・トランプ大統領は、イランとの間で暫定合意に向けて「覚書」の修正を要求しているとされる。合意は近いと思えるが、まだ一致には至らないようだ。いずれにしろ、停戦に向けた交渉は最終局面に来ている。これで60日の停戦延長になれば、戦闘自体も終結する可能性は高い。
・しかし、停戦合意の後、ホルムズ海峡の機雷除去に30日程度を要するため、航行はすぐには自由になりそうもない。復興・備蓄回復による原油需要の高まりも予想されるため、原油価格がしばらくは高止まりするリスクがある。
ホルムズ海峡の開放
米国の新興メディア・サイトであるアクシオスによると、5月30日時点では、米国とイランとの間で、60日間の停戦に向けた「覚書」(メモランダム)の修正をトランプ大統領が要求していると言う。暫定合意に近づいていることは確かなようだ。トランプ大統領がイランの核開発に関して不信感を持ち、濃縮ウランの処分方法を巡って最終承認を渋っていると言われる。両者の認識にはまだ隔たりがあり、核放棄のところがネックになっているようだ。
筆者は、以前から核放棄の手順と、ホルムズ海峡開放を別建てにした方がよいと考えていたので、今回のやり方には賛成である。まずはホルムズ海峡の開放を優先し、その後で米国とイランが核開発の取り決めを行う。しかし、もう一方でトランプ大統領が懸念するように、停戦後に約束を破って、核開発を密かに進めてしまうリスクはある。だから、高濃度の濃縮ウランをどう管理すべきかを事前にきちんと取り決めておくべきだという点も重要とみる。全体としては、よい落とし所へと向かっている印象である。
経済的な側面に限って、この暫定合意がまとまった場合の影響を考えてみたい。実のところ、この60日間の停戦延長はどこが期日なのかはっきりしない。トランプ大統領は4月中旬以降、停戦期限の日時をずっと曖昧にしているからだ。米中首脳会談ではイランとの戦闘は終わっていると述べていた。たびたび、大統領の発言がぶれることが起こっている。筆者は、この60日間については6月初旬から数えて8月初までが期限ではないかと考えている。もしもそうならば、米国で建国250年を祝う、独立記念日の7月4日を越える日程になる。8月初の後には、米中間選挙が控えている。中間選挙は投票日が11月3日と決まっている。だから、おそらくはこれで戦闘は終わりなのだろうと理解できる。
焦点は、原油輸送の正常化である。具体的には、30日以内にホルムズ海峡の機雷除去を米国軍が行って、航行の自由が確保できそうかどうかという点だ。米国の逆封鎖も気になるが、観測ではイランの港も封鎖が解除されて、テヘランが石油を自由に販売できるとされているから、同時に逆封鎖もなくすのだろう。これが実行されれば、日本を含めた世界への原油供給は1~3か月後には正常化していくことが期待される。WTIの市況は、5月19日までは1バレル100ドルを超えていたが、5月27日以降は80ドル台後半まで高騰が鎮静化しつつある。話題になっているナフサ価格も、やはり徐々に価格下落しているのが実情である。
