外国為替市場で円が対ドルで40年ぶりの安値水準に近づき、トヨタ自動車などの輸出型企業の業績上振れ余地が拡大している。現状の160円を超える水準が続いた場合、国内大手自動車7社の今期(2027年3月期)営業益は9000億円超押し上げられる試算だ。

トヨタは5月上旬に発表した今期業績計画で為替前提を1ドル=150円と置いており、足元の為替市場で取引されている161円台とは大きな開きが生まれている。トヨタは1円の円安で営業利益を500億円押し上げると見込んでおり、円安による恩恵は大きい。

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

同業他社ではホンダが同145円、日産自動車が150円、SUBARU(スバル)やマツダが155円との前提を置いている。ブルームバーグが各社の想定為替レートと為替感応度を基に単純に試算したところ、上振れ額は約9340億円となった。

各社を悩ませる原材料やエネルギー価格上昇も一定程度緩和し、想定よりもコストが抑えられる可能性もある。米国とイランの和平合意を受けて、ホルムズ海峡再開への期待感から原油価格は、円換算でも4月末の高値から3割強下落した。

ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは、中東紛争の影響を通年で織り込んでいたトヨタやホンダにとっては「会社計画の大きな押し上げ要因になる」と述べた。また、ガソリン価格の低下が消費者心理にプラスに働き、自動車販売の増加に寄与するとの見方も示した。

トヨタの場合、5月の決算発表で中東情勢緊迫化に伴う資材価格の高騰や減産で計6700億円の影響があるとの見込みを示している。円安の進行や中東影響の緩和に伴い、前期比2割減の3兆円を見込む営業利益計画が今後上方修正される可能性もありそうだ。ブルームバーグがとりまとめたアナリスト予想の平均値は4兆円となっている。

円安影響を上回る原油安の恩恵は航空会社にも及ぶ可能性がある。航空各社の費用で大きなウエートを占めるジェット燃料価格は3月の高値から半値以下の水準まで下落している。ANAホールディングスや日本航空(JAL)が加盟する定期航空協会は4月の緊急声明で、事態が長期化すれば業界全体で年間数千億円以上の負担増となり、国内の航空ネットワークを維持することが困難になる恐れがあるとしていた。

ANAHDの場合、4月末時点で燃料費高騰など中東緊迫化による影響で今期営業利益は約600億円下押しされるとの見込みを示していた。シンガポール市場のケロシン(ジェット燃料)価格は同社が第1四半期で前提とする1バレル=200ドルを大きく下回って推移する一方、為替レートは通期想定の1ドル=155円を上回る円安となっており、業績への影響は強弱が入り交じる状況となっている。

ただ、円安が業績を圧迫する企業も多い。東京商工リサーチの6月のアンケート調査では、5月末の1ドル=159円前後の為替レートは「経営にマイナス」と回答した企業は40.7%に上り、卸売業、小売業、製造業など仕入価格の影響を受けやすい業種が上位を占めた。望ましい為替レートの平均値は136.8円だったという。

海外で生産した商品を輸入するニトリホールディングスの場合、1円の円安で営業利益が20億円押し下げられる。同社では全社の予算策定では1ドル=155円を想定しているが、商品開発に関しては1ドル=165円として、その水準でも利益が出る商品づくりを進める。現在の水準であれば、値上げせずに計画通りの粗利が確保できる見込みだとした。

内需株に変化も

UBS証券の風早隆弘シニアアナリストは、小売りや外食などでも海外展開を進める企業が増え「内需株の外需化」が進んでおり、円安への対応能力は高まっていると指摘する。

一方で、円安による物価高の進行を受け、消費者の価格に対する目線は厳しさを増す。風早氏は、値上げ自体は業績にプラスに働くものの、過去には消費者が価格上昇についていけなくなった局面もあったと指摘。「インフレ下では価値と価格のバランスをこれまで以上に慎重に見極める必要がある」と話す。

事業環境の変化に対応して価格転嫁やコスト管理ができる企業と、そうでない企業との優勝劣敗がはっきりすることで、「業界再編の呼び水にもなり得る」とみる。

--取材協力:吉田昂、清原真里.

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