(ブルームバーグ):台湾でディスプレー向け半導体会社を創業した兄弟が億万長者(ビリオネア)の仲間入りを果たした。奇景光電(ハイマックス・テクノロジーズ)の創業者である兄の呉炳昇(ビンセン・ウー)氏と弟の呉炳昌(ジョーダン・ウー)氏だ。
呉炳昇氏(69)はキャリアの大半を、ディスプレー上の画素をいつ、どのように点灯させるかを制御する、薄型ディスプレー向けの微小な半導体の開発に費やしてきた。25年前に弟の炳昌氏(66)と組んで開発に乗り出し、現在ではハイマックスの製品はランボルギーニからスマートウオッチまで幅広く使われている。
呉兄弟はハイマックスの株式を24%保有する。同社の米上場株は今年、2倍以上に上昇した。台湾・台南に本社を置く同社の持ち分に加え、配当収入と株式売却益を合わせた2人の純資産は、ブルームバーグ・ビリオネア指数によると10億ドル(約1610億円)に達し、初めて同指数の対象に入った。
この資産規模は、兄弟と同社にとって大きな節目となる。ハイマックスは、自動車に搭載されるディスプレー向けの駆動用半導体で4割の市場シェアを握るとしている。業界ではドライバー集積回路(IC)として知られる半導体で、フェラーリやフォルクスワーゲン、ポルシェなどを顧客に抱える。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、チャールズ・シャム氏は「人工知能(AI)プロセッサーのような脚光を浴びる半導体ではない。だが、これがなければ画面には何も映らない」と述べた。
呉炳昌氏は2022年、台湾メディアのインタビューで、ハイマックスは約20年前に自動車のディスプレー向け半導体に賭けたと語った。インタビューに応じるのは珍しい。当時、画面を搭載した自動車はほとんどなく、同社の経営資源も限られていた。
同氏は現在、「ほぼ全ての自動車メーカーが何らかの形で当社製品を使っている」とし、「今振り返ると、奇跡と言うほかない」と述べた。
こうした初期投資が、ハイマックスの競争優位の構築につながったと、同社広報担当のカレン・ティアオ氏は説明した。スマートグラスやAI、共同パッケージ光学(CPO)に現在注力しているのも、その延長線上にあるという。CPOは、データセンターが急増する帯域幅需要に対応しつつ、消費電力を減らすのに役立つ技術だ。
インタビューを辞退した呉兄弟は、テクノロジー産業の好況を背景に台湾がハイテク大国となる中で、億万長者の仲間入りを果たした台湾人の一例に過ぎない。UBSの「ビリオネア・アンビションズ・リポート2025」によると、台湾の億万長者数は昨年9%増え、51人となった。日本の41人、韓国の31人を上回るという。
バンカーと科学者
呉炳昇氏は1985年、台湾の国立成功大学で電気工学の博士号を取得。ハイテク産業の育成を目的とする政府系機関、工業技術研究院(ITRI)に勤務し、台湾における初期のTFT液晶ディスプレー(LCD)開発を主導した。その後、同製品を手掛ける台湾初の製造工場を立ち上げる際にも関わった。
約30年前、台湾のコングロマリット、奇美実業の創業者と面会し、新規事業を提案した。その後、奇美電子に加わり、同社が台湾有数のディスプレーメーカーとなるのを支えた。
呉炳昌氏はロチェスター大学で経営学修士(MBA)を取得。テクノロジー業界に入る前はメリルリンチとバークレイズで投資バンカーとして働いた。
呉兄弟は01年、自己資金を投じてハイマックスを創業した。その後、ベンチャーキャピタルから一部資金を受け入れた。奇美の従業員数人もスタートアップに加わり、奇美は初期顧客となった。
05年に呉炳昌氏が最高経営責任者(CEO)に就任し、呉炳昇氏は会長を務めた。同社は06年にナスダックに上場し、4億6800万ドルを調達した。
13年には、現在のアルファベットの前身に当たる当時のグーグルが、子会社ハイマックス・ディスプレー(立景光電)の6%株式を取得した。
現在、ハイマックスの従業員数は2200人。同社によると、その90%超がエンジニアで、台湾、中国、韓国、米国に拠点を置く。同社はいわゆるファブレス企業で、半導体製造は外部に委託している。
現在もハイマックス会長を務める呉炳昇氏は22年、母校での講演で成功の秘訣(ひけつ)を語った。学びが最も重要で、よく眠り、体力をしっかり維持する。起業の好機を待ち、専門家に助言を求める。
同氏は「私は常に追い越されるのを恐れている」と述べ、「だから、前に走り続けるしかない」と語った。
原題:Taiwanese Brothers Amass $1 Billion From Boom in Display Chips(抜粋)
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