暗号資産(仮想通貨)ビットコインは8万ドルに再び迫りながらも、その水準を突破できずにいる。オプション市場に潜む隠れた力が逆風となっていることが理由の一つだ。

最大の暗号資産オプション取引所であるデリビットでは、ビットコインが一定価格を上回ると利益が出るコールオプションが8万ドル付近に集中している。

この積み上がりにより、コールオプションを買う側のディーラーは、価格上昇局面ではリスクヘッジのためにビットコインを機械的に売る必要がある。これは「ロングガンマ」と呼ばれるヘッジの仕組みで、結果としてオプション市場が上値を抑える要因となっている。

暗号資産会社GSRで資産運用を担当するマネジングディレクターのアンドルー・ベーア氏は、「多くの投機筋は8万ドルでコールを売却している。安全にプレミアム(オプション料)を得られる水準と考えているためだろう」と指摘した。

同氏によると、取引の反対側に立つディーラーはそのコールオプションを買い、同時にビットコインを売却してヘッジするため、その水準に近づくと、はじき返される「電気柵」のような上値の壁が生じているという。

この力学は、ビットコインが3月末以降12%余り上昇しているにもかかわらず8万ドルを突破できずにいる一因となっている。また、スポット市場で需要が急増しない限り、満期前の突破は難しいとの見方が出ている。

この構造的な上値は、ビットコインのセンチメントにとって微妙なタイミングで浮上している。昨年末に12万ドルを超える上昇を支えたアニマルスピリットは、まだ戻っていない。オンチェーンデータやプラットフォーム指標によれば、その上昇をけん引した投資家の多くは現在、損失を抱えるか、より明確なシグナルを待って様子見姿勢にある。

その空白を埋めているのが機関投資家の需要だ。ウォール街は暗号資産のインフラ整備を進め、トークン化ファンドの基盤も静かに拡大しているほか、ビットコインに積極投資する米ストラテジーはほぼ機械的なペースでビットコインを購入している。

つまり市場には下支えはあるが、熱狂はない。このため、8万ドルは上昇の起点ではなく上値の壁とみられる。

ビットコイン先物市場の弱気基調が続き、スポット市場の需要も減速する中、プレミアム狙いの一部暗号資産トレーダーは、8万ドルの行使価格を上回らないまま数カ月以内に満期を迎えると見込み、コールオプションの売りを増やしている。

デリビットでは8万ドルの行使価格に最も多くの建玉が集まっており、5月末と6月に満期を迎える契約の比率が高い。データ提供会社カイコによれば、名目ベースで15億ドル(約2400億円)のコール建玉のうち、1億6000万ドルが5月1日に、さらに5億6600万ドルが5月29日に満期を迎える。ビットコインは29日時点、約7万6000ドルで取引されていた。

CFベンチマークスのプロダクト責任者、トーマス・エルドシ氏は5月と6月の満期構成は「コール売りが継続していることや体系的なロールの兆候」を示していると指摘。「もっとも、オプションのポジショニングは一つの側面に過ぎない。8万ドル付近では利益確定売りも出ているようだ」と述べた。

それでも、最近の株式市場のボラティリティー上昇はデジタル資産市場にも影響を及ぼす可能性がある。暗号資産プライムブローカーのファルコンXのシニアデリバティブトレーダー、ボアン・ジアン氏は「結果として、8万ドルに向かう局面では値動きはより安定的になる。ここ数セッション、株式がもみ合う中で、ビットコインも同様の動きとなっている」と指摘した。

原題:Option Traders Build ‘Electric Fence’ Around Bitcoin at $80,000(抜粋)

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