ECBは他の中央銀行よりもタカ派のポジションを意識している公算
ECBは4月30日の理事会で、市場の想定通り、金融政策の据え置きを決めた。ユーロOIS市場は一時80%以上の利上げを織り込んだが、ECBは様子見を続けることを選択した。そもそも、ECBが早期の利上げを辞さない姿勢を示した背景には、他の中央銀行に対して利上げが遅れてユーロ安が進むことを避ける目的があったのだと、筆者はみている。3月はドル高・ユーロ安となったため、危機感が強かったとみられるが、足元ではユーロ相場は落ち着いている。エネルギー高によるインフレ圧力は続く見込みだが、ユーロ円によってコストプッシュ型のインフレ圧力が増幅される可能性は低下した。
ラガルド総裁は会見で、「利上げの可能性を含め、さまざまな選択肢を協議した」(筆者訳。以下同)とし、次回の6月理事会で利上げを決める可能性を示唆した。理事会後の報道によると、「エネルギー価格やイラン戦争の終結に向けた前向きな進展が見られない限り、6月の次回政策委員会会合で利上げに踏み切る可能性が高い。事情に詳しい関係者が語った」(Bloomberg)、「関係筋の1人によれば、30日の議論は主として6月会合を念頭に置いたものであり、見通しに根本的な変化がない限り、政策対応が必要になるとの認識について、参加者の間に大きな異論はなかった」(ロイター)、という状況だという。引き続き、ECBは少なくとも他の中央銀行よりもタカ派的なポジションを維持することで、ユーロ安の回避を目指すことになるだろう。例えば、次回会合における利上げの検討という議論に踏み込まなかった日銀と比べると、同じ現状維持でもECBはより踏み込んでいる。
しかし、「もう1人の関係筋は、米国とイランの間で合意が成立して紛争が終結し、エネルギー価格が下落すれば、見通しはなお変わり得ると強調した」(ロイター)という声もある。引き続き、ユーロ安を回避するために必要であれば利上げは辞さない公算だが、利上げが必要ないという状況になれば、6月も様子見となる可能性は十分にあるだろう。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)