(ブルームバーグ):29日の米金融市場では円が対ドルで下落し、約40年ぶりの安値を付けた。米株式相場はテクノロジー株主導で反発。原油相場は上昇した。
円は一時、先週末のニューヨーク終値比0.15%安の1ドル=161円98銭と、2024年7月に記録した161円95銭を下回り、1986年12月以来の安値水準を付けた。当局が円相場を支えるために介入するリスクが高まっている。
ドル・円はニューヨーク時間午前に161円96銭を付けて節目を突破。円はその後下げをやや縮小していたが、午後になって161円98銭まで売られた。

マネックスの為替トレーダー、アンドルー・ハズレット氏は「相場が速やかに反転しなければ、為替介入も目前だ」と指摘。その上で、介入をしたとしても「日米の金利差という問題に対処しなければ、一時しのぎに過ぎない」と述べた。
スコシアバンクの為替戦略責任者、ショーン・オズボーン氏は、円相場が重要な節目を下回ったことを受け、「日本銀行が動向を注視していることは間違いない」と述べた。
こうした中、シティグループのマクロストラテジストらは、5月に推奨した円買いポジションを解消した。円買い介入に向けた「明確なシグナル」を「日本の財務省が依然として送っていない」ことを理由に挙げた。
財務省が目立った動きをしていない理由について、同社は「ドル・円の直近の上昇局面は、 米連邦公開市場委員会(FOMC)後のドル高傾向に沿ったものであり、円固有の材料ではないため」との分析を示した。「こうした状況では介入を実施しても成果を上げにくい」としている。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は3営業日続落。
ナティクシスCIBは、ドル相場が今後伸び悩む可能性があるとの見方を示している。6月のFOMC後のドル高材料は既に大部分織り込まれたとみており、円、ユーロ、人民元に対するドル売りを推奨している。
ノルディン・ナーム氏ら同社の通貨ストラテジストは「市場は既に米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派転換を織り込んでいる」と、29日付リポートで指摘。「好材料は既に反映されており、ドル一段高の余地は限られる」と述べた。
同氏らはその上で、ドル買い・円売りのポジションが積み上がっており、円はショートスクイーズの可能性が最も高いとみている。日本当局が円買い支えのために介入に踏み切る可能性も、その見方を後押ししているという。
「円安は経済にもたらすメリットをデメリットが上回る臨界点に達しつつある」と記した。
米国株
米国株は反発。大型ハイテク株の一角が上昇した。先週はAI銘柄が売られたものの、AIを巡る投資ブームは今後も堅調な企業業績を支えるとの見方を背景に、下げ局面は買い場との見方が広がった。
ハイテク7社の「マグニフィセント・セブン」の指数は2.6%高で引けた。これらの銘柄は6月の大半、軟調に推移していた。ナスダック100指数は2.25%高で終了。
フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は3.8%上昇。先週は週間ベースで2025年4月以来の大幅下落となっていた。
ミラー・タバクのマット・メイリー氏は「足元で見られる反発は強気派にとって歓迎すべき展開だ」と指摘。「テクノロジーセクターの値動きが、引き続き株式市場の主要な原動力になるとの見方を当社は維持している」と述べた。
メイリー氏は、S&P500種におけるテクノロジーセクターのウエートは大きいため、同セクターが大幅なアウトパフォームを続ける必要はないと指摘。著しい下落を回避することが重要だと語った。
同氏はまた、このセクターが大幅下落を避けられなければ、個人投資家は現金へのシフトを始める可能性があると指摘。特にこの1年、相場はバブルではないかと盛んに語られてきただけに、そうした動きが強まる可能性があると述べた。
Cboeグローバル・マーケッツのJJ・キナハン氏は、「今週は四半期末、かつ上期末に当たることを念頭に置いておきたい。機関投資家によるポートフォリオのリバランスが進むため、市場では断続的にボラティリティーが高まる公算が大きい」と指摘。
その上で、「相場がある程度不安定になることが予想されるが、それを深読みする必要はない」と述べた。
米株式相場は原油が上昇する中でも反発した。トランプ米大統領は「イランから会談の要請があった」とし、30日に「ドーハで会談が行われる」と、自身のソーシャルメディアに投稿した。
米国債
米国債市場は中・短期ゾーンが下落。年限が長い国債は買われ、利回り曲線がフラット化した。
原油高と大型ハイテク株の反発を受けて、短期債の利回りが上昇した。
米連邦最高裁判所はこの日、トランプ大統領によるクックFRB理事の即時解任を求める申し立てを退け、中央銀行の独立性を改めて確認した。
グレンミードのマイケル・レイノルズ氏は「FRBが政治的意向に左右されると見なされれば、ドル建て資産にはリスクプレミアムが長期にわたって上乗せされる可能性が高い」と指摘。
「市場はわずかしか織り込んでいなかったとはいえ、そうしたテールリスクが取り除かれたことは、長期金利の先行きの安定性にとり、目立たないながらも重要なプラス材料だ」と述べた。
原油
原油は反発した。ホルムズ海峡では週末、原油を積載した超大型タンカーへの攻撃などで緊張が再び高まった。一方、市場では米国とイランによる和平協議の再開に注目が集まった。
米ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=71ドル前後で取引された一方で、北海ブレントは73ドルを挟んだ展開となった。匿名を条件に語った米政府当局者によると、米国とイランは当面、報復の応酬を停止し、船舶はホルムズ海峡を自由に航行できるという。トランプ米大統領は、両国が30日にドーハで和平協議を再開する見通しだと明らかにした。
ただ、週末にはホルムズ海峡を通過する船舶数の減少が確認された。世界の投資家や船主、保険会社は、海上交通の要衝である同海峡の動向を注視している。

BOKファイナンシャル・セキュリティーズのデニス・キスラー氏は、「ホルムズ海峡では船舶の往来は続いているものの、不安定な情勢を受け、先週に比べると減少していると聞いている」と述べた。
その上で、「供給減少が相場に織り込まれているうえ、原油先物は売られ過ぎだったため、相場が大きく戻すのも不思議ではない」と加えた。
原油価格は、米国とイスラエルが2月下旬にイランへの攻撃を開始して以降の上昇分をほぼ失った。紛争前には世界の原油と液化天然ガス(LNG)の約20%がホルムズ海峡を通過しており、交渉再開で将来的な全面再開への期待が高まっている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前週末比1.52ドル(2.2%)高の1バレル=70.75ドルで終了。北海ブレント先物8月限は1.16ドル(1.6%)上昇して73.15ドルで取引を終えた。8月限は30日が最終取引となる。取引の中心となる9月限は1.31ドル(1.8%)高の73.91ドルで引けた。
金
金相場は反落。世界的なインフレ圧力を高めてきたイラン戦争を巡り、報復の応酬で揺らいだ停戦を経て、米国とイランが相互の攻撃停止で合意したことが材料視された。
金スポットは一時2.2%安となり、1オンス=4000ドル近辺まで下落した。その後は下げ幅を縮小した。トランプ米大統領は、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、イランとの和平協議が30日にドーハで再開される見通しだと明らかにした。

金スポットは2月下旬の戦争開始以降、23%余り下落し、先週には一時1オンス=4000ドルを割り込んだ。戦争を受けたエネルギー価格の上昇で、各国・地域の中央銀行が高金利政策を長期化させるとの見方が強まり、利息を生まない金には逆風となった。原油価格は29日に上昇した。
グローバルX・ETFsオーストラリアの投資ストラテジスト、ジャスティン・リン氏は、ホルムズ海峡で緊張が再び高まる兆候があるにもかかわらず金が1オンス=4000ドルを上回って推移していることについて「押し目買いの動きが戻り、この水準を支える投資家が現れたことを示唆している」と指摘した。
また、リン氏は「金は年初来の上昇分を完全に失い、短期筋の投資家による売買も一巡したとみられることから、中東情勢の変動に対する耐性は一段と高まるだろう」と述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時48分現在、前週末比71.19ドル(1.7%)安の1オンス=4017.55ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は57.40ドル(1.4%)安の4038.90ドルで引けた。
欧州
29日の欧州債券市場は、ドイツ債のイールドカーブがわずかにベアフラット化した。今週予定されている米・イラン和平協議の再開を前にエネルギー価格が上昇したことで、先週続いていた上昇トレンドに歯止めがかかった。
スワップ市場は、欧州中央銀行(ECB)の年末までの利上げ幅を26ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と見込んでいる。26日時点の24bpから若干拡大した。
ブルームバーグがエコノミストを対象に実施した調査によると、30日に発表予定のフランスとドイツの6月のインフレ率は鈍化が予想されている。
英国債はイールドカーブがツイストフラット化した。原油価格の上昇を背景に短期債が売られた一方、リスクプレミアムの低下で長期債は買われた。次期首相有力候補とされるアンディ・バーナム氏が、現政権の財政ルールを堅持する方針を改めて示した。
短期金融市場はイングランド銀行(英中央銀行)の利上げ予想を据え置き、年内の利上げ幅を23bpと織り込んでいる。
欧州株はほぼ横ばいだった。投資家は米国とイランの戦闘停止の先行きを見極めようとしている。
ブルームバーグが、スペースXとチャーター・コミュニケーションズが一般消費者向け携帯電話サービスでの提携について協議していると報じたことを受け、ドイツテレコムが5.4%安となるなど、通信株が下落した。
6月29日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)
原題:Yen Hits Four-Decade Low in Historic Slide That’s Rattled Japan(抜粋)
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