「社会に役立つ仕事を通じて自分も成長したい」という職場選好

近年、「志」や「成長」といった言葉を強く打ち出す企業が、一部で注目されている。仕事への強いコミットメントを求める企業について、メディアでは「厳しい環境を求める若者には響く」といった見方も示されている。

しかし、この動きを就職市場全体の主流と見るには慎重さが必要だろう。直近の新卒採用市場に関する調査を見ても、安定性、待遇、成長環境を備えた大手企業への志向は依然として強い。文理男女を問わず、総合商社、金融、不動産、ITなどの業界トップ企業が人気を集めており、好業績、働き方改革、若手の待遇改善を進める企業に、引き続き注目が集まっている。

また、新入社員を対象とした別の調査では、「年功序列」を望む新入社員が56.3%となり、成果主義を上回ったという。終身雇用を望む割合も69.4%と7割近くに達し、同じ会社に長く勤めたいとする回答も増加傾向にある。こうしたデータを見る限り、若年層全体が厳しい成果主義や強いコミットメントを求めている、と捉えるのはやや過大な見方とも言えるだろう。

その一方で、別の動きも見逃せない。2025年卒の学生を対象とした調査では、企業の「パーパスを知ると志望度が上がる」と答えた学生が約6割に上った。学生からは、「自身が大切にしたいことと、その企業のパーパスが重なると、志望度が上がる」といった声も紹介されている。

これらの実態から見えてくるのは、若年層が、いわゆる昭和的な体育会文化や、朝礼で社是を唱和するような企業文化へ単純に回帰しているという姿というより、むしろ、働き方改革やパーパスという言葉に見られるように、「社会への貢献」を実感でき、「自分自身の成長」も志向できる職場に惹かれている見方であろう。

そこで本稿では、社会に役立つ仕事を通じて自分も成長したいという職場選好を、単なる「熱血志向」ではなく、現代的な働き方感覚として読み解いていく。

仕事の「熱量」はどこから生まれるのか

そもそも、仕事に対するコミットメント(仕事に主体的に関わろうとする姿勢)は、どのようなメカニズムから生まれるのだろうか。

仕事への熱量を考えるうえで、まず重要なのは、それが外から押しつけられたものなのか、本人が納得して引き受けているものなのかという視点である。

ある研究では、人が前向きに動くための土台となる欲求として、自律性(自分で選んでいる感覚)、有能感(できるようになっている感覚)、関係性(周囲や誰かとつながっている感覚)という3つが重要だとされる。つまり、会社から「頑張れ」と言われるだけでは十分ではなく、自分で仕事の意味を理解し、成長を感じ、誰かとつながっている実感を持てることが、持続的な仕事に対する熱量/コミットメントにつながると考えられる。

また、自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できることが、向社会的な動機づけ(誰か、や社会の役に立ちたいという気持ち)を高めると説明する研究もある。仕事の意味は、「自己の成長」だけでなく、「社会や他者などとの関係」からも生じるという。

これらの見方に立てば、たとえば、強い理念や社是を持ち従業員にも同調を求めるような企業文化は、それだけで従業員の熱量を生むとは限らない。少なくとも従業員個人の価値観と、働く企業の価値観が合っていることで、理念や社是の存在は従業員のコミットメントに繋がると言えるだろう。

一方で、それらが合って(適合して)いなければ、それらは単なる同調圧力やストレスとして受け止められる可能性もある。また、従業員への仕事上の目標設定や要求が高い場合であっても、その従業員が成長機会や十分なサポート、仕事の意味の理解が伴えば、前向きに働くための支えになりうるが、それらが乏しければストレスとして感じられやすい、とする研究もある。

要するに、人は、その仕事の意味を理解し、仕事を通じて自分の成長を感じ、さらに社会や誰かの役に立っていると思えるときに、本気になりやすい。その観点から言えば、仕事へのコミットメントは、単に厳しい環境に置かれることで生まれるのではなく、仕事への納得、自分の成長実感、社会や人とのつながり、社会貢献などの実感が重なったときに、持続的に高まりやすくなるとも考えられる。