暗号資産(仮想通貨)ビットコインからそろそろ目を移し、米国債や社債、株式、コモディティーといった現実資産をデジタル化した別のトークンに注目すべき時期かもしれない。

最も古い暗号資産であるビットコインは、昨年10月以降約50%下落して低迷が続く一方、「リアルワールドアセット(RWA)」のデジタル版である「トークン化資産」に対する需要は静かに勢いを増している。

投資家はこれらの資産を従来の証券口座ではなく、自身の暗号資産ウォレットで保有する。そこでは投資対象が、データの安全なブロックとして管理され、個人間や取引所で容易に売買できる。

こうした柔軟性は、より高いリターンを生み出す新たな手段を切り開く。投資家はウォレット内で債券の一部やインデックスファンドの持ち分、金1オンスを保持し、それらを自由に担保として利用したり、24時間365日いつでも即座に売買したりできる。

こうした機能は機関投資家と個人投資家の双方にとって魅力があり、最終的には暗号資産ウォレットを、誰もが利用できるウォール街のような存在へと変えていく可能性がある。

シティグループは、トークン化資産市場が2030年までに2兆7000億-8兆2000億ドル(約440兆-1335兆円)へ拡大すると予測している。若い個人投資家が普及を後押しし、とりわけ米国債や株式などの公開市場で取引される証券が成長をけん引するとみている。もちろん、これはまだ320億ドル規模にとどまる業界が描く未来図だ。

トークン化は存在しない問題を解決しようとしているに過ぎないとの批判もある。実際、個人向け証券会社の売買手数料はすでに無料が一般的になっている。一方、イーサリアムやソラナのネットワークでは、トークンの検証とシステム維持に対し、「ガス代」と呼ばれる手数料を支払う必要がある。

しかし、批判派は本質を見誤っている。従来型金融システムが抱える真の弱点は、時間と資本の拘束という目に見えない構造的コストにある。

個人投資家が株式を売却しても、手数料は無料かもしれないが、資金は決済完了まで数日間拘束され、その間は移動も再投資もできない。保有資産を融資の担保として活用しようとすれば、煩雑な信用審査や高い事務コストを避けられない上、銀行の厚い利ざやを反映した高い金利も負担しなければならない。

主流金融の中核

トークン化は、この構図を変える。決済は瞬時に完了する。分散型取引所でトークン化された上場投資信託(ETF)や米国債を証拠金として差し入れる際も、仲介業者による48時間のリスク審査を待つ必要はない。

コードが数秒で処理し、さらにガス代も大幅に低下している。10セント程度の取引手数料は、資金を遊休状態にしておくコストや、書類処理のためだけに資産運用会社へ毎年1%の手数料を支払うことに比べれば、ごくわずかな負担に過ぎない。

最近では、韓国の資産運用会社未来アセット・グローバル・インベストメンツが、元ゴールドマン・サックスの2人が5年前に設立したトークン化プラットフォームのオンド・ファイナンスと提携した。

運用資産3770億ドルの未来アセットは、オンドの支援を受け、ETFシリーズ「グローバルX」をブロックチェーン上で提供しようとしている。これにより、世界中の投資家は米市場が閉まっている時間帯でも、宇宙関連やロボティクス、AI関連のETFに投資できるようになる。

こうした動きは、各国政府にも対応を迫っている。最上位の担保資産として、日本国債の地位を維持するため、ブロックチェーン技術によるデジタル担保管理の実証実験も始まった。世界中のトレーディングデスクが日曜日の午前2時であっても、トークン化された米国債と同様に日本国債を証拠金として利用できる環境を目指している。

以前から指摘してきたように、ブロックチェーンの本当の価値は暗号資産愛好家やミームコインではなく、主流金融の中核部分にある。投資家は高利回りといううたい文句にうんざりしており、求めているのは強固で健全な金融商品だ。

しかし、トークン化業界が本格的に拡大するためには、実際にその価値を示さなければならない。現在デジタル資産として販売されているものの多くは、既存の証券をコインで包んだだけであり、決済や会計処理は依然として人手でスプレッドシートへ入力するような旧来型の仕組みに依存している。

こうした現実を受け、業界は大きく二極化しつつある。一方には、銀行の内部台帳だけで管理される従来資産のデジタル表現がある。これはバックオフィス業務の効率化には役立つかもしれないが、トークンを外部ウォレットへ移したり、個人間で売買したりすることはできない。オープン市場の自由は存在しない。

未来アセットとオンドの提携のようなプロジェクトが目指しているのは、発行プラットフォームの外へ持ち出すことを前提としたトークンだ。オンドの「OUSG」やブラックロックの「BUIDL」はいずれもトークン化されたマネー・マーケット・ファンド(MMF)であり、この流れを加速させた。

これらのトークンは発行元の外でも取引できるため、保有者は短期金利に連動した利回りを得るだけでなく、デジタル資産取引所へ持ち込み、レバレッジ取引の証拠金として活用することもできる。資産をリアルタイムで働かせることができるためだ。

セーフヘイブン(安全な避難先)と見なされる資産や人気の高いハイテクETFがブロックチェーン上を自由に移動できるようになることで、金融はようやく従来の仲介業者が徴収してきた高いコストを削減し始めている。

貨幣の未来としてのビットコインという構想は、もともと説得力に欠けていた。最近では、資産としての魅力も乏しくなっている。むしろ、現実世界で有用性を証明してきた証券に裏付けされたその他のトークンこそが、市場の主役となる可能性を秘めている。

(アンディ・ムカジー氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで事業会社や金融サービスを担当しています。以前はロイターやストレーツ・タイムズ、ブルームバーグ・ニュースで働いていました。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)

原題:Bitcoin Is Boring. Bring on AI, JGB Tokens: Andy Mukherjee(抜粋)

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