金融経済教育の重要性の高まりと幼児教育

成年年齢の引き下げや、SNS等の普及・キャッシュレス化に伴う金融トラブルなどへの懸念を背景に、若年層への金融経済教育の重要性が一層高まっている。

こうした状況を受けて、現行の学習指導要領では、小学校・中学校・高等学校における金融経済教育の内容の充実が図られた。

一方で就学前の幼児期の金融経済教育については、小学校以降と比べて言及されることが少ない。

そこで本稿では、幼児期における金融経済教育の位置づけについて、公表されている資料をもとに整理し、今後の展望について考察する。

なお、本稿で対象とする「幼児期の金融経済教育」とは、投資や金融商品の知識を教えることではなく、「ものを大切にする」「欲しいものをすぐに手に入れずに考える」「約束を守る」「困ったときに相談する」など、将来のお金との健全な関わりを支える態度・習慣を育む教育である。

このような「待つ」「比べる」「相談する」「大切に使う」といった態度は、成人後の計画的な家計管理、長期的な資産形成、過度な借入や金融トラブルの回避に関わる基礎的能力となりうる。

Whitebread and Binghamは“Habit Formation and Learning in Young Children”(2013年)のなかで、将来の金融リテラシーや金融行動に影響する「習慣」や「能力」が、幼児期にどのように形成されるかを整理し、「欲しいものをすぐに手に入れずに考える」といった自己の衝動をコントロールする抑制制御の力や、自身の考えや学びを振り返り修正するメタ認知能力、数の数え方やお金の交換機能への理解など、将来の金融リテラシー・金融行動の基盤となる習慣や能力、金銭概念の多くが7歳頃までに出現し、発達し始めることを示している。

また、こうしたこどもの発達や学習は、遺伝的・身体的要因のみならず、とりわけ親や教員を含む物理的・社会的環境から強く影響を受けると指摘する(Whitebread and Bingham 2013)。

これらの知見を踏まえ、Whitebread and Bingham(2013)は、親や教員が、こどもが欲求や衝動を抑えて待つ経験を積めるよう支援し、「未来」を具体的な出来事や場面としてイメージできるよう働きかけるとともに、学んだことを対話的に振り返ることができる機会を提供することなどを推奨している。

しかし、こうした関わりの量や質は家庭環境に左右されやすく、家庭での金融経済教育のみに依存すれば、こどもたちの間に金融経済教育機会の格差を生じさせるおそれがある。

そのため、すべてのこどもに対し、将来の金融リテラシー・金融行動の基盤となる力を育む機会を公平に提供するという観点から、とりわけ幼児教育の場において、このような意味での金融経済教育を支援することが重要だと考えられる。