日銀は「決断できない」という印象で、ビハインドザカーブ懸念は続く

4月28日に行われた日銀決定会合後の植田総裁の記者会見では、原油高や円安の影響を勘案して早期に利上げをするようなメッセージがなかった。決定会合では3名の委員から利上げの提案があったことに加え、展望レポートもインフレに警戒的な内容だった。植田総裁も物価の上振れリスクを強調したものの、利上げのタイミングを具体的に述べることはなかった。

むろん、不確実性の高さを考慮すれば、現時点で利上げのタイミングを宣言することは難しい。しかし、イラン情勢の悪化がなければ今回の決定会合で利上げを実施していた可能性や、状況次第では6月の利上げもあり得るといった発言はあってもおかしくはなかった。

前者については、4月利上げを決断できなかったという思いがあり、ビハインドザカーブに陥っているという印象を与えたくなかったのだろうと想像できる。後者については、フリーハンドを維持したいという思いがあったのだろう。

日銀が利上げに前向きであることは、今回のようなインフレ警戒的な展望レポートがなくても、市場参加者の共通認識になっている。論点は日銀がタカ派なのか?ハト派なのか?ではなく、利上げを決断できるのか否かである。

決断力があるのかという意味では、どれだけ日銀が「チキン(Chicken)」(臆病)なのかをみているという状況で、タカ・ハトの度合いではなく、「ニワトリ(チキン)度合い」を見定めている。植田総裁のフリーハンドを維持したいという姿勢は、決断力が弱い印象を与える。

また、朝日新聞は日銀の置かれている状況について「高市首相が利上げを許すかはわからない。状況によっては6月会合も難しい」(政府関係者)との声を紹介した。日経新聞も「状況が落ち着いていない。首相官邸内は利上げに消極的な感じだ」(政府高官)と報じた。いずれも意外感があるものではないが、日銀が利上げを決断できない状況が続く可能性を意識せざるを得ない。

むろん、日銀が利上げを決断できないと市場が判断すれば、円安圧力が高まり、結果的に高市政権が利上げの必要性を感じることで日銀が利上げを実施する可能性が高まる可能性はある。

25年12月の利上げも、高市政権が発足して円安が進んだことが、皮肉にも日銀の利上げをサポートした面がある。そのため、現時点では次回の利上げのタイミングが近いとも遠いとも予想しにくい。

言えることがあるとすれば、日銀の利上げ判断にとって重要なのは為替動向であり、利上げがあるとすればビハインドザカーブに近い状況になってからだろう。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)