欧州中央銀行(ECB)は29-30日の政策委員会会合で、イランを巡る戦争による経済への影響を見極めようとしている。各種データは、現時点では利上げを正当化する決定的な根拠がないことを示している。

ECBのチーフエコノミストを務めるレーン理事がエネルギー価格高騰への対応を検討する際に用いる指標群は、結論を導くには不十分で、当面は政策金利が2%に据え置かれる可能性が高い。

警戒すべき兆候は確かに見られる。総合的なインフレ率は急上昇し、将来のインフレ期待もそれに追随している。一方で、融資が受けにくくなっていることを示す動きもある。債券利回りの上昇により、ECBへの迅速な対応を迫る圧力は和らいでいる。

レーン氏自身も、今月の対応については慎重な姿勢を示しており、「豊富な調査データ」があるとしつつ、調査回答者の多くが中東情勢の行方について明確な見通しを持っていないと語っている。一方、市場やアナリストは、インフレ率の上昇で、少なくとも6月には利上げが必要になるとの確信を強めている。

DZバンクのチーフエコノミスト、ソーニャ・マーテン氏は「理論上は、ECBは物価上昇の一時的な期間を『見過ごす』こともできる」と指摘する。ただし、前回のインフレショックの記憶がまだ新しい中で、「近いうちに利上げによってシグナルを発する以外、選択肢はほとんどないだろう」と述べた。

直近の経済指標の中には、より懸念すべきものもあった。

ユーロ圏の4月の購買担当者景気指数(PMI)は、2024年以来初めて企業活動が縮小したことを示した。サービス業が急落する一方、製造業は供給不足や急激な価格上昇を見越して前倒しで対応を進めている。企業は、コロナ禍を除く過去25年超で、コスト圧力が最も大きく上昇していると答えた。

INGのピーター・ファンデンホウテ氏は、このデータが「今回のショックがもたらすスタグフレーション的影響」を示していると語る。その一端は、30日に公表予定のユーロ圏の1-3月期(第1四半期)国内総生産(GDP)や、4月のインフレ統計にも表れる可能性がある。

家計は物価の急騰を明らかに懸念している。消費者の今後12カ月のインフレ期待は、3月に4%に急上昇した。3年先の見通しも2022年のピークに迫る水準まで高まっている。

ガソリンなどのコスト上昇がより広範なインフレにつながるかどうかが重要なポイントとなるが、ECBの政策当局者は、現時点では判断できないとしている。一方で、二次的な影響が実際に現れるまで待つ必要はないとの声もある。

市場ベースのインフレ期待は概ね抑制されているものの、ECBが重視する5年先5年のインフレスワップ率は依然として2%を上回っている。

ラガルド総裁が、4年前のインフレ局面で有用だったとしていた将来の賃金上昇を測る企業電話調査や、価格改定の頻度に関する報告は公表されていない。

ラガルド氏は3月、「2022年のショックは抑え込まれたものの、その経験は深い爪痕を残している。多くの人々が初めて高インフレを経験し、次に同様の状況が起きた際には、より迅速に反応する可能性がある」と語った。

原題:ECB Finds No Clear Case to Hike Yet on Lane’s Data Dashboard (1)(抜粋)

--取材協力:Nick Heubeck.

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