停戦後の復興活動

しかし、航行の自由が実現しても原油価格はすぐには急落はしないだろう。各国とも、戦闘が行われた2026年3~5月の3か月間に備蓄原油を取り崩していたから、その在庫復元に向けて原油輸入を増やそうとするだろう。経済活動も、停戦によって復興需要が生まれて、原油需要も高まるだろう。また、戦闘終結後になれば、次第にホルムズ湾岸のイラン以外の地域で、港湾や石油施設が破壊されていることが判明して、その復旧に時間を要し、原油市場では供給制約が意識されるだろう。

2026年4月の国内企業物価を調べると、ナフサは前年比79.4%の上昇(約1.8倍)である。これよりは下がっていくだろうが、イラン攻撃以前には戻りにくい。2026年度内における消費者物価の上昇圧力は継続するだろう。

また、ナフサなどは米国や南米、アフリカなどから代替輸入が決まっているようだ。そうなると、以前の中東産原油でナフサを精製していたときに比べてコストは高くなる。エネルギー安全保障は、高市政権の金看板であり、コスト高を容認してでも、安全保障を重視することを謳っている。その考え方に従うと、コスト上昇は、いくらか仕方がない面がある。代替輸入によるコスト高を批判するのは筋違いという見方もできる。

財政・金融政策の行方

筆者には、イラン攻撃がうまく終息すれば、以前予想されていたよりも財政出動の規模を少なくできるという期待感がある。それは、長期金利上昇を抑える効果もある。

しかし、高市政権は、ここまで起こっていた金利上昇のシグナルを重視するだろうか。高市政権は、2026年度補正予算案を編成し、再び拡張財政に動こうとしている。2026年度の補正予算案では、31,135億円での歳出が予定される。1か月間に約4千億円を使うとされるガソリン等の補助を延長するためである。予算案では、約3.1兆円のうち2.5兆円をガソリン減税に使い、予備費を約5千億円、LPガス支援を1千億円にする構えである。従来の1リットル170円への抑制は、前年同期の177円よりも値下がりしていて、どう考えても低すぎる。激変緩和措置として補助縮小を段階的に進めることが適当であるが、与党内には現状維持バイアスが働き、激変緩和・緊急避難的な措置をなるべく長く続けたいという志向がある。だから、たとえ暫定合意が近づいても、長期金利の上昇圧力はくすぶり続けるであろう。

一方で、対照的なのは金融政策である。様子見をしていた植田総裁は、6月18・19日の次回決定会合で追加利上げに動きやすくなろう。これは、不確実性が後退したため、4月に見送りをした理由が、今度の6月にはなくなるからだ。米国でも、次回FOMCが6月16・17日にウォーシュ新議長の下で行われる。新議長に対して、現状トランプ大統領は利下げを強く要求していない。この時期までに、暫定合意ができていれば、原油市況はいくらか落ち着くので、ドル高も和らぎそうだ。日銀の利上げは、円高方向への作用を強めるとみられる。

(※情報提供、記事執筆:第一ライフ資産運用経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生)