(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男総裁は3日、先行きの金融政策運営について、物価の上振れリスクが高まれば利上げの是非に関する議論が必要だとし、早期実施に前向きな姿勢を示した。都内で講演した。
植田総裁は、中東情勢が不透明な状況でも、経済の下振れリスクに比べ、物価の上振れリスクが高まると判断される場合には「利上げの是非についてしっかりと議論する必要がある」とした。重視する基調的な物価上昇率が2%に向けて徐々に高まる見通しが実現する確度が高まれば、適切なペースで利上げするとも語った。
原油などの供給ショックに伴う物価上昇は一時的なものにとどまらず、「基調的な物価上昇率が上振れていくリスクも意識せざるを得ない状況」と言明。他の主要国と比べても原油高を起点とする物価上昇が基調的な物価の上振れにつながりやすいとし、「このことを前提に今後の政策を判断していく必要がある」との見解を示した。
政策金利の維持を決めた前回の4月の金融政策決定会合では、9人の政策委員のうち3人が利上げが必要として反対票を投じた。中東情勢を受けた物価上振れリスクへの警戒感が強まり、審議委員を中心に利上げに積極的な発信が続く中、植田総裁も今月も視野に前向きな姿勢を示した形だ。
ラボバンクの為替戦略責任者、ジェーン・フォーリー氏は、総裁の発言は今月会合で「利上げが真剣に議論の対象になることを明確に示している」とし、「総裁が今月の利上げを支持する可能性は非常に高い」との見方を示した。円の軟調さから日銀は数カ月以内の追加利上げの可能性も示唆する必要があるかもしれないとも語った。
総裁は、必要な政策対応が遅れて大幅な利上げを余儀なくされれば、「景気のみならず、金融市場や金融システムに大きな負荷をかける恐れもある」と指摘。経済の下振れリスクを意識しつつも、「物価上昇率が大きく上振れていくリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことをより警戒する必要がある」とした。
植田総裁の講演開始後、円は対ドルで一時159円30銭台まで上げ幅を広げる場面があった。足元は159円80銭付近で推移している。
前回利上げした昨年12月会合前の講演で総裁は、同会合で「利上げの是非について適切に判断したい」と発言し、市場の織り込みが急速に進んだ経緯がある。足元の金利スワップ市場が見込む今月の会合での利上げ予想は既に88%程度に高まっている。
片山さつき財務相は3日の臨時閣議後の会見で、日銀は政府の経済政策について理解していると述べ、政府・日銀間の連携を強調した。植田総裁とも経済への認識などが共有できていると話した。
国債買い入れ
今月の会合では、国債買い入れの減額計画について中間評価を行う。2025年6月に決めた現在の減額計画は、四半期ごとに買い入れ額を2000億円ずつ減らし、27年1ー3月に月間購入額が2.1兆円程度まで縮小する。
植田総裁は、国債買い入れ方針の議論のポイントに関し、減額が進ちょくする中で、国債市場の機能度は着実に改善しており、「本来期待される機能を取り戻しつつある」と指摘。長期金利が上昇する中、国債市場の安定にも目配りが必要との認識も示した。
(発言の詳細を追加して更新しました。)
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