦政府が監督する標準化団体の下で、独立した技術専門家による委員会がAIモデルを審査する。人材や計算資源にかかる資金は業界がこの自主規制機関に拠出し、同機関は政府機関や米国の国立研究所と連携してサイバーセキュリティーや生物学的脅威などの分野でモデル検証手順を策定するという。
ハサビス氏はX(旧ツイッター)への投稿で、この監視機関をFINRAになぞらえた。FINRAは証券業界が資金を拠出している独立規制機関で、厳密には米政府の一部ではなく、証券取引委員会(SEC)から権限の委任を受けて監督業務を実質的に担っている。
政権の提案がどのようなモデル評価を求めるのか、新機関の財源をどう確保するのか、AI企業の監督でSECがどのような役割を担うのかは依然として不明だ。OpenAIとアンソロピックはいずれも非公開企業だが、両社とも1年以内の新規株式公開(IPO)を視野に入れている。
原題:US Considers Creating Finra-Like Watchdog to Vet Top AI Models(抜粋)
(4段落目以降にこれまでの経緯などの情報を追加して更新します)
--取材協力:Shirin Ghaffary、Nicola M White.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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