欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのナーゲル・ドイツ連邦銀行総裁は12日、中東での戦争の衝撃で必要になるのなら、ECBは来月の会合で2会合連続となる利上げを行う用意があるとの認識を示した。

ナーゲル氏は電子メールでのコメントで、戦争の影響は無視できないほど大きくなっており、たとえ情勢が急速に落ち着いたとしても、ECBが11日に決定した中銀預金金利の引き上げは必要だったと説明した。エネルギー価格の上昇が他の財・サービスの価格にも波及し、コアインフレ率を押し上げていると指摘した。

Photographer: Benjamin Girette/Bloomberg

ナーゲル氏は「政策委員会は7月に次回会合を控えている」とした上で、「あらゆる選択肢を維持しており、必要であれば再び対応する用意がある。データに基づき、会合ごとに判断するという現在のアプローチは引き続き適切だ」と述べた。

ECBは11日の政策委員会会合で、2023年以来となる利上げを決定した。イラン戦争に起因するインフレに対応した最初の主要中銀となった。

欧州では戦争の影響が鮮明になりつつある。5月の消費者物価上昇率は3%超に達し、企業活動も低迷している。ECBのラガルド総裁は11日、エネルギー価格上昇によるショックが経済全体に「広がりつつある」と警告した。

ナーゲル氏は、物価見通しが「さらに悪化した」と述べ、このショックは「強く、持続的」だとの見方を示した。

その上で、「だからこそ、単に『見過ごす』ことはできない」とし、「たとえ情勢が速やかに改善したとしても、今回の金利措置は必要だっただろう」と語った。

カーシク・エストニア中銀総裁も同様に慎重な姿勢を示し、次回利上げの時期については「極めて判断が難しい」と説明。

カーシク氏はエストニアのラジオ局アリパエブの番組で「不確実性が大きい」と語り、「例えば、今回は利上げし、前回は利上げしなかった理由は、この戦争が決着に向かうのではないかという期待が常にあったからだ」と述べた。

さらに、「より現実的に見れば、インフレリスクは上振れ方向にある」と指摘した。

コッハー・オーストリア中銀総裁も慎重論を唱えた。

同氏はウィーンで記者団に対し、「我々は不必要な利上げを避けたい。しかし、次回の政策会合までまだ6週間ある」として、「それまでに多くのことが起こり得る。現時点で何かを確約しないことに価値がある」と続けた。

マクルーフ・アイルランド中銀総裁は、インフレ率が「上昇方向に」あると警告。政策当局は「先手を打たなければならず」、さもなくば問題がさらに深刻化する恐れがあると語った。

同氏はアイルランドのラジオ番組で、「我々が何もしないのは間違いだろう」と述べ、「いまや影響がはるかに広い範囲に及んでいるのが見て取れる。間接的な影響が見られている」と続けた。

レーン・フィンランド中銀総裁は10日の利上げについて、エネルギー価格上昇によるインフレ圧力が他の物価や賃金へ波及するのを防ぐことが目的だったとの認識を示しつつ、二次的波及効果の兆しはまだ見られていないと述べた。

一方、ムーラン・フランス中銀総裁は、原油高がユーロ圏の賃金にはまだ波及していないとしても、他の物価はサービスの価格に影響し始めていると指摘。

「ペルシャ湾での戦争勃発から3カ月半が経過し、短期的な地政学上の展開がどうであれ、エネルギーショックが長期化することは今や明らかだ。原油と天然ガスの価格上昇は、すでに消費者物価バスケット内の他の価格へ波及し始めている。特に一部サービス価格への転嫁が見られる。ただし、現時点では賃金を通じた二次的波及効果はまだ確認されていない」と、リンクトインでの投稿で論じた。

原題:ECB Ready to Hike Again in July If Necessary, Nagel Says (3)、ECB’s Moulin Sees Broadening Energy Shock, But Not In Wages Yet(抜粋)

(終わりから7段落にオーストリア、アイルランド、フィンランド、フランスの各中銀総裁の発言を加えます)

--取材協力:Oliver Crook.

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