米国市場は休場だったが、米イランの交渉は右往左往
6月19日の米国株式市場、米国債券市場はジューンティーンス(奴隷解放記念日)の祝日のため休場。欧州市場では、スイスで同日に予定されていた米国とイランの協議が開催されず、株式市場は軟調に推移した。また、イスラエル軍がレバノンで親イラン組織ヒズボラに対する攻撃を継続したと報じられた。イラン情勢の不透明感が高まったことによって原油価格が上昇し、債券市場も軟調な展開となった。
6月21日には米国とイラン、および仲介国であるカタール、パキスタンの代表らによる最初のハイレベル会合がスイスで行われた。前日にはイラン革命防衛隊が「ホルムズ海峡は封鎖され、接近すれば船舶は危険にさらされる」(日経新聞)と声明を出すなど、楽観視できる状況ではないが、和平協議が開始されたことは今週の金融市場ではポジティブに受け取られるだろう。
米格付け会社インタビューでは、円相場と円金利がリスクとされた
日経新聞は6月20日の朝刊に米格付け会社2社の担当者の日本国債格付けに関するインタビュー記事を掲載した(電子版では6月19日に配信)。日本国債格付けがすぐに格下げされるようなリスクは高くなさそうだと捉えられる内容だったが、①円相場の下落と②金利上昇(利払い費の増大)が注目されていることが示された。むろん、聞き手がこれらの話題を中心にインタビューしたという面もありそうだが、高市政権が重視する債務残高の対GDP比が中長期的に低下していけば問題ないという長期的な視点ではなく、短期的な変化によって評価が決まってくる円相場や金利動向に言及があったことは重要だろう。
足元では骨太の方針の策定や消費税率引き下げの議論など、財政関連のイベントが続く状況だが、市場動向が意識される展開になる可能性が高い。両氏が金融政策について言及したことも重要である。S&Pグローバル・レーティングのキム・エン・タン氏は「金融政策のクレディビリティー(信認)」が重要だとし、米ムーディーズ・レーティングスのデボラ・タン氏は日銀の金融政策の正常化が長期金利の抑制に貢献していると評価した。高市政権は日銀利上げを最小限にしたいという意向がある可能性が高いものの、円安リスクや金利上昇リスクが高まることがあれば、高市政権や財務省から日銀の利上げを求めることになるだろう。
S&Pグローバル・レーティングのキム・エン・タン氏は「近年、日本の中央政府の財政パフォーマンスは改善している」「今後数年間、財政パフォーマンスがやや弱まるとの見通しはあるものの、日本の信用格付けに対する大幅なダウンサイド(格下げ)の圧力が生じるとは考えていない」と、楽観的な見通しを示した。
重視するポイントについては、「上方シナリオとしては、①歳入の伸びが政府の計画する歳出拡大を支え、かつ円が大幅に弱含まない場合、または②金融政策のクレディビリティー(信認)が著しく改善し、政策余地と柔軟性が大幅に強化される場合」「下方シナリオとしては、日本の経済成長が他の高所得国と比べて継続的かつ著しく低迷し、かつ円がさらに大幅に下落する場合だ。日本の経済競争力が持続的に悪化していることを反映し、格下げを検討する可能性がある」とした。財政収支の状況だけでなく、円相場が重要なファクターだと考えられている模様である。
円金利については、「たとえ利払いが増えても、より高い歳入成長や他の支出削減で相殺され、財政赤字がおおむね安定しているのであれば、日本国債の格付けに対する大きな影響は生じにくいと考える」とされた一方、「利払いの急増が財政赤字の大幅悪化をもたらすような場合には、格下げ圧力が強まる可能性がある」とされた。
米ムーディーズ・レーティングスのデボラ・タン氏は、「財政政策は生活費支援のような限定的措置にとどまっているうえ、経済自体が堅調なため政府が大規模な財政拡張に踏み切る必要性も高くない」と、高市政権の「責任ある積極財政」を冷静に捉えていることを示唆した。もっとも、「高市政権下での大規模な財政拡張は長期・超長期の金利にとってリスクだ。金利上昇局面でもあり、利払い負担が一段と重くなるおそれはある」とした。現状では、「財政には余裕がある。日本はGDP比・歳入比で見た利払いが他国ほど重くない」としたが、利払い費の増加を懸念しているようである。また、デボラ・タン氏は「利上げや量的引き締め(QT)はインフレ期待をある程度抑え、長期金利の上昇圧力を和らげる」とし、金融政策の正常化をポジティブに捉えていた。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)