イーロン・マスク氏率いる米宇宙開発企業スペースXの新規株式公開(IPO)は、トランプ米政権の裕福な高官らをさらに富ませる公算が大きい。

中東問題などを担当するウィトコフ特使や中小企業庁(SBA)のロフラー長官など10人の政府高官が、スペースXまたは同社が2月に合併した人工知能(AI)・ソーシャルメディア企業xAIの株式などを保有していることが、最新の資産開示資料で明らかになっている。

これらの連邦職員が保有するスペースXまたはxAIの株式総額は少なくとも990万ドル(約15億8000万円)、最大で4380万ドルに上る。開示は昨年行われたもので、資産価値を大まかな区分で示している。それ以降に保有株の一部または全てを売却した可能性はあるが、追加の開示義務は発生しないため、現在も同規模の持ち分を保有しているかは不明だ。

Photographer: Ethan Swope/Bloomberg

スペースXは、計画中のIPOの規模が前例のない大きさであることに加え、政府や政権関係者との結び付きの強さでも際立っている。IPOは早ければ来週にも実施される見通しで、目標とする少なくとも1兆8000億ドルの企業価値を達成すれば、マスク氏は世界初の資産1兆ドル超の富豪になる見込みだ。また、このIPOによって複数の社内関係者や投資家が新たにビリオネアとなるほか、従業員にも数百万ドル規模の富をもたらすとみられている。

スペースXは主要な政府請負業者で、2025会計年度の連邦政府との取引額は40億ドルに達した。先月には、通信や空中からの脅威を監視する衛星の提供を巡り、米宇宙軍から総額65億ドルの契約2件を追加で獲得した。

マスク氏は政府効率化省(DOGE)を率いていた間、政府全体での契約削減やデータ収集を担う人材として数十人を連邦政府内のポストに送り込む人選に関与した。その多くは、スペースXをはじめとする同氏の事業グループの従業員だった。

マスク氏がワシントンを離れる直前には、元スペースXエンジニアのポール・マキナニー氏が内務省の最高情報責任者(CIO)に任命された。資産開示資料によると、同氏は政府高官の中で最大のスペースX持ち分を保有しており、その価値は500万-2500万ドルに上る。同氏は保有株の売却を求められず、代わりに倫理上の適用除外措置を受けた。これにより同社に影響を及ぼし得る広範な政策課題に関与することが認められた。

内務省の報道官はマキナニー氏について、自身の経済的利害関係が及ぶ全ての案件から身を引いていると説明した。

「マキナニー氏はトランプ政権の使命に共感し、政府全体が米国の納税者のためにより効率的に機能できると確信しているため、公職に就く決断をした」と同報道官は指摘。「マキナニー氏は自身の倫理上の義務を真摯(しんし)に受け止めている」と続けた。

ウィトコフ特使

スペースXの持ち分を保有する別の高官の1人がウィトコフ氏だ。同氏はウクライナやガザ、イランを巡る和平交渉に携わっている。資産開示資料によると、同氏は投資ビークルの3G Investorsに100万-500万ドル相当の持ち分を保有している。同投資ビークルが報告した保有資産はスペースXのみだった。ホワイトハウスの報道官は、ウィトコフ氏の資産開示についてコメントを控えた。

大半のケースで、各高官が開示後に保有資産を変更したかどうかは不明だ。株式や債券など一定の資産については、売却後45日以内の報告が法律で義務付けられているが、非公開企業の持ち分はその対象外となっている。5月に提出された新たな資産開示資料は、6月中旬までに公開される予定だ。

「比較できる前例なし」

スペースXは最大750億ドルの資金調達を目指しており、実現すれば史上最大のIPOとなる。ただ、政府倫理問題を専門とする弁護士らは、この案件が異例なのはIPOの規模だけではないと指摘する。

法律事務所ウィリー・ラインで選挙法・政府倫理部門の共同責任者を務めるケイレブ・バーンズ氏は、「これはまさに極めて異例のイベントだ」と話す。「史上最大の株式公開であるだけでなく、かつて大統領の側近だった人物が率いる企業によるものだ。その人物はDOGEでの活動を通じて、連邦政府のほぼ全ての行政機関に関与していた」と述べた。

その上で、「歴史的に見ても比較できる前例はない」と付け加えた。

少なくとも1人の政権任命者は、倫理規定の要件を満たすため、スペースXへの投資持ち分を手放すよう求められた。

米連邦準備制度理事会(FRB)議長に先月就任したケビン・ウォーシュ氏は、著名投資家スタン・ドラッケンミラー氏が率いるデュケイン・ファミリー・オフィス関連のファンドを通じてスペースXに投資していた。ウォーシュ氏は倫理関連の提出書類で、FRBでの職務就任前に同ファンドの持ち分を売却すると表明した。

FRBは、この倫理関連書類の内容を超えるコメントを控えた。

トランプ政権内の他の高官らも、マスク氏の企業への比較的小規模な持ち分を開示している。

元上院議員のロフラー中小企業庁長官は、100万-500万ドル相当のxAIへの投資を開示した。提出資料によると、この資産はロフラー氏と夫でインターコンチネンタル取引所(ICE)創業者のジェフリー・スプレッチャー氏の資産を運用するファミリーオフィスの資産として計上されていた。UBSグループの口座で保有され、投資先がxAIのみのValor Equity Partnersのファンドを介した投資だった。

Valor Equity Partnersは、マスク氏の長年の側近であるアントニオ・グラシアス氏が創業した投資会社で、マスク氏本人に次ぐスペースX大株主の1社とされる。

中小企業庁はコメント要請に応じなかった。

原題:Trump Officials Held Millions of Dollars of SpaceX Ahead of IPO(抜粋)

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