ライアン・コーエン氏が再び大胆な投資に踏み出した。カナダ出身の起業家でアクティビスト投資家に転じた同氏は、経営難にある企業に多額の資金を投じ、立て直しを図る戦略を進めてきたが、その実績はまちまちだ。

今回は中古品オンライン販売の先駆けであるイーベイに対して、コーエン氏が率いるゲームストップが560億ドル(約8兆7900億円)の買収提案を行った。イーベイはゲームストップの約4倍の規模を持つ相手だ。

提案は現金と株式を組み合わせ1株125ドルで取得する内容で、1日の株価終値からは約20%のプレミアム水準となる。ゲームストップはイーベイ株式の5%を取得済みで、TDバンクから約200億ドルの債務資金調達のコミットメントを確保したとしている。

コーエン氏は2011年、チューイーを共同創業。オンラインのペット用品販売でトップ企業へと育て上げ、6年後に33億5000万ドルでペットスマートに売却し、名を上げた。大学には行かず、「いわゆるまともな職に就いたことがない」と語る同氏は、オーナーシップ志向に基づいて戦略を構築している。具体的には、経営陣が自社株を保有することで、自らの成功を企業の成功と結び付けることを指す。

2023年にゲームストップの最高経営責任者(CEO)に就任した際、同氏は給与を受け取らなかった。今年初めには、一定の厳しい条件を満たせば最大350億ドルに達する業績連動型のストックオプションが付与された。完全に権利が確定するには、ゲームストップの時価総額が1000億ドル、利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)が100億ドルに達する必要がある。

コーエン氏は4日、CNBCのインタビューで、イーベイへの提案が報酬パッケージに動機づけられているのかとの質問に対し、「私は明らかにもっと大きなものを築きたいと考えているが、株主が利益を得ない限り、自分も利益を得ない」と答えた。

イーベイは、買収提案を受けるまでゲームストップとの協議や接触はなかったとコメントした。4日の株式市場でゲームストップ株は10%余り下落して終了。イーベイ株は約5%上昇した。

型破りな企業行動で知られるコーエン氏だが、これまでのところアナリストの反応は懐疑的だと、ゲーム業界の調査会社アルドラのヨースト・ファン・ドルーネン最高経営責任者(CEO)は話す。「提示方法や買収の前提となる試算を含め、すぐにいくつもの警戒すべき点が見受けられる」と述べた。

ミーム株ブームの象徴

コーエン氏は2020年にゲームストップへ投資し、株価の急騰と乱高下を招いてミーム株ブームの象徴的存在となった。経営不振だった同社の株式を積み増し、電子商取引への対応の遅れを批判して注目を集め、2021年に取締役、同年中に会長へ就任。モール内の小売り店舗から電子商取引企業への転換を掲げ、アマゾン出身の人材を起用するなどした。

ただ、デジタル化の波で消滅寸前にあったゲームストップの再建は順調とは言えず、非代替性トークン(NFT)事業や暗号資産(仮想通貨)投資などの戦略も必ずしも大きな成果につながらなかった。店舗数は半減し、売上高も減少した一方、収益は改善。株価は就任時から約5倍に上昇し、株式の買い増しを続けたコーエン氏は約9%を保有する筆頭個人株主となっている。

同氏はモントリオールでガラス製品の輸入会社を営んでいた父親から株式分析の基礎を学んだ。父親は同氏の師であり、最も身近な助言者でもあった。起業したチューイーを成功させて売却した後は、ゲームストップやノードストローム、ベッド・バス・アンド・ビヨンドなどでアクティビスト投資を展開。ベッド・バスでは株価が急騰した後、同氏が売却すると急落し、最終的には破綻した。

経営スタイルも異色で、大規模な経営陣を置かず、決算説明会も実施しない。投資家はソーシャルメディアでの発言に注目している。コーエン氏は「米国資本主義は上から腐敗している。リスクを取るオーナー経営者は、リスクを負わない、寄生的な企業内の官僚階級に置き換えられた」と主張している。

原題:GameStop’s ‘Highly Confident’ TD Letter Echoes Drexel Era (1)(抜粋)

--取材協力:Christine Dobby.

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