エボラウイルス病(エボラ出血熱)は地球上で最も致死率の高い病気の一つだ。致死率は最大90%に達し、各国政府が国家安全保障上の脅威と見なすほど危険な数少ない感染症の一つとなっている。

コンゴ民主共和国(旧ザイール)の北東部で発生し、隣国ウガンダにも広がった流行を巡り、封じ込めが一段と難しくなるとの懸念が高まっている。エボラウイルスの希少な「ブンディブギョ株」には承認済みワクチンや抗体医薬品がないためだ。感染疑いで死亡した事例が220件を超え、同国東部の治療センターが紛争の影響で攻撃を受ける中、世界保健機関(WHO)は5月25日、対応を上回る速さで拡大しているとの見解を示した。

コンゴはエボラ流行への対応で豊富な経験を持つ。ただ、長年の混乱でインフラが脆弱(ぜいじゃく)になっている上、米国の援助資金削減後に世界的な衛生プログラムへの負荷が強まっており、事態の収束を難しくする可能性がある。

エボラとは何か

エボラ出血熱は、主にサハラ以南のアフリカに存在するオルソエボラウイルス属に属するウイルスによって引き起こされる。6種類が確認されているが、ヒトにエボラ出血熱を引き起こすことが分かっているのは4種類だけだ。

エボラのヒトへの感染経路はチンパンジー、ゴリラ、コウモリなど感染した動物との接触と見られている。ヒト同士では、感染者の体液や、汚染された物質との直接的な接触で広がる。流行時には、感染者の家族や医療従事者が最も高いリスクにさらされることが多い。

新型コロナウイルス感染症を引き起こすコロナウイルスのような空気感染するウイルスと異なり、エボラは日常的な接触では簡単に広がらない。感染には一般に感染者の体液との濃厚接触が必要で、特に感染者が重症化している場合や死亡した場合にリスクが高い。

ブンディブギョ株とは

今回の流行は、2007年にウガンダ西部で初めて確認されたブンディブギョ株によるものと判明した。同株による流行は07年のウガンダ、12年のコンゴ東部に続き、今回が3回目となる。そのため、より一般的で致死率が高いザイール株よりもブンディブギョ株に関する情報ははるかに少ない。

エボラのワクチンや抗体医薬品の大半は、2013-16年に西アフリカで発生した流行を受け、ザイール株に特化して開発された。この流行では1万1000人以上が死亡し、エボラとして過去最大の流行となった。ウイルスはギニア、リベリア、シエラレオネから周辺国に広がり、欧州と米国でも単発的な感染例が確認された。

このためブンディブギョ株に対する医学的な対策は乏しい。米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス治療薬「レムデシビル」などの使用が検討される可能性はあるが、ブンディブギョ株に特化した承認済みのワクチンやモノクローナル抗体治療薬はない。

これまでの影響は

コンゴでは5月25日時点で、エボラ感染が確認された事例が101件、感染疑い例が930件、感染疑いでの死亡が221件報告されている。エボラ関連の死亡は10日前は65件だった。

ウイルスは、首都キンシャサから1700キロメートル以上離れたコンゴ東部の奥地イトゥリ州で広がっている。同州は紛争の影響を受けており、道路事情が悪く、医療インフラも限られ、武装勢力が活動している。

流行の中心はモングワル周辺で、金鉱地域として知られる。同地域では数万人の労働者が人里離れた採掘拠点と周辺の商業拠点を行き来している。感染疑い例は人口約70万人の州都ブニアでも確認されている。

ウガンダや南スーダンとの国境をまたぐ往来が頻繁なため、感染が地域全体に拡大するリスクが高まっている。ウガンダでは、コンゴからの渡航者の間で少数の感染例が確認された。

公衆衛生当局はどのように対応しているか

WHOは5月25日に出した流行拡大への警告の1週間前に、今回の流行について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。これは国境を越える公衆衛生上のリスクを伴い、国際的に連携した対応を必要とする異例の流行に適用される。

WHOはこれまでに、新型コロナ、エムポックス(サル痘)、ポリオ、過去のエボラ流行でPHEICを宣言している。PHEICは、今回の流行がパンデミック(世界的大流行)に発展すると見込まれていることを意味するものではないが、資金や技術支援、各国の備えを促す狙いがある。

保健当局は各国に対し、疾病監視、検査体制、接触者追跡、国境でのスクリーニング、治療準備を強化するよう求めた。特に国境を越えた感染拡大リスクがある周辺国での対応の強化が必要だとしている。

コンゴの対応能力はどの程度か

コンゴは1976年にエボラ川付近でウイルスが初めて確認されて以降、十数回の流行に直面してきた。そのためエボラ対応において、世界でも最も経験豊富な国の一つと見なされている。

同国は迅速な検査、接触者追跡、地域社会との連携の仕組みを構築してきた。2025年12月に終息宣言が出された前回の流行では6週間以内の封じ込めを実現した。

それでも今回の流行は、コンゴ東部の公衆衛生体制に負荷が高まっている現状を浮き彫りにしている。同地域では、武力紛争や住民の大規模避難、当局への不信感が患者隔離や感染追跡を難しくしており、保健当局は病院への攻撃や感染対策が不十分な埋葬が感染拡大を加速させていると警告している。

ロイター通信が地元病院関係者の話として報じたところによると、イトゥリ州では隔離テントが焼かれ、遺体引き渡しを求める群衆が病院を襲撃した後、少なくとも25人のエボラ感染者が治療施設から逃走した。

専門家は、米国の対外援助や公衆衛生プログラムの削減が、脆弱な国家における疾病監視や緊急対応能力を弱める可能性があると警告している。科学誌サイエンスに5月に掲載された研究では、米国際開発局(USAID)の資金供与打ち切りが援助依存度の高いアフリカ地域での紛争増加と関連していたことが示された。

過去の流行時には、米疾病対策センター(CDC)やUSAIDを通じて米国が資金や技術支援を提供し、疫学者の訓練、検査能力の拡充、ワクチン展開支援などを行っていた。

エボラは人にどのような影響を及ぼすのか

症状は突然現れることがあり、発熱、倦怠(けんたい)感、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなどが含まれる。その後、嘔吐(おうと)や下痢が続き、一部では体内外の出血も起きる。

ウイルスは免疫システムと複数の臓器を攻撃し、ショック症状や臓器不全を引き起こして死に至る可能性がある。

エボラから回復しても、慢性的な痛み、目の炎症、神経系の異常などの後遺症が残る可能性がある。研究者はまた、ウイルスが目や中枢神経、精巣など免疫の働きが及びにくい部位に残存する可能性があることを明らかにしている。回復後も数カ月から数年にわたり体内に残留し、まれに性的感染や流行再燃につながる場合がある。

エボラはどのように治療されるのか

早期治療は生存率を高める。

感染者には通常、点滴や電解質補給による脱水対策に加え、酸素吸入や血圧安定剤の投与、二次感染・合併症への治療が施される。

ザイール株向けには2種類の抗体療法が承認されている一方、ブンディブギョ株向けには承認された治療法がない。

エボラワクチンは存在するのか

エボラワクチン「エルベボ」はザイール株に高い有効性を示しており、過去のコンゴでの流行時には、感染者の家族や最前線の医療従事者を対象にした「リングワクチン接種(包囲ワクチン接種)」で広く使用された。

一方、ブンディブギョ株に対して広く承認されたワクチンは現時点で存在しない。

原題:What to Know About Ebola as Fears of Spread Grow: Explainer(抜粋)

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