北大西洋条約機構(NATO)首脳らが今週、トルコの首都アンカラに集まり、大規模な防衛産業契約や防衛支出計画を相次いで打ち出した。狙いは、自国軍の増強に本気で取り組む姿勢をトランプ米大統領に示すことだった。

しかし、トルコのエルドアン大統領による手厚いもてなしの裏で、米国とイランの停戦は崩れ始め、ロシアはウクライナの民間人への攻撃を激化させた。さらに、トランプ氏は米国代表のスター選手を助けるため、サッカーのワールドカップ(W杯)の審判判定にまで口を出した。

こうしてスポーツを巡る政治、食を通じた外交、そして現実の武力衝突が交錯し、首脳会議は極めて複雑な様相を呈した。

主なポイントは以下の通り。

1.トルコ、F35購入に向け前進

トランプ氏は以前からエルドアン氏の強権的な指導者像を高く評価してきた。今回も、トルコによる戦闘機「F35」購入を阻んできた防衛産業への制裁を解除する用意があるとの考えを示した。F35は極めて高度な性能を持つ戦闘機で、「空のクォーターバック」とも呼ばれる。

もっとも、イスラエルやギリシャなどからの反対など、なお障害は残る。それでもトランプ氏の発言は、長期政権の継続を懸けて2028年の選挙で本格的な挑戦を受ける可能性があるエルドアン氏にとって追い風となる。

ロッキード・マーティンのF35AライトニングII

2.揺らぐ米・イラン停戦

8日の首脳会議で最大の議題となり、トランプ氏を最もいら立たせたのはイラン問題だった。

ホルムズ海峡で船舶への攻撃が相次ぎ、米国とイランの新たな軍事的応酬を招く中、トランプ氏はイラン指導部を「くず」と非難し、怒りをあらわにした。

さらに停戦はすでに終わった可能性があるとし、米軍は8日、イランへの追加攻撃を2日連続で実施した。

3.ゼレンスキー大統領、再びトランプ氏の信頼を獲得

昨年の米大統領執務室での激しい対立と比べると、ウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ氏の今回の会談は極めて順調だった。

トランプ氏はゼレンスキー氏の「驚くべき仕事」とたたえ、ウクライナ軍兵士の勇敢さも称賛した。昨年、敗戦に向かっているとみて距離を置いていたゼレンスキー氏への評価としては、大きな変化と言える。

実務面では、トランプ氏は米国がウクライナによる地対空ミサイルシステム「パトリオット」の迎撃ミサイル製造を認めると表明した。実現までにどの程度の時間を要するかは不透明だが、ここ数週間にわたりロシアのミサイル攻撃を受け続けているウクライナの都市の防衛力強化につながる可能性がある。

4.グリーンランドへの執着はなお健在

トランプ氏は今回も、デンマーク領グリーンランドの取得を目指す持論を持ち出した。今回は、第2次世界大戦後に米国がグリーンランドの管理権を返還した判断を悔やむ発言をした。

ただ、この問題は同盟国向けの非公開会合では取り上げられなかった。このことは、トランプ氏の考え自体は変わっていないものの、少なくとも短期的にはデンマークや欧州諸国が新たな圧力に直面する可能性は低いことを示唆している。

5.トランプ氏、スペインへの反感強める

NATO加盟国の中で防衛支出が低水準にとどまる国に目を向けたトランプ氏が標的としたのは、最低基準である国内総生産(GDP)比2%を下回る唯一の加盟国スロベニアではなかった。

矛先はスペインのサンチェス首相に向かった。

トランプ氏は昨年ハーグで開かれた首脳会議で、サンチェス氏がNATOの防衛支出拡大目標を拒否して以来、同氏への反感を強めている。今年はスペインを「救いようがない」や「ひどい」と酷評した。

もっとも、サンチェス氏はそれほど気にしないだろう。米国に毅然(きぜん)とした姿勢を示したことで国内では評価を高めており、スペイン代表も月内にニュージャージー州で行われるW杯決勝進出の有力候補と目されている。果たして、その試合にトランプ氏は姿を見せるのだろうか。

原題:NATO’s Summit Talks Revolve Around Donald Trump: Top Takeaways(抜粋)

--取材協力:Paul Wallace、Piotr Skolimowski.

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