(ブルームバーグ):12日の米国株式相場は続伸。ナスダック市場に上場したスペースXが新規株式公開(IPO)価格を大きく上回る値上がりとなり、相場を盛り上げた。
ホルムズ海峡の再開と戦争終結に向けて、米国とイランが暫定合意に近づいていると伝わったことも追い風となった。これを受けて原油は下落した。
S&P500種株価指数は0.5%値上がり。注目のスペースXは初日の取引を19%高で終えた。時価総額は2兆ドルを超えた。
米国は、ホルムズ海峡の再開およびイランの核兵器開発断念を盛り込んだ暫定和平合意が、数日以内にも署名される見通しだとしている。
米政府高官は近く署名に至る確率は80-85%との見方を示した。一方、ニュースサイトのアクシオスによると、トランプ大統領はイランとの合意が週末か週明け15日にも署名される可能性があると語った。
また、イランのアラグチ外相は米国とイランの覚書が「これまでになく成立に近づいている」と発言。パキスタンのシャリフ首相は「和平合意案の最終文書がまとまった」と明らかにし、双方と協力して「次の段階の最終調整」を進めていると述べた。
ただ朝方には、イランが合意条件について事実とは異なる情報をメディアに流出させたとして、トランプ大統領が批判したことを受け、S&P500種はマイナス圏に沈む場面もあった。
セダ・エキスパーツのマネジングディレクター、クレイグ・コーベン氏は「スペースXのIPOは驚異的な株高局面の天井なのか、それとも市場におけるグロース銘柄の評価を一変させるパラダイムシフトを意味するのかを巡って、投資家の間で意見が分かれている」と述べた。
この日発表された経済指標では消費者信頼感の改善に加え、インフレ期待の低下が示された。
LPLファイナンシャルのジェフ・ローチ氏は「イラン情勢が落ち着き、その後サプライチェーンを巡る状況が改善すれば、インフレ圧力は和らぐと予想している」と指摘。一方で、「紛争が夏の間も続けば、インフレの逆風がさらに強まり、成長軌道の重しになるだろう」と語った。
和平合意への期待が高まる一方で、イランはホルムズ海峡を戦争前の状態に戻すつもりはなく、戦争に関連して補償を求めていると、国営イラン通信(IRNA)は報じた。
コーペイのチーフ市場ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は合意成立の見通しについては「慎重に見ておいた方がよい」とリポートに記した。
ただ「ホルムズ海峡が一時的にでも再開されれば、世界の中央銀行が直面するインフレ圧力は和らぎ、市場における金融引き締めの織り込みは後退するだろう」と述べた。
国債
国債相場は下落(利回りは上昇)。米・イラン和平合意への期待から、欧州時間には値上がりしていたが、合意条件を巡るイランのリークに不満を示したトランプ氏の発言を受けて、値を消す展開となった。
ただ、合意が近づいているとのイラン外相の発言で、安値からは戻して引けた。利回りは総じて2-3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。
BMOキャピタル・マーケッツのベイル・ハートマン氏は、「最近の原油・天然ガス価格の下落を踏まえると、(ミシガン大調査で)短期および長期のインフレ期待が低下したことは、金融政策の観点から一定の安心材料となる」と指摘。
「しかし、インフレ指標は依然として戦争前の水準を上回っているほか、長期的に見ても高止まりしている」と指摘した。
外為
ニューヨーク外国為替市場では、ドル指数がほぼ変わらず。米イラン和平合意への期待で原油が売られ、ドルは当初の上げを消した。
原油安でインフレ圧力への懸念が和らぐ中、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ予想は来年に後ずれした。
円は対ドルで下落。総じて160円10-30銭台での推移となった。
和平合意への進展がみられる一方で、米・イランの覚書案を巡っては、双方で食い違う説明をしており、詳細は分かっていない。
クレディ・アグリコルのG10通貨調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「投資家は中東情勢の先行きが明確になるのを待つ間、リスクオンの取引はためらうだろう」と述べた。
一方、イラン戦争を背景に、ドルの強気ポジションが2025年2月以来の高水準に積み上がっていることが分かった。世界の準備通貨であるドルに対し、市場で強気心理が高まっていることを示している。

原油
原油相場は急落。ホルムズ海峡を通過する輸送量の増加や、暫定的な和平合意に向けた進展を受けて売りが膨らみ、北海ブレント原油はイラン戦争初期以来の安値水準となった。
北海ブレント先物8月限は前日比3.4%安の87.33ドルと、3月5日以来の安値となった。週間では6.2%安。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、2.83ドル(3.2%)安の1バレル=84.88ドルと、4月中旬以来の安値で取引を終えた。
複数の高官によると、米国とイランはホルムズ海峡の再開に向けた合意に近づいており、来週開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)を前に、署名される可能性がある。ただ、ワシントンとテヘランからは依然として食い違うメッセージが発せられており、その日程にはなお不透明感が残る。
ここ数週間では、衛星通信システム(AIS)の信号を切ったまま同海峡を通航する船舶が増加している。中国の輸入急減や米国の輸出急増も需給の均衡維持に寄与している。
USバンクのシニア投資ストラテジスト、ロブ・ハワース氏は「暫定的な和平合意が成立し、ホルムズ海峡が再開されたとしても、供給はなお制約を受けた状態が続くだろう」と指摘した。

原油価格は紛争初期の高値から約30%下落している。2月に戦争が勃発する前は供給過剰の状態にあり、北海ブレント原油は1バレル=70ドル近辺で推移していた。
船主らは和平交渉の行方を注視しており、一部のタンカー運航会社はホルムズ海峡再開の可能性について慎重な見方を示している。一方で、海峡が本格的に再開されれば、輸送需要の急増を背景に激しい競争が起きると予想する向きもある。
ハワース氏によると、ホルムズ海峡を通ってアジアへ向かう船舶は、往復に約2カ月を要する。アジアはペルシャ湾岸の産油国にとって最大の市場だ。
ICAPのエネルギー専門家、スコット・シェルトン氏は、多くの国はペルシャ湾からの原油よりも米国産原油の購入を選好する可能性が高いと指摘。「市場は少なくとも当面の間、ペルシャ湾産原油への依存を減らそうとするだろう」と語った。その理由について、「ホルムズ海峡を閉鎖することがそれほど難しくないと、イランが証明してしまったからだ」と述べた。
金
金スポットは小幅続伸。米国とイランが和平合意に至るとの見通しがある一方、米消費者マインド指数が持ち直し、インフレ期待は鈍化したため、もみ合う場面が目立った。
TDセキュリティーズのシニア商品ストラテジスト、ライアン・マッケイ氏は「原油価格を押し下げる材料が相次いでいるものの、金利は高止まりし、利上げ観測はなお強く、金相場の上値を抑えている」と指摘。「合意に向けた協議への期待によって当面は原油価格が抑制されるなら、4000ドルをやや下回る水準に控える売り注文を誘いにいくという、最悪のシナリオはひとまず回避される可能性がある」と述べた。
もっとも、米国とイランの合意の枠組みは依然として不安定で、エネルギー価格も高止まりしており、金をはじめとする貴金属相場は、なお予断を許さない状況にあるとの見方も示した。

金スポット価格はニューヨーク時間午後2時30分現在、前日比14.28ドル(0.3%)高の1オンス=4226.54ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は124.80ドル(3%)上昇し、4238.80ドルで引けた。
欧州
12日の欧州債券市場は、米国とイランが戦争終結に向けた合意に近づいているとの期待から原油価格が下落し、債券が上昇した。
ドイツ10年債利回りは4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下落し3.0%となった。スワップ市場は年末までに欧州中央銀行(ECB)が計36bpの利上げを行うと示唆している。11日時点の42bpから縮小した。
リスク資産が急騰する中、イタリア債は2日連続でユーロ圏の他国債をアウトパフォームした。
英国債はドイツ債を上回るパフォーマンスを示した。英10年債は7bp低い4.8%となった。短期金融市場では、イングランド銀行(英中央銀行)の年末までの利上げ幅を36bpとしている。
欧州株は週末を前に上昇し、戦争勃発前の2月に付けた最高値に迫った。原油価格の下落が追い風となった。
ストックス欧州600指数は1.9%高で取引を終えた。原油価格は下落幅を拡大し、北海ブレント原油先物は約4%下落して1バレル=87ドル前後となった。
業種別では、旅行関連株と銀行株が上昇をけん引した一方、エネルギー株は唯一の下落業種となった。
6月12日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)
原題:Stocks Climb on US-Iran Optimism as SpaceX Debuts: Markets Wrap(抜粋)
S&P 500 Climbs as SpaceX Gains, Hopes Build for Iran Peace Deal
Treasuries Hold Losses as US-Iran Peace Deal Remains Unknown
Dollar Erases Gains Amid Optimism Over US-Iran Deal: Inside G10
Oil Hits Lowest Since Early March on Potential Hormuz Reopening
Gold Declines as Traders Weigh Iran Deal Prospects, US Data
European Stocks Flirt With Record High on Hopes for US-Iran Deal
Bunds Pare Gains on US-Iran Uncertainty: End-of-Day Curves
トロント 塩原るみ rshiohara@bloomberg.netもっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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