成長投資を有効なものにすることと、補正依存を脱却し真に必要な予算に集中することが重要

高市内閣で組まれた予算は財政の持続可能性に一定の配慮をしたものだと考えるが、だからと言って、我が国の経済・財政が健全で、今後も何の問題も無いと言いたいわけではない。

上述の中長期試算を見ると、成長型経済に移行し、実質GDP成長率が1%台半ばで推移するケース(成長移行ケース)では、公債等残高対GDP比は2027年度以降も安定的に低下する。

しかし、過去の経済を投影して実質GDP成長率が0%台半ばで推移するケース(過去投影ケース)では、公債等残高対GDP比は2031年度には上昇に転じる。高市内閣は成長投資を進めるとしているものの、それが実際に成長につながるか、規模に見合う効果のあるものになるかは現時点では定かでない。

成長投資以外も含めた歳出の中身に、まだまだ非効率な予算が含まれているのも事実だと考えている。

また、政策的経費ではなくPBには算入されないものの、2026年度当初予算で国債費が急増したように、今後は物価上昇・金利上昇に伴い利払費が増加していく。

中長期試算を見ると、国債の利払費対GDP比は実績値の2024年度1.2%から、2035年度には上記の成長移行ケースで3.5%、過去投影ケースでも2.9%に上昇する。

過去投影ケースで、債務残高対GDP比が反転上昇する理由は、利払費増加による債務比率の押上げ要因が、名目成長やPB黒字による押下げ要因を上回るためである。

最後に、繰り返し述べてきたように、2025年度補正予算の規模については過大だったと考えている。ただし、2027年度予算に向けては、高市内閣が掲げている「毎年補正予算が組まれることを前提とした予算編成との決別」、「必要な予算は可能な限り当初予算で措置」(2026年2月20日の高市首相の施政方針演説)の取組は注目に値する。

2026年4月13日に開催された経済財政諮問会議に民間議員が提案した予算編成改革の「基本原則」でも、5項目の1つにこの補正依存脱却・当初予算化が掲げられており、同会議で高市首相も、この基本原則を基に骨太方針2026に向けて検討を加速すると述べた。

どのように補正依存脱却を進めていくのか、現時点で具体的な内容は上記「基本原則」でも明確にはなっていないが、今後、諮問会議で検討が進むだろう。

必要なものは当初予算化をして、企業等の予見可能性を高め、投資を促進するという目標は明らかになっており、その視点は重要である。

また、近年、大規模な補正予算や経済対策が常態化する中、当初予算の歳出総額にはそれなりに厳しいキャップが課されてきた。

そのため、一定の財政規律を保つ当初予算から、相対的には明らかに規律の弱い補正予算に、本来は当初予算で計上すべき恒常的な施策・事業まで紛れ込むようになっている。

いわゆる補正逃れであり、成長投資のようなものだけでなく、恐らく各省庁の予算の様々な分野で広がっているだろう。

補正は短期間で編成されることから十分な査定をすることも難しい。重要な予算であれば当初予算で要求し、正面から必要性を議論した上で措置することが望ましい。

他方、必要な成長投資や、本来恒常的に必要だが補正に回っていたような事業を当初に移し替えれば、2027年度当初予算の歳出は、一回限りかも知れないが、物価上昇並みを超えて大きく上昇するかも知れない。それを財政当局がどこまで許容するのかは不透明である。

冒頭触れた「過去最大の予算額」といったフレーズと同様、メディアや市場がどう反応するか分からないリスクもある。更には、当初予算化しておきながら、政治的動機から結局は秋に経済対策も打ち出され、補正後予算が以前より膨らむ結果にならないとも限らない。

いずれにせよ財政規模の評価は、当初・補正後の歳出、国債発行額、債務残高をそれぞれ対GDP比で見るなど、様々な指標から丁寧に見ていくことが重要と考える。

補正依存脱却・当初予算化は、各省庁にとってみれば補正で獲得してきた予算の削減、財政当局にしてもこれまで恒常的な予算を補正で措置していたことへの説明を求められるなど、本格的に進めるならハードルは非常に高い改革だと見ている。

しかし、政権が本気で取り組むのであれば、期待としては大きい。夏の骨太方針2026までにどこまで、どのように議論が進むか注目していきたい。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員 野村彰宏)