米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長は、6月のインフレ鈍化は物価安定の達成を意味するものではないと述べ、就任後初めて、FRBが最終的にどのような対応を迫られる可能性があるかについて示唆した。

ウォーシュ氏は14日の約3時間にわたる米議会証言で、FRBが長年にわたり2%のインフレ目標を達成できていない中、物価安定をどう取り戻す考えなのかについて、議員らから質問を受けた。

ウォーシュ氏は金融政策の引き締めを示唆するまでには至らなかったものの、インフレ抑制の選択肢には政策金利が含まれることを明確にした。

「われわれにはそのための手段がある」とした上で、「今後、そうした手段をどの程度、どのタイミングで展開する必要があるのかについて、同僚たちと徹底的に議論したい」と語った。

Photographer: Daniel Heuer/Bloomberg

この発言について、エコノミストらは短期的な利上げを示唆するものではないとしつつも、ウォーシュ氏が金融政策の引き締めが必要になる可能性を最も明確に認めた発言だと受け止めた。

フィッチ・レーティングスの米経済調査担当責任者、オル・ソノラ氏は「これはウォーシュ氏が、根強い高インフレに対応してFRBが利上げする可能性を明示的には示唆せずに認めた発言として、おそらくこれまでで最も踏み込んだものだ」と述べた。

ゴールドマン・サックスのエコノミストも顧客向けリポートで、ウォーシュ氏の発言は「供給ショックによって引き起こされた高インフレへの対応に関する同氏の考え方を示唆するもの」だと指摘した。

ガイダンスなし

ウォーシュ氏はトランプ大統領によってFRB議長に指名された。トランプ氏は長年にわたり借り入れコストの引き下げを求めてきた。

5月の就任以降、ウォーシュ議長はフォワードガイダンスと呼ばれる、政策金利の先行きを示すFRBの慣行を廃止する方針を示してきた。同氏らは、経済情勢が変化した際に当局者の対応を縛ることになるとして、この手法を批判している。

そのため、インフレが鈍化しなかった場合にFRBがどう対応するかについては、他の政策当局者の一部が利上げの可能性を明確に示していたにもかかわらず、これまで議論を避けてきた。

ただ、今回の発言を新たなシグナルとは受け止めない向きもある。

オバマ政権で経済政策を担当し、現在はハーバード大学ケネディスクールの教授を務めるジェイソン・ファーマン氏は、ウォーシュ氏は従来の姿勢と一貫しており、証言でも新たなガイダンスは示さなかったとの見方を示した。

ファーマン氏は「将来の方針を示唆する発言を聞いたと思う人がいるなら、それは聞き違いだ」とし、「現時点では何もシグナルとして受け取らない。まだ本人も何をしたいのか決めていないと思う」と語った。

14日に公表された6月の米消費者物価指数(CPI)が前月比で低下し、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIも前月比横ばいとなったことを受け、市場では7月利上げ観測が後退した。今回のインフレ統計は、米国とイランの戦闘がいったん沈静化していた時期の状況を反映したものだった。その後、戦闘は再び激化している。

スタンダードチャータード銀行のG10通貨調査責任者、スティーブ・イングランダー氏は、「CPIのおかげで、今回の議会証言は彼にとって非常にやりやすいものになった」と述べた。

市場予想を下回るインフレ指標によって議会証言でのウォーシュ氏への圧力は和らいだものの、議員らは引き続き、インフレ率の目標回帰に向けた具体策について質問を重ねた。

ウォーシュ氏は、6月のインフレ指標は予想以上に良好な内容だったが、目標達成までにはなお長い道のりがあるとの認識を示した。

同氏は「ここへ来て任務完了だと言うつもりはない」と述べ、「やるべき仕事はまだ山ほどある」と語った。

ネーションワイドのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は、発言全体のトーンはウォーシュ氏のタカ派的な側面を示したと指摘した。その上で、「インフレが高止まりすれば、いずれ利上げを支持する可能性があることを示唆している」と述べた。

ウォーシュ氏は今回の議会証言で、五つの新たな作業部会を設置し、FRBの政策運営を見直すことで、「レジームチェンジ(体制転換)」を実現する考えを示した。

また、FRBの独立性を守る考えを表明し、FRBに政治を持ち込まず、経済に必要な政策措置を講じることをためらわないと強調した。

原題:Warsh Says Inflation Mission Not Accomplished, Hints at Options(抜粋)

--取材協力:Maya Prakash.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.