くら寿司は米国で積極出店を進め、日本の競合が本格的に参入する前に主要都市での店舗網を広げる。同国における回転ずしチェーンの代表格になることを目指し、毎年約20%のペースで出店を重ね、長期的には300店舗体制を築く考えだ。

同社子会社のくら寿司USAの姥一社長は6月30日のインタビューで、スシローを運営する競合のFOOD&LIFE COMPANIES(F&LCO)の米国再上陸計画を念頭に、先行出店による市場の囲い込みを進める考えを示した。

くら寿司USAは2009年に米国1号店を開業し、19年には米ナスダックに上場した。6月末時点で94店舗を展開するなど、日本の回転ずしチェーンとして米国市場で先行している。今期(26年8月期)の売上高は最大3億3400万ドル(約540億円)を見込む。

中国で人気を集める競合のF&LCOは、過去に米国に進出したが撤退していた。今年秋にはニューヨーク・マンハッタンに米国1号店を開業し、米国市場への本格参入を予定している。

集客策と収益改善

集客策の柱は、日本の知的財産(IP)とのコラボレーション企画だ。最近では、「たまごっち」との企画を展開し、今後は任天堂の「マリオ」や「ポケモン」などとのコラボも実現させたいと話す。

姥氏は、店舗数が増えるにつれ、常連客に再来店してもらう動機づくりが重要と説明。コラボ期間中は売上高が約5%伸びるケースもあり、現在は年7回程度の企画を将来的には毎月実施したい考えだ。

積極的な出店戦略を志向する一方で、足元の業績には課題もある。過去2期連続で営業赤字となり、25年8月期の営業損益は480万ドルの赤字だった。不安定な消費環境や関税圧力が売り上げ成績と店舗レベルの利益率を押し下げた。姥氏は、本部経費率の改善が進めば、営業利益ベースでも「1ー2年程度」で黒字化できると自信を示した。

TDコーエンのアナリスト、アンドリュー・M・チャールズ氏は6月3日付のリポートで、くら寿司USAについて、米国で成長する回転ずし市場で最大手という独自のポジションを高く評価する。その上で、予約システムの拡充や人気IPとのコラボが奏功すれば、株価の上昇余地は大きくなると指摘。

チャールズ氏は、景気減速などのマクロ環境に加え、19年以降、業界平均を上回る大幅な価格改定を実施してきたことによる需要への影響にも注意が必要との見方も示した。

鍵は内陸部

5月には、トランプ米大統領が同社株を保有していたことが明らかとなり、日本の投資家の間でも注目を集めた。姥氏は「夢かと思った」と振り返る一方、「トランプ氏はおそらくくら寿司のことを知らないだろう」と冗談交じりに語った。

長期的な課題は、日本食になじみの薄い地域で需要を切り開くことだ。若年層を中心に生魚への抵抗感は薄れつつあるものの、寿司が苦手な人も取り込めるよう、ラーメンやうどん、天ぷらなど寿司以外のメニューも拡充している。

姥氏はネブラスカ州やカンザス州など内陸部にも足を運び、自ら出店候補を見て回っているという。「10年、20年後、全米で知らない人はいないブランドにしたい。回転ずしといえばくら寿司と呼ばれるように定着していきたい」と熱を込めた。

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