(ブルームバーグ):米国とイランは21日にスイスで恒久停戦に向けた協議を開始する。バンス米副大統領ら高官が現地に集まる。一方で、イランはホルムズ海峡の閉鎖命令を再び出した。
協議は、レバノン南部でのイスラエル軍と親イラン派武装組織ヒズボラによる軍事衝突の影響で開始が遅れていた。両国は、トランプ大統領がパリ訪問中の17日に署名した覚書に基づき、60日間の交渉期間に入っている。合意には期間延長の規定も盛り込まれている。
この暫定合意は敵対行為の終結を示したが、その成立自体が困難を極めたものだった。しかもイランの核開発能力を巡る、より難しい交渉はまだスタート地点に立ったに過ぎない。さらに、合意の当事者ではないイスラエルとヒズボラの戦闘を受け、イランは停戦違反があったと主張し、ホルムズ海峡を巡る影響力を誇示している。
バンス氏はスイスに現地時間21日午前6時(日本時間同日午後1時)ごろに到着した。パキスタン政府がシャリフ首相とムニール陸軍元帥はビュルゲンシュトックでの会合に出席すると発表した後、ワシントンを出発していた。
バンス氏は「私は1日か2日しか滞在できない」と、出発前に記者団に語った。「核問題で進展を遂げ、レバノン停戦でも前進できるよう期待している」と述べた。
イランはガリバフ国会議長とアラグチ外相、ヘンマティ中央銀行総裁らを派遣したと、国営IRIBニュースが報じた。
バンス氏は、トランプ政権の交渉担当者であるジャレッド・クシュナー氏とスティーブ・ウィトコフ氏がスイスで進めてきた実務的な協議を土台に、「交渉の枠組みを整えること」が目標だと説明した。

トランプ大統領は19日、カタール政府から提供された次期大統領専用機を公開したアンドルーズ統合基地で、双方にはなお合意に達する時間が残されているとの認識を示した。
「そうでなければ、彼らが喜ばないような措置を取ることになるだろう。しかし、そうした事態にはならないと思う」と述べ、「非常に良い結果になる」との見方を示した。
ホルムズ海峡の動向
イランが発表したホルムズ海峡の封鎖は協議に暗雲をもたらしたが、船舶の往来への直接的な影響はなお不透明だ。最近の停戦前でも、数百万バレル規模の原油が毎日、ホルムズ海峡を通過していた。
今回の措置により、数カ月にわたってホルムズ海峡内にとどまる船舶の船主らは、海峡から出ることにさらに慎重になる可能性が高い。20日には、西側諸国の海軍当局が、この航路を利用する船舶は衛星信号の発信の有無にかかわらず、いつでも通航できるとの認識を示していた。
米中央軍は20日、ホルムズ海峡を通過する民間船舶の往来が増加したと発表した。貨物を輸送する商船55隻が海峡を通航し、原油輸送量は1700万バレルを超えたという。
イスラエルが続けるレバノンでの攻撃は、すでに米国とイランの協議を複雑化させていた。イランは一貫して、イスラエル情勢を米国との交渉に結び付けようとしてきた。
イラン外務省のバガイ報道官は、レバノンの状況とイスラエルの軍事行動について、米国には「直接的な責任」があるとの認識を示した。
一方のイスラエルは、ヒズボラがもはや脅威ではないと確信できるまで、国境地帯に部隊を駐留させ続けると主張している。ネタニヤフ首相は19日、「イスラエルは北部地域の住民を守るために必要な限り、レバノン南部の安全保障地帯にとどまる」と、ソーシャルメディアへの投稿で述べた。
トランプ氏はこれまでのイスラエルの攻撃を巡り、ネタニヤフ首相への不満を表明している。バンス氏は18日、「イスラエルには自衛の権利がある」と記者団に語った。「しかし根本的には、イスラエルも他のすべての関係諸国と同様に、この和平プロセスを尊重しなければならない。この和平プロセスはイスラエルにとっても、地域全体にとっても有益なものだ」と述べた。
米・イランの覚書により、米国はイラン港湾に対する海上封鎖を解除し、イラン産原油の販売を妨げてきた制裁の適用除外を認めることを約束した。

これに対しイランは、世界の石油輸送の要衝であるホルムズ海峡を再開すると表明した。ただ、イラン政府の許可取得と強制保険加入を義務付けるとしている。
米国と欧州、湾岸アラブ諸国は、この構想に反発している。トランプ氏は20日のSNSで、60日間の交渉期間中および交渉終了後について、「米国が課す場合を除き、いかなる通航料も認められない」と主張した。
原題:US-Iran Talks Set to Open as Vance Arrives in Switzerland (2)(抜粋)
(4段落目にバンス氏のスイス到着を追加して更新します)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.