三峡ダムの3倍、現代工学の限界への挑戦
単一のエネルギー源としては群を抜いて世界最大であり、設備容量は60GW(ギガワット)に達します。
中国政府が見込む年間発電量はおよそ3000億キロワット時。これはあの三峡ダムの約3倍に相当します。
公式情報はほとんど明かされていませんが、学術誌『ネイチャー』などの情報やアナリストの分析によると、これは従来の壁のような単一のダムではなく、川を山中のトンネルへ迂回させる「分水プロジェクト」だと推測されています。
まず上流に水量調整用の巨大ダムを作り、峡谷の入り口の小ダムから水を山中へ引き込んでタービンを回し、峡谷の出口にある再調整ダムで水流を安定させてからインドへ流すという説が有力です。

迂回させる水量はヨーロッパのライン川など中規模な川の全流量に匹敵し、山の中に川を再構築するような難工事となります。
総工費は1兆200億元(約1670億ドル)にのぼり、三峡ダムの建設費(約370億ドル)の4〜5倍という巨費が投じられます。
しかし、建設地は6つの岩盤が交錯し、1950年にはマグニチュード8.6の地震が起きた世界有数の地震地帯です。
土砂崩れや凍結、機械の故障、落下事故といった危険と隣り合わせであり、地殻変動を防ぐことはできないため、現代工学の限界を試すことになります。
経済戦略と「2060年カーボンニュートラル」
専門家は、これが単なる発電目的ではなく、中国の国家経済戦略の要であると指摘します。
中国は「建設」によって問題を解決しようとする傾向があり、投資主導から消費主導への経済転換期において、低迷する需要の呼び水としてこの大規模投資を利用している側面があります。実際にプロジェクト発表時には、「中国電力建設」や「華新セメント」などの株価が急騰し、鉄鋼やセメント分野の活性化が期待されています。
また、環境面での大義名分もあります。化石燃料をこの水力発電に置き換えることで、年間3億トンの炭素排出を削減できるとされており、中国が掲げる「2060年までのCO2排出実質ゼロ」の達成や、エネルギー大量消費社会における安全保障に大きく貢献します。
