4月の株高が実体経済全体への楽観論につながるかを見定める局面

4月29日の米国株式市場は、ホルムズ海峡の航行正常化を巡る不透明感が高まったことや、FOMCがややタカ派的と捉えられたことにより、ダウ平均が5日続落となった。

もっとも、ナスダック指数は小幅に反発し、まちまちの展開だった。引き続き、消去法的にハイテク関連株・半導体関連株への注目度が高い状況が続くが、これらのセクターがけん引して景気敏感株にまで物色が広がる状況にならない限りは、株式市場全体の勢いは出てこない。

昨年まではハイテク関連株が相場をけん引した後、それが資産効果として個人消費を刺激し、景気全体に対する明るい見通しをもたらしてきた。現在は、こうした波及がみられるかを見定める段階にあると言える。

なお、FOMCの結果については、後述するようにニュートラルなものと言え、継続的に株式市場へ悪影響を与えるものではないと、筆者は判断している。

FOMCは中立に向けハト派バイアスを弱めたが、金利上昇は続きにくい

4月29日の債券市場は、原油高が進んだことや、FRBの利下げ観測が後退したことにより、金利が上昇した。

長期金利は前日差+8.4bp、2年金利は同+11.1bpだった。FOMCでは、3名が緩和バイアスの残った声明文の文言に反対したことなどを受け、タカ派的との見方が広がった。FF金利先物市場では、年内0.11回の利上げが織り込まれた(前日までは年内0.24回の利下げ織り込みだった)。

もっとも、パウエル議長が説明したように、多くのメンバーはスタンスをニュートラルにすることを望んでいる模様であり、タカ派的というよりは、ハト派バイアスが弱まったと評価できる。市場が利上げを織り込んでいく可能性は高くないだろう。

4月FOMCは「ハト派⇒中立」であり、タカ派とは言えない

FRBは4月28-29日のFOMCで、政策金利を維持することを決めた(FF金利誘導目標は3.50-3.75%)。ミラン理事が前回までと同様に利下げを求めて反対票を投じた。

ハマック・クリーブランド連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ローガン・ダラス連銀総裁の3人は金利据え置きを支持したものの、今回の声明に将来的な金融緩和を示唆するような文言を盛り込むことに反対した。

声明文では、インフレ率に関する評価が「インフレ率は、世界的なエネルギー価格の最近の上昇を部分的に反映して高止まりしている」(声明文の訳はロイター。以下同)とされた。前回までの「依然やや高止まり」と比べると強めの表現となったが、エネルギー価格の上昇を理由としているため、基調的なインフレ率の見方が変わったとは言えない(それほどタカ派的とは言えない)。

労働市場の評価については、「雇用の伸びは平均して低水準のまま」とされ、「平均して」という文言が追加された。最近の雇用統計の振れが大きくなっていることを反映したもので、これも重要な変化ではないだろう。

中東情勢については、「中東における動向は、経済の見通しを巡る高い水準の不確実性の一因となっている」とされ、経済・物価について明確な方向性を示さなかった。

今後の金融政策については「FF金利の目標誘導レンジに対する追加調整の程度と時期を検討するに当たり、委員会は今後もたらされるデータ、変化する見通し、リスクのバランスを慎重に評価する」とされ、前回と同じだった。次回の政策変更が利上げになるような表現にはなっておらず、「追加調整」(additional adjustments)という文言からは、次の政策変更はこれまでの延長線上としての利下げである、との姿勢も読み取れる。

これは、不用意に利上げの議論を持ち出したくないというタカ派方向への慎重姿勢と言える。3名が反対したものの、全体としては緩和バイアスが維持されていると言える。

パウエル議長は会見で、「利上げと利下げのどちらもあり得るというより中立的なスタンスへの変更を支持できるメンバーの数は、会合間の期間を経て増加したと言える」「今後の道筋には不確実性が多くある。今すぐその決定を下す必要は全くない」(筆者訳。以下同)と述べ、利上げ・利下げの2つの間で意見が変わったというよりは、様子見が望ましいという中立的なスタンスに寄っていることを強調したと言える。

次回の6月FOMCでは、ウォーシュ氏が議長となっている可能性が高いことも、現時点では中立的である方が望ましい(新体制への移行がスムーズだろう)という考えもあったと予想される。

今後については、「引き上げが必要であれば、その旨を明確に示し、確実に実行する。引き下げが必要で、かつそれが適切であると判断されれば、その逆のシグナルを送ることになるだろう」と述べた。

今回は利上げ・利下げ双方のシグナルが出なかったことから、次回の6月FOMCで政策変更が行われる可能性は高くない。筆者は経済・物価のデータを確認した上で、9月には利下げが実施されると予想している。