米マイクロソフト株が月間で数年ぶりの大幅下落となる見通しだ。背景には、人工知能(AI)時代に生き残れるか不安視されていることがある。

6月に入り18.4%下落しており、このまま月末を迎えれば、2000年12月以来の大幅な月間下落率となる見通しだ。29日午後の取引では、当初の上げから下げに転じた。

今回の売りで6130億ドル(約99兆2900億円)超の時価総額が吹き飛び、25日には2023年以来の安値で取引を終えていた。その後はやや持ち直した。

マイクロソフト株を保有するクレセット・ウェルス・アドバイザーズのジャック・アブリン最高投資戦略責任者(CIO)は、「マイクロソフトは、AI投資への懸念とAIによる事業への影響という二重の逆風にさらされている」との見方を示した。

「非常に割安で妙味が増しているが、投資家はまず売ってから後で考える動きになっているようだ」と語った。

売りの背景には複数の要因がある。同社はAIインフラの整備や独自のAI製品の投入に積極投資を続ける一方で、従来の業務用ソフトウエアはAIに取って代わられるとの根強い懸念に直面している。

アブリン氏は、「マイクロソフトのWordやExcelがAIによって時代遅れになるかどうかは、まだ分からない」と指摘。「しかし、これほど積極的な投資は間違いなく懸念材料だ。特に、多くの企業が社債市場で資金調達に乗りだしていることを踏まえると、手元資金だけではインフラ整備を賄えないことを示唆している」と語った。

株価下落により、マイクロソフトのバリュエーションは約10年ぶりの低水準となっている。今後12カ月の予想株価収益率(PER)は19倍で、S&P500種株価指数の20倍、過去10年平均の27倍を下回っている。

著名投資家のマイケル・バーリ氏は、足元の下落局面でマイクロソフト株のコールオプションを購入。2028年満期、権利行使価格700ドル台前半のコールオプションを取得したと、25日遅くに自身のSubstackへの投稿で明らかにした。同氏は2008年のサブプライム住宅ローン危機を予見し、巨額の利益を上げたことで知られる。

これを受けてマイクロソフト株は26日に5.7%上昇し、372.97ドルで取引を終了。2025年5月以来の大幅高となった。

AIインフラへの巨額投資が十分な収益を生んでいないとの懸念は、同社が4月下旬に発表した1-3月(第3四半期)決算で再燃した。クラウド事業「Azure」の売上高の伸びが期待外れだったほか、12月末までの設備投資額が市場予想を上回る1900億ドルとの見通しを示したことが要因だ。

スティーフルのアナリスト、ブラッド・リバック氏は、積極的な設備投資は利益率を圧迫するため、マイクロソフトにとって大きなリスクだと指摘する。同氏は25日付リポートで、「Azureの粗利益率が設備投資の加速によって圧迫される状況を踏まえると、市場予想は依然として大幅に楽観的過ぎる」とし、目標株価を415ドルから400ドルへ引き下げた。

もっとも、マイクロソフトには割安なバリュエーション以外にも強気材料がある。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想平均によると、6月30日に終了する今期の売上高は17%増加する見通しで、2022年以来の高い伸びとなる見込みだ。さらに、2028年度は18%、2029年度は20%へと成長率が加速すると予想されている。

フィッツジェラルド・グループの代表で、フィッツジェラルド・マスト・ハブ・ポートフォリオETF(上場投資信託)のポートフォリオマネジャーを務めるキース・フィッツジェラルド氏も、AIを巡るリスクを懸念しつつ、マイクロソフト株の復調を見込む投資家の一人だ。

「数年後の環境がどうなっているかは誰にも分からない。そのため、将来もマイクロソフトのソフトウエア群を使い続けるのかといった、現実的な疑問が生じている」とした上で、「極めて重要な問題であり、注意深く見守っている」と語った。

マイクロソフト株は割安だと考える一方、不透明感が強いため保有比率を増やすことは見送っているという。

「現在の株価は歴史的な買い場に極めて近い水準であり、AI投資が利益成長につながり始めれば、株価はロケットのように上昇すると考えている」と話す。

一方で、「AIを巡る誤解は当面続くとみており、そのため保有比率は抑えている。今回の急落は投資家としての信念が試される局面であり、歯を食いしばって耐えている。さらに下落が続くなら、買い増すだけの自信を持ち続けられることを願っている」と語った。

原題:Microsoft’s $613 Billion Rout Sets Up Its Worst Month Since 2000(抜粋)

--取材協力:Yoolim Lee、Soo-Hyang Choi、David Watkins.

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