熱量型文化は「資源」にも「負担」にもなる~仕事の満足度は抜きん出て高くはない

また、社会貢献×成長志向層は仕事に前向きである傾向がみられるが、必ずしも「仕事に対する満足度の高い」わけではなく、現にこの層の仕事への満足度は抜きん出て高いとは言えない。

この結果は少し意外に見えるかもしれない。

社会貢献×成長志向層は、社会に役立つことだけでなく、成長、公正な評価、経営への信頼、働きやすさも求める、いわば、仕事への期待の密度が高い層である。だからこそ、現実の職場がその期待を十分に満たしていなければ、その満足度は必ずしも高くならない。

たとえば、ある研究では、仕事を通じた成長の機会が「常に成果を出さなければならない圧力」になったり、社会貢献の理念が「否定や断りづらい使命感」として機能したり、目標の共有が周囲との「同調圧力」になったりすれば、熱量は従業員を支える資源ではなく、疲弊を招くストレスになりうるとされる。

したがって、「社会貢献×成長志向層」を引きつける企業に必要なのは、「志」や「成長」を強く語る熱量型の企業文化そのものというより、むしろ、そういった熱量が従業員の自律性や成長を支える制度・仕組みになっているのか、という視点であろう。

昭和回帰とは言えない~むしろ現代的で合理的な働き方志向

冒頭で見たように、近年、「志」や「成長」といった言葉を強く打ち出す企業文化が、一部で注目されている。

ただし、今回の分析で見る限り、この仮説と親和性の高い「社会貢献×成長志向層」は、20代で1割強となっており、20代の中で突出して多いわけではない。したがって、若年層全体の熱量が大きく、高いコミットメントを求める企業文化を求めている、とまでは言えない。

一方で、この「社会貢献×成長志向層」は、成果報酬、新しい役割への挑戦、厳格な目標への志向も相対的に高い。若年層の社会貢献志向は、必ずしも穏やかで利他的な意識だけではなく、むしろ社会に役立ちたいという思いと、自分も成長したい、努力や成果を正当に評価されたいという思いが、同じ層の中で重なりあって形成されていることがわかる。

それは、社会とのつながりを感じられる仕事を通じて、自分の能力を高め、納得できる評価を受けたいという思いであり、昭和的な根性論への回帰というより、むしろ社会的意義を、自身のキャリア、成長、評価、経営への信頼と結びつける、現代的で合理的な働き方志向であるとも言える。

見方を変えれば、社会に役立ちたいという理想を持ちながらも、それを自己犠牲としてではなく、自分の成長、正当な評価、キャリア形成、経営への納得感と結びつけて捉えるという、戦略的な一面を持つ理想主義な職場選好として捉えることもできるだろう。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員 小口 裕)