日産自動車の陰の実力者として知られる永井素夫氏(72)を含め、主要取引銀行であるみずほフィナンシャルグループ出身の2人の社外取締役選任案に、大株主の仏ルノーが賛成票を投じないことが分かった。大株主が支持しない意向を伝えるのは日本の大企業では異例で、株主と取引行の間で板挟みになる日産の姿が浮かび上がる。

複数の関係者によれば、ルノーは今年の株主総会で永井氏の再任に加え、みずほフィナンシャルグループで取締役兼執行役常務財務・ 主計グループ長などを務めた真保順一氏(65)の選任案にも棄権の意向を示している。独立性に疑念が持たれているためという。永井氏が19年から社外取を務める一方、真保氏は今年初めて候補に入った。

ルノーと日産の資本関係の対等化(リバランス)が実現した23年以降、両者が対立する場面は減っていた。だが日産の業績が再び低迷し、ガバナンス(企業統治)不全も顕在化する中、大株主のルノーが再び経営への介入を強める可能性もある。

1990年代末に経営危機に陥っていた日産を救済出資した経緯から、両社の力関係は長くルノーの圧倒的優位が続いた。

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

カルロス・ゴーン元会長(特別背任の罪などで起訴後、公判中に国外逃亡)の逮捕後もルノーは一時、日産との経営統合を模索。

2019年の定時株主総会前には新設される3委員会でのポスト数を不服として委員会設置会社への移行に必要な定款変更に関する議案について投票を棄権する考えを示した。この時は日産は妥協する形でポストを増やす案をルノー側に提示し全面対立を回避した。

その後協議を重ねた結果、23年にリバランスで合意し、信託保有分を除くルノーの議決権は15%まで減少していた。

だが、リバランス後も日産の混乱は収束しなかった。米国と中国での販売低迷で24年後半には再び業績悪化が表面化。追浜工場(神奈川県横須賀市)での生産終了などを柱とするリストラ策を打ち出し、前期(26年3月期)は2期連続の純損失となった。24年の年末にはホンダと共同持ち株会社設立の交渉を開始したものの1カ月余りで破談に終わるなど迷走が目立っていた。

19年の時点ではルノーの日産株保有比率は約43%だったが、リバランスを経て現在は議決権ベースでは15%まで低下している。信託分については原則的に議決権を持たない。だが、アライアンスの契約内容に関する両社の過去の発表資料では「一部の例外を除き、中立的に行使」されるとしている。今回のケースではどのような運用がなされるかも投票結果を左右するポイントとなる。

社外取全員が続投

会見でアライアンス強化について説明するルノーのジャンドミニク・スナール会長(横浜市、2019年3月)

日本興業銀行(現みずほ銀行)出身の永井氏は、3つの委員会すべてに名を連ねる唯一の取締役だ。社内の不祥事などを監視する監査委員長の要職を務め、現在の日産社内で随一の実力者として知られていた。

業績悪化を受けて、25年に内田誠前社長兼最高経営責任者が退任した際、独立社外取は全員留任した。アナリストなどからは社長交代判断やリストラなどで後手に回ったのは社外取にも責任があり、ガバナンス不全を懸念する声も上がっていた。

自動車調査会社、カノラマの宮尾健アナリストは今の日産社内では、業績低迷が続いても永井氏に物を言える人はいないと指摘。ルノーが「大株主の立場から介入し、ガバナンスを効かせようとした」との見方を示した。

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