イランとの戦争終結に向けた合意の一環として、トランプ政権は数十年にわたる対イラン制裁の解除を進めようとしている。新たな許可措置と従来の規制が入り交じる状況となり、各国政府や銀行、企業は対応に頭を悩ませている。

1979年のイラン革命後、イランは核開発計画や中東地域で活動する武装組織への支援を理由に、世界でも最も厳しい制裁を受ける国の一つとなった。だが米政権は現在、ホルムズ海峡の正常化や世界のエネルギー価格の押し下げ、不人気の対イラン戦争の終結を目指す包括合意に向けた取り組みの一環として、大幅な方針転換を主導している。

ただ、その道のりは容易ではない。トランプ大統領は26日、イランが停戦合意に違反したと非難し、米中央軍はイラン国内の標的に対し新たな攻撃を実施した。合意を崩しかねない対立もなお残っている。

それでも、長年制裁政策を見てきた関係者は、その取り組みのペースと規模に驚きを隠さない。米政府はすでにイラン産原油や石油製品の販売を認め、凍結資産数十億ドルの解除も表明した。

トランプ氏とイランのペゼシュキアン大統領が17日に署名した14項目から成る覚書には、「合意した日程」に沿って米国の対イラン制裁をすべて解除することが盛り込まれた。また、実務的な協議を進める60日間は、米財務省に対し、既存の制裁について適用除外措置を出すよう指示している。

急激な政策転換を、リスク回避志向の米金融機関や企業が納得できる形で実施するのは容易ではないと、元財務省当局者や制裁問題に詳しい弁護士、業界関係者らはみている。

米財務省外国資産管理局(OFAC)の元上級顧問アダム・スミス氏は、「法令順守が100%確実だという確信を持ちたい。60日以内に完了する1回限りの取引なら可能かもしれないが、取引を処理する銀行や仲介機関を見つけるのは難しい可能性がある」と話す。

こうした不透明感が続く中、対イラン強硬派の一部は、イラン産原油の代金を現金で支払う方式から、エスクロー口座に預ける方式へ変更するよう政権に働きかけていると、事情に詳しい関係者は語った。エスクロー口座では資金が親イラン派武装組織ヒズボラやイスラム組織ハマスなどの代理勢力に流れるのを米当局が防ぐことができる。

トランプ氏は公の場で、イランの資金を米国管理下のエスクロー口座に入れる案や、それを米国産農産物の購入にしか使えないようにする案に言及してきた。しかし、これらはいずれも覚書には盛り込まれておらず、イラン側は一蹴し、拒否している。

凍結資産を米国産農産物の購入に充てる案は約1カ月前、ホワイトハウスの大統領執務室で、トランプ氏やバンス副大統領らが出席した会議で初めて議論されたという。

関係者によれば、この仕組みは、オバマ政権がイランに大量の現金を渡したと共和党から批判された経緯を踏まえ、ホワイトハウスが同様の批判を避ける狙いがあったとみられている。イランもこの仕組みを受け入れざるを得ないと関係者はみているという。

ベッセント財務長官は24日、イランが原油販売代金を米ドル建てで請求することになると述べた。この発言は、長年にわたりイランを米金融システムから締め出そうとしてきた米国の政策からの大きな転換を示した。

ただ実現には、米国の大手銀行や米国と関係の深い銀行の協力が欠かせない。元財務省当局者によれば、こうした金融機関は制裁違反のリスクを伴う取引を扱うことに慎重な姿勢を崩していない。

最初の一歩として、財務省は22日、イラン産原油の取引を「米ドル建て」で行うことを認める「一般許可X」を発行した。

石油業界が求めている内容に詳しい関係者によると、企業側は一般許可だけでなく、難しい案件で財務省が通常発行しているコンフォートレターやファクトシートのような明確な指針も求める見通しだ。企業が法令順守部門に対し、こうした取引への参加に問題がないことを示すためだという。

企業が期待しているのは、米国が1月にベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した後に示したような指針だという。

法律事務所モルガン・ルイス・アンド・ボッキアスの通商・国家安全保障担当弁護士マイケル・フネケ氏は、「制裁が解除される局面では、金融機関は顧客以上に慎重になることが多い。今回も極めて慎重な対応になるだろう」と話している。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のクリス・ケネディ氏は、「一般許可Xは、イランに与える制裁緩和措置として前例がない」と指摘する。一方で、新たな法律ではなく適用除外措置に依存するため、「長期的には、トランプ政権が掲げる対イラン制裁の恒久的な解除を実現するには険しい道のりになる」との見方を示した。

原題:Trump’s U-Turn on Iran Sanctions Would Unravel Decades of Curbs(抜粋)

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