高市内閣の予算の歳出を経済・物価対比で見ると2025年度補正は過大、2026年度当初は抑制的

高市内閣が掲げる「責任ある積極財政」について、メディアの論調は批判的なものが多い印象を受ける。

内閣の財政スタンスが最も明瞭に形をなすのは「予算」においてであるが、2025年度補正予算が閣議決定された際は国債を11.7兆円発行すること、2026年度当初予算が閣議決定された際は歳出額が122兆円と「過去最大」を更新したことが批判されていた。

長期金利が上昇基調にあることから、予算の膨張によって市場の信認が失われるとの懸念もよく目にする。

高市首相は、財政運営に「責任」を持っていることの説明として、「2025年度補正予算による補正後の国債発行額を2024年度より下回らせた」ことや、「2026年度当初予算において一般会計PBの黒字化を達成したこと」を挙げている。

しかし、これらの説明によってもメディアの納得は得られていないように思える。

本稿では、改めて補正・当初予算の数字を振り返り、高市内閣の「責任ある積極財政」の積極度合いが実際にはどの程度なのかを考えてみたい。

まず、国の一般会計予算の歳出について実額から確認する。

新型コロナウイルス対応で膨張していた補正予算については、コロナ禍が明け、徐々にではあるが平時の水準への回帰が進んでいたところで、高市内閣の2025年度補正予算ではその動きを巻き戻すように、2024年度補正と比べ+4.4兆円増加の18.3兆円となった。

2000年度から2019年度(コロナ禍以前)までに、10兆円を超える補正予算が組まれたのは世界金融危機、東日本大震災への対応のみである。

また、当初予算は確かにほぼ毎年、対前年度増となっている。自民党が政権に復帰した後の2013年度予算以降は、2024年度を除いて全て増加し、同時に過去最大を更新している。

高市内閣での2026年度当初予算は増額の幅も+7.1兆円で、少なくとも1986年度以降で最も大きい。

他方、かねてより指摘されているが、インフレ下で予算の名目額が増加すること自体は自然なことである。これまで歳出増の主要因は高齢化を背景とした社会保障関係費の増加によるものだったが、物価上昇は更にあらゆる歳出の増加圧力になる。

政府は企業に適切な価格転嫁や賃上げを促しているが、価格が上がる中では事業量を減らさない限り歳出は増える。

メディアの批判の背景には、我が国ではまだまだ非効率・無駄な使われ方をしている予算が多くあり、歳出改革努力がまだまだ足りない、との問題認識があると思われ、それ自体に異論はない。

ただ、規模が増えた、減ったという議論をするに当たっては、あくまで経済・物価動向との相対関係で見るのが適切である。特に現在のような高い物価上昇率・名目成長率が続いている下で、実額が前年度から減っているような予算は緊縮的過ぎると考える。

また、当初予算だけを見て前年度と比べ増加した、過去最大になったなどというのはあまり意味がない。当初予算と補正予算を合わせた補正後予算の規模を見るべきである。

そこで、実際に歳出額の名目GDP比を見ると、2025年度の補正後予算は19.9%となっており、過去と比べるとやはり高い水準にある。

補正予算のみで見るとGDP比2.7%であり、世界金融危機に対応した2009年度の2.8%、東日本大震災に対応した2011年度の3.0%に近い水準になっている。

物価高で消費が力強さを欠く中での家計支援や、政権の看板施策である危機管理投資・成長投資といったコンセプト自体は理解できるところもある。

しかし、コロナ禍が明けた後で、経済対比で見ても危機対応クラスの規模の補正予算が続いているのは流石に過大である。

一方で当初予算については、2020~23年度にかけて18%台で推移していたものが、2024年度以降は、▲1%pt前後の水準低下が起きており、コロナ前の水準に戻っている。

2026年度は前年度に比べれば増加しているものの、2019年度や、民主党政権下の2010年度、11年度よりも低い。

政府においても、例えば片山財務大臣は、当初予算の決定後の昨年12月26日の会見で、予算額は名目GDP対比で「過去の中では12番目」だと述べた(2020年基準のGDPのデータが得られる1994年度以降でという意味だと思われる)。

2026年度に一般会計歳出が増加した主な要因は、
(1)長期金利の上昇を踏まえ予算積算金利を前年度の2.0%から3.0%に引き上げたこともあり、国債費が増加したこと(+3.1兆円)、
(2)主として名目経済成長に伴い国の税収が増加したことに連動し、地方交付税交付金等も増加したこと(+2.0兆円)である。

国自身の政策的経費である「一般歳出」(一般会計歳出のうち地方交付税交付金等と国債費を除く歳出)については+2.0兆円であり、そのうち+0.6兆円は、
(a)法人増税や歳出改革等により国債発行を伴わない形で増額されている防衛力整備計画対象経費(+0.3兆円)、
(b)2025年度当初予算が成立する過程で衆参の国会修正により減額されていた一般予備費を1兆円に戻すための増額(+0.3兆円)となっていて、これらを除くと+1.5兆円である。

1.5兆円は2025年度当初予算の一般歳出68.1兆円の2.1%であり、概ね物価上昇並みの増額幅となっている(政府経済見通しの消費者物価上昇率は2026年度+1.9%)。

なお、財務省によれば「経済・物価動向等を踏まえた対応」による増額分は社会保障関係費、非社会保障関係費を合わせて+8000億円程度とされており、その部分で見ると物価上昇率や賃金上昇率の見通しよりも低い。

2025年度の消費者物価上昇率は予算編成時の政府経済見通しを上回る見込みであり、2026年度も物価上昇の継続が予想される中で、当初予算における一般歳出の増額は抑制的なものと捉えられる。