イランが自国産原油の買い手を見つけるのに苦戦している。米国は国際市場での販売を60日間に限って認めているが、イラン産原油を積んだタンカーは海上で滞留している。

データ分析会社ボルテクサとブルームバーグの集計によると、7月1日時点で海上にあるイラン産原油とコンデンセートは5800万バレル超に達した。このうち90%以上は仕向け先が不明となっている。こうした船舶は次の寄港地として「注文待ち(for orders)」または「シンガポール」を示しており、マラッカ海峡で船舶間積み替えを実施する可能性がある。

原油を速やかに売却できなければ、イランは必要とする収入を得られず、米国との交渉でも立場が弱まることになる。米国は6月中旬、暫定和平合意の一環としてイラン産原油への制裁を解除し、イランの港湾を出入りする船舶に対する封鎖も終了した。制裁解除は60日間となっており、イランは8月中旬までに買い手を見つける必要がある。

開戦前にイラン産原油の最大の顧客だった中国の独立系製油所では、稼働率が9年ぶりの低水準まで落ち込み、需要は低迷している。一方、中国の国有製油所も、銀行が取引資金を提供できるか不透明だとして購入を見送っている。

原油の大半はペルシャ湾周辺、インド洋、またはシンガポール近郊のマラッカ海峡に滞留している。

イラン政府は1日、米国が海上封鎖を解除して以降、4000万バレル超の原油を出荷したと発表した。ただ、調査会社ケプラーによると、アジア海域で7日以上滞留しているイラン産原油は2000万バレル超となり、1週間前から約18%増加した。

イランの原油販売に二つのハードル

イランが原油を販売する上では複数の障害が残っている。欧州連合(EU)と英国による制裁は依然として維持されており、保険手配が複雑化しているほか、一部港湾ではイランが原油輸送に使用するダークフリートの受け入れをためらう可能性がある。また、トランプ米大統領が猶予期間を前倒しで打ち切れば、取引途中で原油が行き場を失う恐れもある。

ベッセント米財務長官は6月30日、交渉が決裂すれば米国が制裁を再び発動するとの懸念が残っているため、買い手は慎重姿勢を崩していないとの見方を示した。さらに、「制裁下でも購入を続けていた中国以外に買い手はおらず、そのためイラン産原油は依然として値引き価格で取引されている」と語った。

イラン産原油の販売を阻むもう一つの大きな要因は、アジア主要市場で需要が不足していることだ。イランは買い手の開拓を進めているものの、関心は限定的となっている。アジア市場では、ホルムズ海峡を再び通航できるようになったイラン以外のペルシャ湾産原油に加え、戦時中に中東以外から調達された原油もあり、供給は潤沢となっている。

ケプラーによると、中国の6月のイラン産原油輸入量は前月の半分以下となる日量約65万4000バレルにとどまった。それでも、ケプラーとボルテクサによると、過去1週間で少なくとも1隻のタンカーが中国でイラン産原油を荷揚げした。

インドのプリ石油・天然ガス相は先週、ニューデリーでイランの石油相と会談したが、輸入再開への明確な約束は行わなかった。

匿名を条件に話した関係者によると、インドの国営石油会社は少なくとも8月末までの原油調達をすでに確保しているため、現時点ではイラン産原油の購入を見送っている。また、米ドル建て決済について米政府の方針が明確になるのを待っているという。

関係者によると、インドは決済ルートが明確になれば購入再開を検討する方針であり、制裁が全面解除されれば、中長期的には石油会社がイラン産原油を調達できるようになる可能性がある。

もっとも、価格次第ではアジアでイラン産原油への関心が急速に高まる可能性もある。すでに原油を確保している石油会社でも、大幅な値引きがあれば一部在庫を転売して受け入れ余地を確保できるほか、原料コストが低ければ稼働率を引き上げる選択肢もある。

原題:Iran’s Floating Oil Stockpile Swells as Major Buyers Stay Away(抜粋)

--取材協力:Yasufumi Saito.

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