(ブルームバーグ):テクノロジー企業がドットコムブーム期を思わせる勢いで株式を発行しており、一部の投資家はそれが債券保有者にとって悪い兆候ではないかと懸念している。
6月だけでも、アルファベットは850億ドル(約13兆7500億円)規模の増資を行い、スペースXは750億ドルという史上最大の新規株式公開(IPO)を実施した。
対話型AI「ChatGPT」のOpenAIは、「Claude(クロード)」のアンソロピックに続き、来年にもIPOを行うことを検討しているほか、メタ・プラットフォームズも株式による資金調達を考えている。
株式発行の拡大は、一見すると今年を通じてテクノロジー企業の債券を積極的に購入してきた債券保有者にとって好材料に映る。株主資本が厚くなれば財務基盤が強化され、経営が悪化した場合でも債権者を保護する余力が増すためだ。
しかし、旺盛なキャッシュフローを生み出している企業までもが急いで資本を調達していることは、設備投資を一段と強化し、市場予想を上回る借り入れを行う構えを示している可能性もある。
コロンビア・スレッドニードルの投資適格債部門責任者トム・マーフィー氏は、設備投資額が今後さらに増加する公算が大きいことを示していると指摘した。
スペースXの大型社債は、24日の取引開始後まもなく予想以上のペースで値下がりし、市場関係者を驚かせた。250億ドル起債後の含み損は、26日午後時点で米国債との比較ベースで約3億6000万ドルに達した。
同社は今後数年間にわたりキャッシュフローがマイナスとなる見通しにもかかわらず、投資適格級の格付けを取得した。
グーグルの親会社アルファベットの社債も、株式発行の発表後に米国債との比較で軟化。一部の市場参加者は、同社による今後の投資負担への懸念が背景にあるとみている。
米投資適格テクノロジー企業の社債スプレッドは6月全体として拡大し、25日時点で0.79ポイントと、5月末の0.74ポイントから上昇した。
膨らむ資金需要
テクノロジー企業の設備投資見通しをすでに上方修正したストラテジストもいる。JPモルガン・チェースは現在、2030年末までのAIおよびデータセンター関連支出を5兆5000億ドルと予想しており、昨年11月時点の見通しから約4000億ドル引き上げた。
JPモルガンは、それに伴い社債発行も増加するとみている。今後5年間の投資適格債市場におけるデータセンター向け資金調達は2兆1000億ドルに達すると想定しており、昨年11月時点の1兆5000億ドルから大きく上方修正した。
こうした予測を一部の投資家は懸念している。スペースXは手元資金が1008億ドルあると明らかにした。だが、S&Pグローバル・レーティングによると、スペースXは来年末までに約1130億ドル、2028年には約900億ドルの資金を使い切る見込みだ。
その結果、同社は追加の負債および株式による資金調達を余儀なくされる可能性が高いと、S&Pグローバルは分析している。
テクノロジー企業は総じて、AIから可能な限り多くの収益を生み出すため、データセンターの増設や半導体の購入を競い合っている。しかし最大の問題は、巨額の資金を投じたにもかかわらず製品やサービスが期待外れに終わる企業がどこになるかだ。
陳腐化リスク
業界の歴史には、デジタル・イクイップメントやライコスのように、有望視されながら衰退した企業が数多く存在する。こうした負け組への資金供給リスクは、債券市場では特に深刻だ。債券投資家は、株主が最良のシナリオで得られるような膨大なリターンを得ることはほとんどない一方、最悪の場合には元本の大半を失う恐れがある。
債券投資家は、テクノロジーの数十年にわたる陳腐化リスクを引き受けるよう求められている。スペースXの起債には20年債と30年債が含まれ、エヌビディアによる6月半ばの社債発行も同様だった。アルファベットは2月、大型起債の一環としてポンド建て100年債を発行した。
こうした債券への投資には、とりわけAIで利益を生み出すために企業が適切な投資判断を行う能力や、資金繰りが厳しくなった際に経営陣が投資を抑制する、あるいは追加の株式発行で資金を調達する姿勢への信頼が求められる。
L&Gアセット・マネジメント・アメリカのマルチセクター債券・投資戦略責任者アンソニー・ウッドサイド氏は、「バランスシートの悪化ペースが緩やかになるシグナルとして、債券保有者は株式増資の発表を歓迎しがちだ。しかし実際には、それはさらに多くの負債が積み上がることを意味する。株式は負債の代替ではなく、それを補完するものだ」と述べた。
もっとも、現時点では多くの投資家はそれほど懸念していない。バンガード・グループの投資適格債共同責任者兼シニアポートフォリオマネジャー、アルヴィンド・ナラヤナン氏は、テクノロジー企業による株式発行は債券投資家にとって「非常に前向きなシグナル」だとみている。
企業は現金を確保しており、AI戦略に十分な成長余地があると判断し、株主に希薄化を受け入れるよう求めていることを株式発行が示しているという。
一方で、投資疲れの兆しもみられる。資産運用各社はAI関連債の選別を強め、より高い利回りを要求するようになっている。また、発行体も米市場の投資家への供給過多を避けるため、海外市場での資金調達を増やしている。
ロバート・W・ベアードのクレジット部門責任者兼シニアポートフォリオマネジャー、ジェフ・シュロム氏は大規模クラウド事業者、いわゆる「ハイパースケーラー」全般について、「大量の債券を市場に供給することは可能だが、そのためにはますます高いスプレッドを支払わなければならない」と説明した。
原題:Tech Equity Sales Renew AI Debt-Binge Worries: Credit Weekly(抜粋)
--取材協力:Ying Luthra、Liana Baker、Nabila Ahmed.
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