(ブルームバーグ):近く米株式市場に上場するSKハイニックスの新たな米国預託証券(ADR)の裁定取引を狙うトレーダーらは、台湾積体電路製造(TSMC)の取引手法を改めて持ち出している。ただ、多くの市場関係者は、両社を単純に比較することはできないとみている。
TSMCのADRには数十年にわたる取引実績があり、ADRが現地株に対してどの程度のプレミアムで落ち着く傾向があるのか、投資家は一定の目安を持っている。一方、SKハイニックスのADRは10日に初めて取引が始まる。そのため、裁定取引を行う投資家には、どの程度のプレミアムが通常水準なのかを示す前例がなく、価格差が魅力的なのか、行き過ぎなのかを判断するのは難しい。
激しい値動き
課題は、過去の価格データがないことだけではない。
SKハイニックスはアジアでも値動きの激しい大型株の一つで、AI関連のメモリー半導体銘柄や、同社株に連動するレバレッジ商品の人気を背景に、株価が日々大きく変動することは珍しくない。激しい値動きは、裁定取引を行う投資家が想定した動きとは異なり、ADRとソウル市場上場株の価格差が大きく広がる「ギャップリスク」を高める。
TSMCのADRと現地株の価格差で長年取引してきたアルファレックス・キャピタル・マネジメントHKのマネジングディレクター、アレックス・オー氏は、SKハイニックス株のギャップリスクの高さを指摘し、「プレミアム獲得を狙ってこの取引を行う投資家は、より高いリターンを求めることになる」と語った。
もう一つの不確実要因は、ソウル市場上場株をどの程度ADRへ転換できるかという点だ。6日に提出された書類によると、ADR保有者はADRを取り消し、相当するソウル市場上場株を受け取ることができる。一方で、その後、その普通株を再びADRへ転換する取引には、韓国当局の許可などが必要となる場合があり、取引ができない可能性もある。
プレミアム見極め
TSMCの場合、普通株とADRの一部相互転換が可能な仕組みの下で、トレーダーは長年の取引経験を積んできた。AIブームの中で価格差は拡大したものの、投資家は、どの水準までプレミアムが広がると行き過ぎで、その後縮小に向かいやすいのか、過去の値動きという判断材料を持っている。
ブルームバーグがまとめたデータによると、TSMCのADRは過去1カ月平均で現地株に対して16%のプレミアムで取引された。この価格差は、おおむね平均回帰する傾向を示しており、現在のAIブームによってその関係がゆがむまでは、最も人気の高い相対価値取引の一つとなっていた。
機関投資家の間では、SKハイニックスのADRが取引開始当初に付けるプレミアムについて、約5%から30%超まで幅広い見方が出ている。上場開始を前に市場の不確実性が極めて大きいという証だ。
ブルームバーグが確認した機関投資家向けリポートによると、モルガン・スタンレーのセールス・アンド・トレーディング部門は8日、SKハイニックスのADRのプレミアムは5-10%程度になると予想した。また、ADRが米国の株価指数や上場投資信託(ETF)に組み入れられれば、プレミアムはさらに拡大する余地があるとの見方を示した。
原題:Arbitrage Traders Face Tougher Challenge With SK Hynix Than TSMC(抜粋)
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