幼児期の金融経済教育に期待される内容

金融経済教育推進機構・都道府県金融広報委員会の「金融経済教育研究校のしおり」(2026年)によれば、金融経済教育とは、「経済的に自立し、より良い生活を送るために必要なお金に関する知識や判断力(金融リテラシー)を身に付けるための教育」を指す。

そして、生活スキルとして最低限身に付けるべき金融リテラシーを年齢層別かつ具体的に示したものが、「金融リテラシー・マップ」である。

近年の日本における金融経済教育では、この「金融リテラシー・マップ」が中核的な指針となっている。しかし、すでに述べたように、現行のマップには幼児期段階に対応する内容は明示されていない。

ただし、金融経済教育に取り組む学校等に金融経済教育推進機構が支援を行う「金融経済教育研究校」事業の募集要項では、幼稚園・保育所・認定こども園も対象とされ、募集条件として「金融リテラシー・マップの小学校低学年の内容を踏まえつつ、その導入にもなりうるもの」との記述がある。

すなわち、小学校低学年の内容が、幼児期の金融経済教育を考える際の一つの手がかりとなる。

そこで、同マップが示している小学校低学年の内容をみると、小学校低学年では「最低限身に付けるべき金融リテラシー」として、お金の役割や使い方に関する理解、金融行動の基盤となる考え方や習慣が挙げられている。

具体的には、「ものやサービスを購入するとき、お金を払う必要があることを理解し、実際に購入する」といったお金の役割や使い方に関する理解、「こづかいやお年玉を貯めてみる」といった身近なお金を扱う実践的な経験、「ものには価値があることを知り、ものを大切に使う習慣を身に付ける」「約束を守ることの大切さに気付く」といった金融行動の基盤となる考え方や習慣などが挙げられている。

このような小学校低学年で求められる内容につながる経験や習慣を育むことが、幼児期の金融経済教育に求められている内容だといえる。

また、やや古い資料ではあるが、消費者庁(2013)の「消費者教育の体系イメージマップ」も、幼児期の金融経済教育を考えるうえで参考になる。

同マップでは、先述の金融リテラシー・マップと異なり、小学生から成人期までに加えて、幼児期に対応する内容が明記されている。

同マップによると、幼児期は「様々な気づきの体験を通じて、家族や身の回りの物事に関心をもち、それを取り入れる時期」と特徴づけられている。

そのうえで、「買い物に関心をもとう」「約束やきまりを守ろう」「欲しいものがあったときには、よく考え、時には我慢することをおぼえよう」といった事柄が、この時期に育む力として挙げられている。

これらの内容は、先に見た金融リテラシー・マップの小学校低学年の項目とも重なっている。

すなわち、幼児期においては、お金の役割への理解やお金に直接かかわる経験だけでなく、「欲求を調整する」「約束やルールを守る」「困ったときには周囲に相談する」といった自己制御能力や社会的な能力を育むことが重視されている。

したがって、幼児期における金融経済教育では、お金の役割への理解やお金に直接かかわる体験だけでなく、将来適切なお金の使い方や計画的な生活を営むための前提条件となる自己制御能力や社会的能力、習慣を育むことが期待されているといえるだろう。