幼児教育現場における金融経済教育の実態
以上、幼児期の金融経済教育の日本における制度的・政策的位置づけや、幼児期の金融経済教育に期待される内容について整理してきたが、実際の幼児教育現場における金融経済教育の実態はどうなっているのだろうか。
日本の幼児教育における金融経済教育の実態を調査した研究は少ないが、村上恵子「幼児に対する金銭教育の現状と課題」(2009年)では、広島県内の幼稚園143園にアンケート調査を行い、幼稚園における金銭教育の実施状況や教員の金銭教育の捉え方について調査している。
村上(2009)の調査では、金銭教育の必要性に関して、「必要である」または「ある程度必要である」と回答した園の割合は93.7%にのぼっている。
このことから、幼児教育の現場においても、金銭教育の重要性は認識されていると考えられる。
また、同調査では、金銭教育の内容例として「お買い物ごっこ、生き物の飼育、空き缶や紙パック等を用いたおもちゃの工作、おこづかい帳の記入」などを挙げたうえで、金銭教育の実施の有無を幼稚園に尋ねている。
その結果、87.4%が「実施している」と回答している。このことから、金銭教育の一部とみなし得るような活動については、多くの幼稚園で実施されていると考えられる。
ただし、アンケートの回答のなかには、「調査項目に挙げた活動は行っているがそれを金銭教育とはとらえていない」といった意見もみられたという。
このことから、「お買い物ごっこ」など、たしかに金銭教育に該当し得る活動を実施している幼稚園は多いものの、それは「金銭教育」とは異なる文脈の中で位置づけられ計画されている活動であり、教員がそれを「金銭教育」として意図して体系的に行っているわけではない状況が示唆されている。
同調査は、調査対象園に、金銭教育を実施するうえでの問題点についても尋ねている。その結果をみると、「教員が学ぶ機会がない、または少ない」が第1位となっている。
また、幼稚園で金銭教育を実施する上で必要な方策については、「利用可能で適切な教材・指導書の拡充」「教諭や保護者の金融教育に対する意識の醸成」が同率1位である。
これらは、教員自身の知識やスキルの不足、そして知識やスキルを獲得するための教材、その前提となる幼児期の金融経済教育を行う意義への理解や動機のそれぞれについて、幼児教育における金融経済教育には課題があることを示唆している。